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狙撃手の日常  作者: 野兎
神の弓は月の形
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71 覚醒

 さて、今日も良い天気だ。良い天気だけど、俺の心の中は曇り空だ。曇りすぎて真っ暗だ。俺の心の中の太陽がなくなったとか言うとグッと詩的になる。貴女は私の太陽だ、みたいな。そんなことはどうでもよい。

 カラコさんからメールが来ていたからだ。


 すみません(T_T)今日はお休みさせてください。


 顔文字なんか使っちゃって、意外に可愛らしいな。

 とかそういう問題じゃないんだよ! え? 今日休み? ナニソレ。

 と思っちゃう俺は廃人なんだろうけど。何か用事ができたのだとしてもタイミング悪すぎ。





「……なんか話が飛躍しすぎてませんかー?」

「ですよねですよね! いや、本当にヴィルゴさん意味分かんない。意味分かんないと思ってたけど、実際にこうなって……ああ」

 俺の足は自然とイッカクさんの店へ向かった。そして昨日会ったことを話したのだ。誰かに話したい。話したいけど、いつも同じ場所にいる人を知らないからだ。決してロリコンではない。


「落ち着いてくださいー。単なる好奇心でカラコちゃんがどうしてログインしていられるのか気になって。でも聞いて嫌われるのは嫌だからシノブさんに言わせるように仕向けたって感じでしょうかー」

 なんという自己中心的な人だ。俺がどれだけ心を痛めたかも知らずに。そんな風に人を犠牲にするとは、許されざる行為だ。


「彼女は子供っぽいんですよー。許してやってください」

 できれば大人になってほしい。

 前から思ってたわけじゃないけど、この2人ってどんな関係なんだろうな。単なるゲーム仲間?


 イッカクさんに話して落ち着いた。メールの文面から見ても軽い感じだったし、心配しなくて良いだろう。明日、また話せば良い。問題はヴィルゴさんだ。何とかギャフンと言わせたいものだが。リアルでギャフンって言ってる人は見たことない。


 あ、そうだ。鎧直してもらわなきゃな。頼んでみよう。


「子供っぽいのは知ってる。それで頼みがあるんだが。凹んだ鎧を直してくれないか?」

 俺は外套を外して、凹んだ部分を見せた。俺の鎧に傷をつけるとは相当な高レベルプレイヤーだったのかな、あの金属釘バットモヒカン野郎。

 鎧を見た時イッカクさんの目が怪しく光った。ああ、何度か見た覚えがある。そして嫌な予感がする。


「それについては話してくれませんでしたねー」

 それとは鎧のことか。神のことをはぐらかして話したからなー。

 もう話していいか。


「実は……」

 話し終えた時にはイッカクさんの興奮は最高を迎えていた。


「神ですか! ラスボスって感じになりそうです。七つの大罪に関係した悪魔達との関連も気になります。ああ、何でそんなにイベントに遭遇するんですか。運営からの情報もなし、こんなの攻略させる気がありませんよ」

 それはそう思う。カラコさんがいたからイベントが発生したけど。もしかしてラビもいたから、兎人でもいけたのかも。そういえばあの神殿で蛇の抜け殻を手に入れてたな。鑑定してもらおうか。

 鑑定のオーブ持ってるけど。今更育てるのも面倒くさい……でも絶対未来では鑑定取得しているような気がする。


 今はイッカクさんいるし、鑑定してもらうか。後何か鑑定してもらうアイテムないかな……。色々と試そうと思って何もしていないアイテムが大量にあるな。毒虎の毒腺とか雷鳥の尾羽とか、魔石とか色々。

 今日はカラコさんいないことだし、アイテムの整理でもしようかな。



 というか俺錬金術のオーブも持ってるからわざわざイッカクさんに直してもらわなくてもいいんだよな。

 どうしよう。


「鎧……何も変化はしていないですねー。また鑑定では見れないものなのかもしれません。直すので外してくれませんかー」


 とりあえず今は考えなくて良いか。アイテムの鑑定が終わったらイッカクさんに相談しよう。スキルを大量に持ってても育てるのが大変なだけだし。

 俺が鎧を装備から外すと。その鎧の蔓の模様が消えた。一体どうなってるんだ。


「良かったですねー」

 何がだろう。凹んだ跡は綺麗に消えた。また装備すると鎧の模様が現れた。

 装備するとでる。外すと消える。


「装備品に能力が付与されているわけではなくて、シノブさん本人に何かされているってことですよー」

 何かされてるって言い方。何か嫌だな。俺自身に加護みたいな物がついているのか。


「ということは、装備を変えてもこれは継続するってことか」

「予測では、そうなりますねー」

 装備を変えるって言っても初期装備しかない。

 初期装備に変えてみると同じように蔓模様が浮き出てきました。それは良いとしても、一体これの効果は何なんだ? 魔女の契約紋が月光草になっちゃったっていうのもあるし。



「何かステータスに変化はないんですかー?」

 そういや、あの時からステータス画面を確認していなかった。迂闊だったな。



種族:半樹人

職業:狙撃手 Lv30

称号:神弓の射手

スキルポイント:32


 体力:90(-35)

 筋力:25

 耐久力:40

 魔力 :100(+58)

 精神力:95(+49)

 敏捷 :20

 器用 :80(+20)


パッシブスキル

【弓術Lv17】

【木魔法Lv16】【土魔法Lv9】

【魔力操作Lv6】

【マゾヒストLv7】

【遠見Lv14】【植物学Lv3】【暗視Lv7】

【精密操作Lv5】【収穫Lv10】


 待てよ、アクションスキルはどうなってる?



アクションスキル

【光合成】【超再生】【覚醒】

【ストーンバレット】【クラック】【レジストアース】【アースニードル】

【ウッドバインド】【グロウアップ】【ポイズナスフラワー】【リフレッシュ】【バンブースピア】【トレント】【グラストラップ】

【ファイアショット】【ロックショット】【ウッドショット】【ダブルアロー】【チェイスアロー】【アローレイン】



 アクションスキルも多くなったなー。そして1番上で目立ってる2つのスキル。

 超再生と覚醒。

 覚醒スッゲー! カッケーと素直に喜べたらいい。しかしさらなる面倒ごとに巻き込まれる気しかしない。

 覚醒。単にこのスキルを使えば目が覚めるってだけならいい。でもそんな意味なんじゃないんだろうなー。


「超再生は樹人が持つ種族スキルの再生の強化版でしょうねー。覚醒はブーストスキルなような気がしますー」

 そうだとしたら、そしてマゾヒストとそれが重なるのなら。とんでもないことになりそう。


「覚醒。取得者見つかりましたー」

 速いな。流石だ。


「何らかの条件が必要みたいですー。覚醒を取得したけど、何も効果が得られなかったと言ってますー」

 俺は自動的に取れたから何の効果も得られていないってわけじゃあるまい。

 百聞は一見に如かず。やってみるか。


「ちょっと試してみるぞ」

「どうぞご自由にー」

 さて、どうなることか。


「覚醒!」

 俺の周りに風が吹き始めた。といってもそよ風程度のものだ。暑い時の扇風機代わりになりそう。ここには吹き飛ぶ物はないけど、砂漠とかで発動させたら砂が舞い上がって目に入りそう。まさかこれで終わりじゃないよな。

 と思っていたら俺の体が光を放ち始める。発動まで遅いな。戦闘中にはとても使えないだろう。

 シュイン、という音と共に俺の目の前に巨大な木でできたゴーレムのような物が呼び出された。

 まさかの召喚系ですか。


「おー、大っきいですねー」

「覚醒って言う名前にしては、召喚系か」

 MPが八割減ってんだけど。現状じゃMP回復手段がないからな。こりゃ使い物にならないな。厳しすぎる。しかしこの覚醒だけで、充分戦えるなら話は別だが。


「召喚っていうより、分離ですねー」

「分離?」

 無言で鏡が出される。

 どうなったっていうんだ?

 こ、これは……。


 別に絶世の美女がいたとかではない。そうだったら良かったんだけどね。

 深緑色の髪を持った魅力的な青年がそこにはいるではないか。自分で自分のことをイケメンだとかいうと、ナルシストのようだが、自分の身体であって、自分の身体じゃないからセーフだ。

 今までは肌が灰色で人外って感じを全面に押し出したワイルドでファンタジーな感じだったが、今では健康的な肌色になっている。すげえ美青年。今ならモテそう。


「自分の顔に見とれてるって気持ち悪いですねー」

 いや、仕方ないじゃん。イケメンなんだし。


 これは一体どういうことなのだろう。

 俺の前にいる灰色の巨人が身体で、心がイケメンか。女心もわかってるし、彼氏としては完璧なんだけど……顔が……。と言われてしまうタイプということか。ははははは……はは……。



「どっちにしろ。MP回復手段が出ないかぎりは使いにくい能力だな」

「ありますよー」

 あるの? でもそんなに聞いた覚えがない……調べた覚えもないけど。


「MP譲渡というスキルがあるんですよー」

 戦士系なら役に立つスキルだな。うちのパーティーに魔法を使わない戦士はいないけどな。ラビがそうかな? 調教テイムされたモンスターでもスキルを覚えさせることができないのだろうか。



「他にもMP補完というHPを削ってMPを増やすスキルもありますよー」

 命を削って魔法を使うのか……マゾヒストと何か通じることころがあるな。


「無駄に体力が多い樹人が魔法使いに使えるスキルですねー。樹人は魔力だけが高くて精神力不足ですからねー」

 おい。もっと早くに言えよ。というより最初会った時に言えよ。俺体力なんていらなかったじゃん。最初の方に知っていれば精神力と体力を交互にあげて、物理にも魔法にも強い俺ができたのに。

 いや、今の魔法に対する圧倒的な魔法に対する防御力は俺の精神力から生まれたことか。


 今はどうすることもできない。俺は俺の道を突き進むだけだ。



「よし、超再生はHPの高速回復。覚醒はいざという時とかボス戦とかで使う用と。後は……」




 問題はこれ。

「この蛇の抜け殻って……」

 やっぱ一々面倒くさいし鑑定取ろうかな。さっきもそれ考えてたな。もういいや取ろう。


《スキル【鑑定】を取得しました。スキル欄が限界なので控えに回されました》


「やっぱ俺が鑑定取ったからいいや」

「そんなこと言わないでくださいよー」

 俺が鑑定してから、鑑定してもらおうか。


 ⁇⁇の抜け殻

 ⁇⁇の抜け殻。強力な力を宿している。


 さすがレベル1だな。しかしアイテム欄の名前が抜け殻から⁇⁇の抜け殻になった。


《行動により【鑑定Lv2】になりました》


 お、レベル上がった。

 もう1回見てみるか。


 ⁇⁇の抜け殻

 ⁇⁇の抜け殻。強力な力を宿している。



 レベルって何なんだろうね。


《行動により【鑑定Lv3】になりました》


 ちょっと待て、レベルアップするの早すぎじゃないか? MPなくなるまでこれを繰り返せばかなりレベルが高くなるのでは?



「これ「ストップ!」」

 自らの力で見てみせる。イッカクさんには悪いが待っててもらおう。



《行動により【鑑定Lv12】になりました》

 すっからかん。MPもうない。さっき覚醒を使わなければまだレベル上げできたのに。

 そしてレベルが上がった結果。


 ⁇⁇の抜け殻

 ⁇⁇の抜け殻。強力な水の力を宿している。抜け殻とは思えないほどに丈夫で美しい。


 少し情報が増えた。


「ってとこまで見えたけど、どうだった?」

 イッカクさんのレベルってどうなってるんだろう。皆のアイドル並みの人気を誇るイッカクさんの装備なんだから、かなりのレア度だとは思うけど。


「水神の抜け殻。レア度はSランク。素材のままで再生能力付き。防御力は鎧にした場合にはスケイルメイルの域を上回る性能になるかとー。私は専門じゃないのでわからないですけど、とんでもない物を持ってきましたねー」

 なんか俺と見てる物が違うような気がする。レア度とか表示さえされてないぞ。


「すみませんが鑑定のレベルは?」

「レベル30でカンストですねー」

 3分1も俺はいってるのか。意外とカンストまでの道は近いかもしれない。



 それにしても水神だって!?

 何てことだ!

 仏教だったら塔が建って、キリスト教では聖遺物としてバチカンに収められて、神道だったら神社ができちまうぞ。ここでは神殿に収められるのかな? 水の神殿とかありそう。



 そんな高性能な素材。

 イッカクさんが作ってくれたこの痛い鎧はお払い箱になりそうだな。ざまあみろ。この抜け殻の加工はえるるに頼もう。


「というわけで俺はえるるの所へ行ってくる。相談と鑑定ありがとう。では」

 用が済んだので速やかに退出しようとした俺の手がグイと引かれた。

 どんな馬鹿力だ。これがドワーフの力か。


「私も少し噛ませてくださいー」

 わかってた。わかってたから速く外に出ようとしたんだ。しかし俺には断れない。今までにやってもらったことで断るコマンドが消失している。


「……じゃあ……一緒に行こうか?」

「中々物分りが良いですねー」

 俺は既にこのドワーフの下へとついてしまっているのだろう。

 義理堅い人物なのか、幼い頃からの奴隷根性か。

 後者だろうな。

ありがとうございました

覚醒しましたね

どうなるんでしょうか

使い所があると良いんだけど


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