53 第三波
《戦闘行動によりレベルアップしました。ステータスに5ポイント振り分けてください》
《スキルポイントが3増えました》
《戦闘行動により【弓術Lv14】になりました》
《戦闘行動により【狙撃Lv12】になりました》
《戦闘行動により【木魔法Lv13】になりました》
《戦闘行動により【土魔法Lv6】になりました》
《戦闘行動により【遠見Lv12】になりました》
種族:半樹人
職業:狙撃手 Lv27
称号:神弓の射手
スキルポイント:12
体力:90(-35)
筋力:25
耐久力:40
魔力 :80(+58)
精神力:70(+5)(+49)
敏捷 :20
器用 :80(+16)
パッシブスキル
【弓術Lv14】
【狙撃Lv12】【隠密Lv8】
【火魔法Lv17】【木魔法Lv13】【土魔法Lv6】
【マゾヒストLv6】
【遠見Lv12】
【精密操作Lv4】
騎兵を止める上で役立ったのはウッドショットだ。付加をかけると、1匹のゴブリンに突き刺さるだけではなく、周りのゴブリンにも襲いかかる。その時横をゴブリン騎兵が通るとグサッとやってくれるのだ。
もちろんファイアショットも使ってたけどレベルアップはなし。後1レベルで新しい魔法が使えるようになるのに……。
ファイアソードを使って斬りこもうかな。ゴブリン1匹ぐらいなら十分に渡り合えると思う。
まあ、今の所俺の敵になる魔物はいないな。でかいゴブリンもファイアショットの前では2発で倒れた。
結局ジープは第二波の間には帰ってこられなかった。早めの昼飯を食べていたという。
「狙撃手というのはいかに射程を伸ばすかというのが肝心なのですが、それが武器依存なんですよ」
「なるほど。だから皆より良い武器を求めるわけか」
「そう! 全狙撃手にとって遠距離から高火力っていうのは憧れでしょうなー。私の武器は銃ですが、この距離から撃つとやはり威力が落ちるんですよ。市販の弾じゃゴブリンも何回か撃たなきゃいけませんしなー」
俺みたいにこの距離からゴブリンを何匹も串刺しにしているのがおかしいのか。
「これも成り行きで手に入れたんだけどな。称号ができて助かったよ。でなければPKに狙われまくりだった」
「でも譲渡不可だったら売るにも売れんじゃありませんか」
「物足りなくなったら改造してもらうよ」
この威力で足りなくなることは一体いつになるのだろうか。というより加速が便利すぎてこれの他はもう使えない。課金してプレミアムになったら、もう普通のサービスは使えない。みたいな。
「いやー、シノブさんの所のパーティーも年末の大集合みたいな感じでいいけど。装備を揃えてるっていうのも迫力があっていいですねー」
「赤の騎士団とかな。攻めること火の如しって感じでカッコいいよな」
「同じ赤の装備で固めている紅蓮隊も中々いいですよー。やっぱ赤って人を燃え上がらせる何かがあるんでしょうね」
紅蓮隊。重装備に身を固めた火魔法使いの集団だ。エクスプロージョンを集団でぶっ放しながら、ファイアソードで斬り込む様は胸熱だ。
あれ? 俺も重装備で火魔法使えんじゃん。ああいう戦い方もありなのか?
「やっぱり火魔法が目立つよなー。1番派手で攻撃性が高い魔法だもんな」
「氷魔法も中々ですよ。召喚魔法ですけど、ブリザードリザード。あのブレスは美しさという点では炎魔法に勝っていましたね」
巨大な氷で作られたトカゲに乗りながら、水魔法を放ち、それを片っ端から凍らせていく戦法は中々美しく、そして有用だった。水たまりに触れるだけで氷がそれを媒介にして、せり上がってくるのだ。
「召喚魔法で呼び出された中で最強なのはあの黄緑色のドラゴンだろ?」
あの黄緑色の巨大ドラゴンは空中に浮いて一方的にブレスを浴びせているだけだ。それだけで何十匹も同時に葬り去っている。
「噂なんですがね。あのドラゴンを出すために1日使ったらしいですよ」
それが本当だとしたら凄い情熱だな。だがそのお陰で今は楽にレベル上げをすることができると。しかし自分で頑張りたい人には不向きだろうな。自分のモンスターを育てるのが好きな人には良いかもしれない。
俺も小さい頃はポケットに入れられるサイズのモンスターと一緒に旅をしたものだ。それが今やモンスターを狩る側になっているという。あの頃の純真な俺はどこに行ってしまったのだろうか。
モンスターに戦わせるのも一緒か。
因みに幼心ながら3つの隠しステータスを知っていた。完璧な個体を作るためにランニングをよくしていたものだ。
っとまあそれは置いておいて。
「召喚魔法って本当にギャンブルだよなー。良いやつと悪いやつの差がさ」
竜人兄弟のハチドリとかは何もしてなかった。何かあるのかもしれないが、俺にはわからなかった。
「大体の分類は選べるらしいですよ。物理か特殊かとか、騎乗できるサイズかどうかとか。後は補助タイプかどうかとか。私もソロでやってるので召喚魔法は手に入れたいところなんですけど……」
「ゲーム内で召喚魔法が使えるようになることってあるのか? あるんだろうけど、凄い難易度高いと思う」
「ですよねー」
高レベルの人だけにというのなら、俺はいけるはずだ。廃人のレベル上げの速さなめんなよ。しかしNPC一人一人に話を聞いて、普通じゃ行けないエリアに入れるようになって、信頼度上げまくって、それでやっと習得とかだったら無理だ。
俺も相棒が欲しいな。
強いていうならカラコさんが相棒かな?
大体一緒に活動してるし。
「ソロで狙撃手って接近戦に持ち込まれた時はどうするんだ?」
「そりゃ逃げますよ。私1人ではやれません。召喚魔法か何か魔法を覚えてたら良いんですけど、全て銃関係のことに使ってしまいましたから」
場所を特定される前に倒せれば良いんだろうけどボス戦とかキツイだろうな。
「キツイ敵が出てきたら大抵野良パーティーに入ります。でもPKとかもあるし、物騒ですなー」
「あー、俺も襲われたことある。フレンドに連絡したから何とか助かったんだけどギリギリで巨大隕石落としてきてさ」
「あー、継続戦闘能力0な魔法屋ですか。一回撃ったら戦闘は終了しますが、アイテムも悪いもんになるし、もしかわされた場合、ヘイトが離れなくなりますし。色々使い所が難しいところですね」
知っていたのか。それに何と言ってもあの詠唱の遅さが問題だと思う。俺が凄いねばっていたから、あそこで間に合ったが普通の戦闘では唱えているうちに殺されるか、仲間が倒してしまうだろう。というより何もしない魔法職1人を抱えるのが余裕なパーティーでないと。
「弓はさ、魔法を低コストで放てるけど、銃はどんな感じの特性なの?」
「銃は弾丸によって、効果が違うんです。作成者の手によって色んな種類の弾丸があるから、弓よりも自由度は高いですね。私も行きつけの弾丸職人がいますー」
弓はショット系のスキルを得られるだけだもんな。その場に応じた種類の弾が選べるのが利点か。魔法を持っていなくても色んな属性の弾丸が作れるのかな?
「お、第三波だ」
雑談をしていたら、第三波の先陣が見えた。
ゴブリンって小鬼だったよね。どう見ても人間より大きいんだけど。雑魚がいなくなり、デカイのと騎兵。そしてフクロウに乗ったゴブリンまで出てきた。
「ありゃあ、空中から一方的に攻撃できてた人もダメージ受けますわ」
ワイズさんは魔導書を2冊同時に展開している。両方とも空中に浮き、1冊は雷を空中位置の相手に落として、もう1冊からは炎でできた蛇を出して空中戦力を殲滅しにかかっている。
「ワイズが上は任せろってさあー。んじゃ俺は前に戻るぜい」
ネメシスが出てきたと思ったら帰っていった。
俺は今まで通り下を狙ってれば良いのか。
「でも、こんな風に完璧に守られてるって何か物足りないよな」
「そうですねー。私はFPSとか好きなんで、こうやって狙い撃ちにするのも楽しいですが、1人で狩りをしている時もまた別のスリルがありますなー」
今日は経験値稼ぎのためと割り切ろう。
このイベントが終われば、また東で採取をすれば良い。
あー、でもギルドもつくらなきゃいけないのか。他にも色々やることがあったような気がする。
「装填、加速、破壊、付加、ロックショット」
ロックショットの場合見た目は大きく変化しない。更に硬くなるだけだ。物理攻撃力が大きく跳ね上がる。と思う。ダメージ量がどうとかはよくわからない。
超デカイゴブリンの胸に矢が突き刺さる。
体勢が崩れたところをヨツキちゃんに消し飛ばされる。
体勢が崩れ安いという効果があるのかもしれないな。ただの質量かもしれないが。
徐々に前線は押され始めていた。空中戦力の存在だ。こちら側の空中戦力は数少ない。間をすり抜けて後衛の方へと向かっているのだ。魔法にしても弓にしても銃にしても空中位置の相手を狙うのは中々難しい。発動の遅い魔法や、速度が遅い魔法は全てかわされてしまっている。
空中にいる鳥人や、召喚獣なども実力のないものから落とされていっている。そもそも鳥人とかは耐久力もないし、体力も少ない。今もなお最前線に近い位置で飛んでいるのは竜人か、高位の召喚獣だけだ。
ダメだ。皆バラバラに魔法を放つからかわされている。戦場での弓兵みたいに一斉に放たなければ。
前線が押され始めてきてから、俺達のパーティーは孤立しはじめた。総勢12人だけで何十匹もの巨大ゴブリンを相手にしている。
ヨツキちゃんが大剣を振れば、ゴブリン大は吹っ飛び、カラコさんが首を斬ってトドメをさしている。ヴィルゴさんはもう盾を捨てて、素手でゴブリン大を殴り倒している。ヴィルゴさんが1人でラッシュを打ち込むだけで、ゴブリン大が沈んでしまっている。恐ろしい。
そしてジンもそれに負けないとばかりに斧をブンブンと振り回している。
マッドとネメシスは完全に後衛を守るための壁となっている。後衛は結界に守られていると言っても、ゴブリン大の1回の攻撃で壊れてしまう。アオちゃんの式神の姿もいつのまにかいなくなっていた。
ワイズさんが前衛の攻撃役のところに空中戦力を1匹も通していないというのが、さすがといえるだろう。
しかしこれはまずい。非常にまずい。敵陣の中に1つのグループだけが取り残されているという状況になっている。
ドラゴンを使っているサモナーがワイズさんが空中戦力を全て叩き落としているのを利用して近くで暴れまわっているが自分が危険になればすぐさま逃げてしまうだろう。
ここは俺が一肌脱いでやるしかないか。
ソロの女の子がピンチになっている場面は残念ながらなかったけど、仲間がピンチになっている。今連射を使わないでいつ使うんだという話だ。
突如前線に巨大ロボットが現れた。
ちょっと何あれ凄い。
「装填、加速、付加、破壊、連射、ダブルアロー、チェイスアロー」
俺の全力見せてやんよ!
「ファイアショット!!」
蟻のように蠕くゴブリンたちの間に火の矢が突き刺さり、爆ぜた。
数百匹のゴブリンが矢で葬り去られただろうか。
突如現れた巨大ロボットと、降り注ぐ光の矢にプレイヤー達の士気は大いに上がった。
皆それぞれ大きな魔法を放ち、前線は少しずつ前に動き始めた。
竜人達が巨竜化してゴブリン達を薙ぎ払い、精霊達が召喚される。獣化した獣人達が圧倒的なスピードでゴブリン達の群れに殴りかかる。
それに続いて騎馬隊も突進していき、他の歩兵達も突っ込んでいった。
一気に前線が進み、ゴブリン達は森の入り口まで押し戻された。
3回目の戦闘。これにて終了。
「いやー、本当にえげつない力持ってますわー」
思ってたけど、ジープって関西の人だよね。最初に会った時からどんどんななまってるいってるような気がする。親しくなったから方言が出たってことかな?
俺がえげつない力を持ってたし、他の人の頑張りもあったから今回は切り抜けられたけど、次はそうも行かないだろう。前衛の被害は甚大。空中戦力もほとんどが脱落。ここらへんが退き時かな。街の被害が食い止められないのは悔しいけど。
《戦闘行動によりレベルアップしました。ステータスに5ポイント振り分けてください》
《スキルポイントが4増えました》
《戦闘行動により【弓術Lv15】になりました》
《レベルアップによりスキル【アローレイン】を取得しました》
《戦闘行動により【狙撃Lv13】になりました》
《戦闘行動により【火魔法Lv18】になりました》
《レベルアップによりスキル【ファイアストーム】を取得しました》
《レベルアップによりスキル【ファイアウォール】を取得しました》
《戦闘行動により【木魔法Lv14】になりました》
《戦闘行動により【土魔法Lv7】になりました》
《戦闘行動により【遠見Lv13】になりました》
《戦闘行動により【発見Lv9】になりました》
種族:半樹人
職業:狙撃手 Lv28
称号:神弓の射手
スキルポイント:16
体力:90(-35)【65】
筋力:25
耐久力:40
魔力 :80(+58)【123】
精神力:75(+5)(+49)【119】
敏捷 :20
器用 :80(+16)【92】
パッシブスキル
【弓術Lv15】
【狙撃Lv13】【隠密Lv8】
【火魔法Lv18】【木魔法Lv14】【土魔法Lv7】
【マゾヒストLv6】
【遠見Lv13】【発見Lv9】
【精密操作Lv4】
そういえば弓術でもスキルが手に入る時だったな。アローレイン。空中から矢を落とすあれか。1回放っただけなのに、大量に矢が落ちてくるあれ……え? 俺がやったら強すぎない?
破壊と付加つきでエクスプロージョン並みの威力を持つ弓を簡単に大量生産とか。ゲーム崩壊しちまうよ。ちょっと待て。連射+アローレイン+ダブルアローってどうなるんだ?
1がダブルアローで2倍になって、それがアローレインで大量に増えて、それを連射で……。
ダメだ。もしかしたら軍団1個でも制圧できてしまいそうだ。
こんなこと考えてるけど、アローレインは威力が分散されますっていう落ちだったりするんだけどね。もし同じダメージだったら弓優遇されすぎってなるしな。
火魔法はファイアストームとファイアウォール。
ファイアストームは全体攻撃だろう。地味に初の大量攻撃呪文だったりする。エクスプロージョンも固まってたら多数にも効くんだけどね。なぜ知ってるかって?
戦場で見てるからさ。
そしてファイアウォール。ゴブリンの騎兵が突撃してきた時にこれを発動させればこんがりと焼きあがるってわけだ。これも戦場で見たけど、ファイアウォールという名前なのだから一瞬で灰にするぐらいの熱量でも良い気がする。本物のブラックホールにあるファイアウォールが再現されたら術者ごと燃え尽きちゃいそうだけどね。
試すのはMPが心配だから後にして、少し前衛と話し合ってこようか。
「俺ちょっと前に出て、パーティーと話し合ってくるよ」
「じゃあ、私もまた補給に向かわせてもらうんで、じゃまた」
俺はこれからどうするかを確認するために、人混みを抜けていくのだった。




