82 お披露目
「……中々だな」
「ここに住むの?」
「ボロいな、ラビが気に入っているなら良いが」
「位置的にもレベリングには良い……」
好意的な発言は1つ。マッドだけだ。
他の奴らが来る前に確認してみたが、この家が建てられているのはサルディスの東、広大な森の中だ。要するに少し外に出れば強いモンスターが沢山。レベル上げが簡単にできるね!
家の敷地内に入ってこないのが最適だ。
集まったのはログインしている廃人達のみ、ワイズ、ヨツキ、ヴィルゴ、マッドだ。キイちゃんとアオちゃんはログインしていない。
平日でも欠かさずログインしてるこの人達がおかしいんだけどな。
そういや、ヨツキちゃんに大剣あげなきゃな。
「ヨツキちゃん」
相変わらずワイズさんにぴったり張り付いてるな。少し怯えられているような気もする。俺の背が高いからか? ワイズさんの方が俺よりも高いんだが。
「……ほら、挨拶しろ」
ワイズさんは来た時からマスク着用。ヴィルゴさんがいるからだろうな。
「こんにちは……?」
首をかしげながら挨拶してくれるヨツキちゃん。かわええ。
「これ、上げるよ」
うわああ、セリフが完璧不審者じゃねえか。こうプレゼントとかどう上げればよいかわからないよな。
俺は大剣を取り出した。
「……わざわざすまないな」
「俺が持ってても仕方ないしな」
それに金とか色々貸しあるし。
まあ、上手く使ってくれ。
一応イベントのドロップアイテムだからかなり高性能だと思う。
何かを確認していた。ワイズさんがゾロゾロと歩く皆に声をかけた。
「デザイナーは……頼んだが……どうする?」
デザイナーなんているのか、まあそりゃそうか。素人が作ったって使いづらくなるだけだしな。
「裏のコロシアムの拡張は必須だな」
「会議室とか欲しいですね」
「はいはいはーい、今ここにいるメンバーだけでも部屋が欲しいって伝えといてー」
要望、乗り遅れてしまう。俺の要望……。
「子供は2人欲しい!」
様々な要望が飛び交う場が一瞬で静かになった。
「……デザイナーは男だぞ?」
いやいやいやいや、そういう意味で言ったわけじゃ。
憧れのマイホームだぜ?
犬と可愛い奥さんと子供2人で楽しく暮らしたいじゃないか。
「ヨツキちゃんがいるじゃないですか」
カラコさんがヨツキちゃんの肩を抱き、こちらを見てくるが、さっきのは言葉の綾というか何というか。
「いや、そういう意味で言ったんじゃ……」
「シノブ……今までよくセクハラで訴えられなかったな」
ヴィルゴさん、俺を何だと思ってるんだ? 俺が現実でもこんな発言を繰り返してるとでも? 近所の女子小学生には走って逃げられるぐらいだぞ? 絡まれてる女子を助けたら、ありがとうございますとか言われて一目散に逃げられるぞ?
ちなみにそれが恋愛フラグに繋がったことは一度もないぞ?
「……ギルドマスター室は大きくしておくように伝えておく」
ご配慮ありがとうございます。カグノが子供みたいなものか。今となっては槍に変わっちまったけどな。哀れなやつだ。
そして皆がドスドスと入っていく。主にドスドスと音を立ててるのはマッドだけどな。土足厳禁ではなくて、土人形厳禁にしようか。足があるんだから動けよ! いや、それだったらギルドメンバーに支障が出る場合が出るしな。やめておこう。
今の所、ギルドメンバーには人が多いような気がする。明らかに人外なのはヴィルゴさんだけ、マッドは背が低いから小人、カラコさんはぱっと見人間だけど関節が機械。ワイズさんとか顔色が悪いけど吸血鬼なのか、キャラメイクで顔色が悪くなっているのかはわからない。
ネメシスも人外な見た目と言われればそうだけど、どうしても全身黒タイツに見えてしまう。
さて、俺は未だ見ていない庭の様子でも見に行くか。
「シノブさんどこに行くんですか?」
うわあああ、いきなり声かけるなよ。1人で庭周るのだって薄気味悪いんだからさ。
「庭の方を見てなかったと思って」
庭というよりあるらしい畑とか、闘技場とかを見てみたい。何で俺が知らないのかというと、設備の一覧も何故か渡されてないからなんですね。あの契約の場にいた人以外には渡されてるのに。
俺が聞いてなかったのが悪いんだけど。
「またまたワイズさんが知り合いのデザイナーに頼んでくれました。シノブさんはギルドマスターの座を譲ったほうが良いんじゃないですか?」
確かに。でもワイズさんはなぜか、俺をギルドマスターにしたいって言うんだよな。何なのだろう。
俺達は家の後ろへ回り裏庭へと行くため歩き出した。
ありがとうございました。




