36 謝罪と不安
前回
カラコさんから来たメールの内容を変更しました。
アオちゃんと合流した。と書かれていましたが、合流していません。
申し訳ありませんでした。
今回は少し短いです。
冒険者ギルドは何やらざわついていた。
「む、神弓殿ではないか。先ほどは助かりましたぞ」
あ、竜人兄弟。
「結局倒せなかったけどね」
「そのために今パーティーを募集しているのだ。我らは2人。後4人必要だったのだが、神弓殿はこの後の予定はどうかな?」
そんなことをしていたのか。HPとMPは回復しているのかな。俺はログアウトしていたから大丈夫だが。
「神弓殿から預かったポーション。ありがとうございました。私だけではなく。兄者のHPまで回復出来ました」
竜人弟が丁寧に返してくれた。よかった。1本とはいえ貴重なものだからな。ここで会えなかったら俺はいつ返してもらおうと思っていたんだろう。
「シノブさん、大丈夫ですか? 初めての死に戻りですけど」
カラコさん……カラコさん……死んでないんだよ。
「それにその後、すぐにボスが出現したって聞いて、後もう少しいたら最初の発見者としてボス討伐権を……」
「そこの剣士。神弓殿は死に戻ってなどいぬぞ。我らと共にボスと戦ったのだ」
「え? 本当ですか? シノブさん」
「あの後別れてから色々あってボス戦発動しちまってな。逃げる時にこの2人と出会って共闘したんだ。いやー、勝てなかったけどレベルも上がったし、あの時助けに来てくれてたらなー」
カラコさんが凄く悔しそうな顔をしている。面白い。
「いや、こっちにもこっちの事情が……」
「腰の刀綺麗だねー。性能はどうなの?」
「むう……」
っと少しいじめすぎたな。泣かれてもこっちが困る。
俺の器の広さに免じて許してやるとするか。
「この殺気……相当な手練だな」
竜人兄は殺気が感じ取れるのか?
周りがざわついているが、一体何が起こったのだろう。
「し~の~ぶ~く~ん、カラコちゃんに何をしているのかな~」
何者かが後ろから俺の肩を掴んだ。
ガガガガ、肩が、肩が割れる。痛覚設定働けよ!
もう後ろにいるのはわかっている。
ヴィルゴさんだ。
「い、いや。俺は無罪だ!」
やばい、このセリフって地雷か?
てか何これ、スキル!? 何で目が光って髪が逆だってるの?!
「ヴィルゴさん、やめてください。私が悪いんです」
カラコさんの静止でヴィルゴさんが普通に戻った。
「そうだろうな。シノブは自分より年下の女の子をいじめるような趣味はない。どちらかというと虐められたい人じゃないか。何かわけがあったんだろ?」
さすがヴィルゴさん、わかって……わかってないな。俺は虐められたいわけじゃない。
「私達2人では手に負えないモンスターが出てきて、シノブさんが囮になって私を逃してくれたんです。てっきりシノブさんは死に戻りするかと思っていたんですが、1人で包囲を突破してきて。私が助けを呼べばこんなことには……」
俺が囮になったっていうより、俺の足が遅くて逃げられなかっただけだよね。それにこんなことって俺は生き残れたんだしいいような気がするけど。
「それで誰かに相談しなかったのか?」
「あ、ワイズさんに相談するって言ってたな」
そういえばそうだ。ワイズさんに相談したならなぜ助けが来なかったんだろう。
「ワイズさんは一度ぐらいは死に戻りを経験しておいたほうが、いざという時死ぬのを戸惑って冷静な判断ができないと言っていたので……」
「ほう」
「なるほど」
ワイズさんが言ったから助けが来なかったのか。しかしワイズさんの言い分にも一理はある。結局死ななかったけどな。
「ふん、そんなもの負けないようにすれば良いだけだ」
ヴィルゴさんカッコイイー! 男前!
「そうですね。本当にごめんなさい。シノブさん」
「いやいや、俺も行きて帰れるとは思ってなかったし」
マゾヒストのことは言えないな、うん。
「神弓殿、それでどうするのだ。一緒に来てくれれば我らも助かるが」
「ああ、そうだな。カラコさん、どう? 今からボス戦行ける?」
「もちろんです!」
おお、自信満々だな。
「ハエだけど」
「……もちろんです」
タイムラグあったな。大丈夫かな。
「私は特にダメな魔物とかはいないな」
ヴィルゴさんは全然大丈夫そうだ。
「これで盾役が2人、攻撃役が3人。回復役か補助役が欲しいところだな」
竜人兄は盾を持っていないけれどタンクなのか。魔法とか切ってたし、役目は果たせてそうだけど。
「そこの竜人。私は回復役もこなせるぞ。本職に勝るとは言えないが。そして残念なことだが、このパーティーはこれで6人揃った」
ヴィルゴさんが足元からラビを抱き上げる。
そういえばここにいたな。ラビは索敵役とでもいえばいいのだろうか。
「少々バランスは悪いとは言えるかもしれないが、これで行くしかなかろう」
あれ、そういえばこの2人も召喚獣もってたよね。結局何もしてなかったし、特に意味のない愛玩用の召喚獣だったのだろうか。
ボス戦で回復役が本職ではないヴィルゴさん1人。非常に不安だが、俺は攻撃が当たる距離には近づかないし、カラコさんは当たったら即死タイプだし、不安なのは竜人兄弟だけだな。ラビも二本足で立ってシャドーボクシングなんかしているしやる気も十分……ヴィルゴさん何教えてんの?
マッチョなウサギが生まれそうで怖いんだけど。次に進化するときにボクサーラビットとか出ないよね。
「ボスの攻撃と予備動作についてまとめたものを渡す。どうかフレンドを交換してくれまいか?」
なんか竜人兄ってガチガチの戦闘タイプかと思ったら策士みたいなこともするんだな。。確かに予備動作とかがわかっていたら避けやすい。
「我ら6人で倒せるかは個々の働きにかかっている。回復役や補助役がいないのは心配だが、我らは今までそれでやってきた。今回のボスは今までとは違う。明らかに格上だ。この即席のパーティーで倒せるかどうかはわからない。しかし倒せぬのなら撤退してまた挑戦しなおせば良いだけだ。さあ、やるぞ」
「おー!」
ポーションは一応1人に二瓶配っておくか。
カラコさんみたいに当たらないことを前提としたプレイをしている人には必要ないかもしれないが、一応だ。
「シノブさん、本当にありがとうございます」
冒険者ギルドから西門へ向かっている時、カラコさんはお礼を言ってきた。
「何のことだ?」
「その……最初に武器すら買えない私を拾ってくれたことです……」
随分と古い話を持ち出してきたな。といっても一週間ほど前ぐらいのことか。
「ああ、あん時は俺もウサギ何体か倒すので精一杯だったしさ。俺のほうが感謝してるよ」
カラコさんは息を吐き、ほっぺたを叩いた。
「私も頑張ります。運営の嫌がらせになんか負けません」
あー、ハエのことか。俺は小さいハエが大量より、大きいハエが1匹の方が精神的にはダメージは少ないと思う。
西門付近は悪の化身だよって感じの空気が流れていた。紫色っぽい風だ。何人かのパーティーが命からがら戻ってくるのが見える。そりゃあ、なんにもないのにいきなりボスに出くわしたら逃げるよな。俺でも逃げる。
西門からフィールド上に出た瞬間、奴はやってきた。
『ギギギギ、待ッテイタゾ。今度コソ喰ラッテヤル』
牙をガシャンガシャンならして相手もやる気一杯だ。
そしてカラコさん、あんま俺の腕掴まないで、カラコさんの筋力じゃかなり痛いから。後衛の後ろに隠れている攻撃役って……大丈夫かなあ。
ありがとうございました。
ハエは知らない間に出てきたキャラなのでどうなるかはわかりません。




