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狙撃手の日常  作者: 野兎
神の弓は月の形
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62 山菜取り

 俺達は先ほど戦闘があったばかりの場所にいた。

 森がやっと解放されたからか、植物系素材でも集めようというのか人が多い。

 取りつくされてなければいいのだが。


「カグノにレベルってあるのかな?」

「精霊だったらあるらしいですけど……まだまだ未知数ですからね」


 今出したら目立つし森の中に入ってから出そうかな。

 いや、美少女と美幼女に囲まれて素材集めとか恵まれてるな。女性運(VR内に限る)なんて最初から持ち合わせてたんだ。


 鍛えるべきは土魔法と魔力操作。何とか片手ずつで違う魔法を放てたりするようになりたい。

 後は擬態だな。


「擬態発動!」

 別に声に出したからって発動するわけではない。なぜこれがアクションスキルではないのだろう。常時発動って。


「擬態ですか……シノブさん若干自然っぽくなってますね」

 自然っぽくなってるとはどういうことだ?


《行動により【擬態Lv2】になりました》


 腕を見ると若干苔むしている。この森苔だらけだしな。

 これは面白い。ギリースーツのようなものになるのか。


「ちょっと俺その辺に隠れるから、目をつぶってて」

「嫌です。木の後ろで待ってます」

 なんということだ。俺の前で目をつぶるのがそんなに嫌とは。


 俺はその場で仰向けになる。自分で自分の姿がわからないから、わからない。

 動かなければ一定時間で発動なのか?

 動かない時間が長いほど擬態が完璧に近づくとかあるのだろうか。


「もういいよー」

 カラコさんが出てきて、地面で寝転がっている俺を白い目で見た。なんだよ。スカート履いてるわけじゃないんだからいいだろ!


「隠れる前に気付かなかった私も私ですけど……パーティー間ではHPバーとか色々頭の上に出ちゃってるんですよね」

 それがあったか。


「ならプレイヤー相手にもプレイヤーアイコンが出るから無理なのか?」

「安心してください。アイコンは出ていません」

 これは親切設定だ。いや、当然といえるかな。パーティーメンバーが見失ったら大変だ。


「でも程よい感じで苔っぽくなってますよ」



《行動により【擬態Lv3】になりました》


 寝転がっていて気づいた。

 この苔採取できんじゃん。



  腐食苔

  品質 C

  全ての者を分解してしまう苔。落ち葉、動物の死骸などを特殊な酸で溶かし、養分にしてしまう。森の多くの生き物はこの苔を主食としている。



 こ、こえー。酸ってなんだよ酸って。もしかして苔に触ってるだけでダメだったりするの? 落ち葉とか死骸だけ限定なのかもそれないけどさ。

 一体何に使えるのだろうか。皆目検討もつかないし、こんだけどこにでもあるんだから冒険者ギルドでも買い取ってはくれないだろう。


「なんかなんでも素材になるって感じですね」

「カラコさんにはわからないかもしれないけど、俺の植物鑑定で鑑定できるのがゲーム内システム上有用とされている植物だな。何もない草は草とか木って出るだけだ」

「そうなんですか」


 まだ品質がCなのは森に入ってから浅いからかな。


「もう少し奥に行ったら採取をするよ。そん時はカラコさん護衛よろしく」

「了解しました」



 俺はカグノを呼び出し、魔法の練習をしながら奥に行くつもりだったのだが。


 ストーンバレット両手撃ち。

 これが意外に難しい。ファイアボールはある程度制御はできるのだが。ストーンバレットはすぐに発射されてしまう。

 そしてもう一つがカグノの存在だ。


『むぅーっ』

「カグノちゃん。シノブさんも火魔法ばっかり使うってわけにもいかないんだし」

『でもぉー!』


 俺が火魔法ではなくて土魔法を使っているのが気に入らないらしい。



《行動により【土魔法Lv9】になりました》

《行動により【魔力操作Lv5】になりました》



 カグノの世話はリアルでも妹がいるらしいカラコさんに任せてればいいかな。


『お兄ちゃん!』

「なあに?」

「シノブさん、気持ち悪いです」

 ……確かに気持ち悪かったかもしれない。


『なんで土魔法使うの!』


 難しい質問だな。

 ここで理由を答えてもカグノは納得しない。俺が土魔法を使うのをやめさせたいだけなのだ。そうならばやることはただ一つ。

 土魔法を使いながらも火魔法も使う。即ち同時起動だ。


 といっても違う種類の魔法を同時に唱えるのは難しそうだから。ファイアゴーレム試してみますか。


「ファイアゴーレム」

 目の前に燃えているゴーレムが出てくる。

 そう、火のゴーレムではなくて燃えているゴーレムなのだ。

 熱いから触りたくないけどたぶん触ろうと思えば触れるだろう。


『うわぁーっ! おおっきいー!』

 どうやら満足してくれたようだ。上に飛び乗って嬉しそうにはしゃいでいる。

 森の木に引火とかしないか心配だが……大丈夫だろう。


「シノブさんグッジョブです」

 俺の方は同時にストーンバレットを展開できるように頑張りますか。



《行動により【魔力操作Lv6】になりました》


 色々試していてわかったが、魔力操作は相当癖が強いというかプレイヤースキルによって変化するスキルだ。

 俺がファイアボールが操作できてストーンバレットが操作できないのも、プレイヤースキルの問題なのだろう。俺はファイアボールはファンタジーの魔法のノリではなっているが、ストーンバレットは銃みたいな感じで放っているのだ。発動も早いし、速度も速いからな。


 後は上手くそれをイメージできているかというのに尽きるのだと思う。

 ファイアボールは速度を速くしたり、詠唱速度が上がったりしているのだが、ファイアフライとか本当にシステム任せな発動しかできない。

 バーナーを二本の腕で出すってのはできたんだけどな。


 木魔法の新しいスキルも試さなきゃな。

 グラストラップと、トレントだっけ?



 そして地味にMPを削っていくファイアゴーレム。MPなしでも戦える手段考えないとな。

 弓を使うのにもMPがいる状態だし。


 あれ? 俺TUEEEEEEとか思ってたけど、MPなくなったら攻撃手段なし?

 まずくね?


「カラコさん、俺がMP0になっても捨てないでくれ……」

「あたりまえじゃないですか」

 くぅ、仲間がいるって泣けるぜ。


 そんな仲間に頼っててはダメだけどな。優しさに甘えてはダメだ。フィイアゴーレムにファイアソードを持たせながら、マックスパワーの弓を使うことがあるかもしれない。そんな後でモンスターに襲われたら大変だ。


 てかファイアソードってゴーレムは持てるのかな?

 カラコさんは熱くて持てなかったけど。


「ファイアソード。はい、これ持ってみて」

 俺達の前をカグノの指示に忠実に従って歩いていた。ゴーレムは剣を持った。熱くはないけど眩しいな。

 おお、持ってる。

 持ってるけど……。


「身体のサイズに比べて剣が小さいですね」

 そう、それ。気になるよな。



『エウレカルテル号ファイアー!』

 カグノは楽しそうだな。名前までつけて。


 ゴーレムがカグノの動きに合わせて腕を振った時、ファイアゴーレムの身体の炎が火柱を上げ、ファイアソードがゴーレムサイズの大剣になった。




「え?」

「へ?」

 俺とカラコさんのマヌケな声が響き渡る。


「なんか……マスコットキャラかと思ったら違うんだね」

「十分攻略に有用な情報だったじゃないですか……」

 公開してしまったことを今更ながらに悔やんでいるのだろう。


 カグノには魔法の威力を上げる力がある、ということか?

 カグノはパーティーに換算されていない。扱いはゴーレムと一緒だ。

 それだけで魔法の威力をお手軽に上げられるとしたら、もはや一家に一エレメンタル。魔法プレイヤー達がロリを連れ歩く大ロリ時代が始まってしまう。

 恐ろしい。

 なんだ? まさか運営にそんな趣向の人がいるのか?! 

 確かにGODSとRORI。両方とも4のアルファベットで構成されている。隠しコマンドを入力したらログインするときにタイトルが変わるとかないのだろうか。あっても誰得だけど。


「カグノ、お前火魔法の威力上げられるのか?」

『わかんない!』

 ああー、可愛いなー。


「シノブさん、和んでる場合じゃありません! エウレカルテル号みたいにカグノちゃんを背中に乗せてみてください」

 エウレカルテル号ってもう決定なんだね。

 乗せる……? こんな熱そうなものを……?

 いや、無理でしょ。


「火耐性があるじゃないですか」


 ……HP減りそうだよなー。

 でもやってみないことにはわからないし。やるしかないか。



「カグノ俺の背中に乗ってくれないか?」

『わかった!』

 体勢を低くした俺の背にカグノはゴーレムの背中から飛び跳ねて乗った。

 意外な跳躍力……。

「ぐふっ」

「シノブさん大丈夫ですか!?」


 いや、大丈夫なわけないだろ。鎧が徐々に熱くなってきて。焼き肉の気分が味わえるぜ。痛覚軽減仕事しろ!


「ふ、ファイアボール!」

 俺の手から放たれたファイアボールは目の前の木にぶつかって消えた。

 爆発したりもしないし、特に威力が変わった様子も見られない。


「カグノちゃん……降りて……」


《行動により【火耐性Lv5】になりました》



「変わりませんでしたね。そしてエレメンタルのことについて報告した掲示板ですが、やり方がいまいちわからないという人が多いですね。そもそも魔力操作を持っている人があまりいないのもあるのだと思いますけど」


 魔法を維持しながら何か人を思い浮かべるだけじゃないのかな?


「後召喚できたけど、幼女じゃないとの報告もありました。どうやら動物型と幼女型があるようですね。しかしどれも火のエレメンタルだけですね。他の種類はまた違った方法があるのかもしれません」


 動物型もあるのか。幼女を連れ歩きたくない人用か。それにしても火魔法だけとは。まだまだ謎も多い。魔法の威力が上がると思ったらそれも違うし。一体何でだ?

 まあ、カグノの熱さじゃ実戦では使えそうにもないけど。



「それもおいおいイッカクさんみたいな検証班が解析してくれるだろ」

 カラコさんの光魔法だったらやたら眩しいエレメンタルが出てくるのだろうか。

 四大属性しかいないという可能性もあるが。





「よし、ここらでいいか」

 俺はプレイヤーの気配が全くしない奥地までやってきた。もちろん俺には気配を感じ取ることなんてできないから、プレイヤーがいなさそうな気がするというだけだが。


「トレント」

 地面からメリメリと音を立てて木が迫り上がってくる。

 この呪文はトレントを呼び出すというものだ。見た目はただの木。動けないこともないのだが、半端無く遅い。どちらかというと待ち伏せて奇襲に向いているようだ。

 こんな風に俺が採取する時の警備役として呼び出すのが良いかな。


 突然出てきたトレントにカグノが興味を移して、エウレカ号から飛び降りた。エウレカ号がどことなく寂しそうにしているのは気のせいだろうか。

 このトレントにも名前をつけてやったほうが良いのだろうか。

 熱さを嫌ったのか、トレントが地響きを上げながら離れる。

 それを二人が追いかける。

 そしてトレントが逃げる。


 やめてあげなさい。

「エウレカルテル号、カグノちゃん。やめなさい」

『えー!』


 二人の視線がトレントから離れた途端、近くの木に寄り添い、何気ない顔で百年前からいたような顔をしている。

 カグノとエウレカ号は近くの一本一本の木を触って確かめていた。トレントは内心冷や汗をかいているだろう。これも仕事だ。我慢してくれ。



 ヤク草にドク草にオイシ草。太陽草に滴凍草。

 そして新しく見つけたのがマイタケだ。


 マイタケ

 品質 B

 食用にできる珍しいキノコ。木の根元に生える。できてから時間が経つほどに品質が高くなり、キノコ自体も大きくなる。炒めものなどで食べられる。



 マイタケって珍しいんだな。結構大玉だったから品質が高かった。


《行動により【擬態Lv4】になりました》

《行動により【発見Lv9】になりました》

《行動により【収穫Lv8】になりました》

《行動により【植物鑑定Lv10】になりました》

《スキル【植物鑑定】がレベルマックスになりました。スキル【植物学】に進化可能です》


 採取している間にレベルがあがった。そして植物学? 植物鑑定の上位スキルか?


「カラコさん植物学って知ってる?」

「聞いたことが無いですね」

 レベルマックスなら上げてしまおうか。必要スキルポイントは15か。元が元だったからそんなに重くはないな。


《スキル【植物学】を取得しました。残りポイントは32です》


 まだまだあるな。植物鑑定との違いは……おお、説明文が多くなっている。




 ヤク草

 品質 B

 HPを少し回復する草。湿潤な土地ほど品質が高いが湿地には生えない。日陰を好み、藪の中や木の根元などに生える。葉が大きくて柔らかいのでそのまま食すことも可能。しかし味は苦い。一年草であり白い花を咲かし、種を作ると枯れる。しかし匍匐茎によっての繁殖も一般的なので花を咲かせることなく寿命を終えることも多い。花を咲かせている時はドク草との見分けが容易になる。主にポーションの原料となる。遡行成分を多く含んでおり、その半分以上が遡行成分でできている。遡行成分の働きを抑える成分がある。



 ふーん、へー。

 白い花が咲くんだ。そしてそのまま食えるんだな。前食った時にお腹壊さなくてよかった。そういう状態異常があるのかは知らないが、ありそう。



 ドク草

 品質 F~A

 状態異常【毒】にする草。その毒は内臓に作用し、服用者に吐き気や倦怠感、頭痛を与える。ヤク草に非常に似ており、間違えて食べる者が絶えない。その見分け方は葉の裏側にある白い線。これを知っていれば簡単に判別することができる。ヤク草と同じく一年草。薄紫色の花を咲かし、種を作ると枯れる。しかし匍匐茎によっての繁殖も一般的なので花を咲かせることなく寿命を終えることも多い。花を咲かせている時はヤク草との判別は容易。湿潤な土地ほど品質が高く、湿地にも生える。日陰を好み、藪の中や木の根元などに生える。主に毒薬などに使われる。その花には毒性はなく、お茶として飲まれる。また花の色は紫色なのでヤク草との判別は容易。



 見分け方が書いてある。これならば鑑定持ちでなくとも見分けられるのでは?

 確かに葉の裏側の茎のところらへんによく見たら白い線がある。これは注意深く見ないと気づけないな。そんなことするぐらいだったら鑑定で見極めた方が効率がいい。


「植物学って植物鑑定の上位スキルですか?」

「ああ、今のところは植物鑑定の時に見えていた説明文が長くなっただけだな。後ヤク草とドク草の違いはこの葉の裏側らしい。白い線がある方がドク草でない方がヤク草」

 カラコさんに手渡してみる。



「う、うーん。わかりにくいですね。知っているから気づけますけど、知らなかったら何の違和感もないかも」


 やはりそうか。

 とわかったところで何にもならないんだけどな。




 植物学を取得してわかったことがいくつかある。

 ヌメリタケのヌメリは耐火性能を高めて火傷の薬になる。

 ベニテングダケをドラッグ代わりに食べるやからがいるそうだ。

 そして太陽草は太陽神薬。月光草は月神薬を作ることができる。それぞれ夜の生物が昼に、昼の生物が夜に適応できるようになる薬らしい。この薬が作られたら暗視スキルは終わるな。俺の場合はスキルポイント使って取ったわけではないからいいけど。

 それと滴凍草。魔力水が取れるらしい。


「手際が良いですね。リアルで山菜取りでもしてたんですか?」

「んなわけあるか」


 家が農家とかいうオチも存在しない。

 俺はどこにでもいる一般じ……いや、ゲーマーだな。リアルのほとんどを放棄した廃人ゲーマーだ。



「そんなカラコさんは古武道でもしてたのか?」

「体操を少しやってましたね」

 なるほど。だからやたら飛び跳ねられているわけだ。

 剣はこのゲームが初めてなのか。それとも違うゲームでも日本刀を使っていたとか。

 VR内では軍人レベルに実戦経験豊富なやつがやたらいるからな。あるかもしれない。

 アメリカで立てこもり事件が起きた時にたまたまその場にいたVRゲーマーがリアルで一度もしたことのない格闘を使って銃を奪ったそうだ。誰でも簡単に戦闘技術が学べる怖い世界になったもんだ。




《行動により【擬態Lv5】になりました》

《行動により【隠密Lv9】になりました》

《行動により【発見Lv10】になりました》

《行動により【収穫Lv9】になりました》

《行動により【植物学Lv2】になりました》

《行動により【木魔法Lv16】になりました》



 グラストラップの効果。それは設置型の罠を作り出すことだ。これを色んな所にばら撒いたら凄い迷惑そう。草と草が結びついて、それに触れたものを転倒させる。効果は高いが、上手く嵌るように誘導しなければならないだろう。

 効果時間がどのくらいなのかはわからないが、相当長く残りそうだ。



 トレントはもう逃げることを諦めたようだ。

 触れる度に揺れる木をカグノが面白がっている。火耐性獲得したりしないのかな?

 エウレカ号も触れてがっていたが、ファイアゴーレムが触れたら多分タダじゃすまないだろうし、君手に炎の剣持ってるじゃん。せっかく呼び出したトレントを殺さないでくれよ?



 夢中になって採取しているうちに周りは暗くなっていた。

 こちらにはカラコさんの光球とエウレカ号とカグノがいるから全然暗くない。



「そろそろ帰るか」

 色々採取できたし、色々わかったし。

 よし調合するぞ!

ありがとうございました。

最近ストックが減ってきたな……

ストックが10越えたら他の作品を書くと決めてるのですが中々進まない。

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