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狙撃手の日常  作者: 野兎
神の弓は月の形
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35 相談

「ってことでもうなんか精神的に耐え切れなくなって一旦ログアウトして休んできたんですよ……」

「……」

 目の前で槌を振るっていたイッカクさんが一旦作業の手を止め、俺を呆れた顔で見る。


「どうしてそれで私のところに来るんですかねー」


 再びログインした俺はイッカクさんの店の奥、工房にいた。ゲーム内なのにちゃんと炉や剣を打つ場所。金床がある。


 何故ここに来たのか。それは俺にもわからない。決してロリを見て心を癒やそうとかいう変態的な理由ではないはずだ。


「誰かに愚痴りたかったし……カラコさんSだし……他にいる場所知ってる人いないし。俺Mじゃないし……」

「マゾヒストってスキルは確かに有用ですねー。未知のスキルの可能性は高いですねー」

「俺狙撃手だし……」


 戦士だったら……戦士だったら特殊スキル公式チート俺TUEEEEEEEができたのに……。


「今から戦士に転職するというのもキツいでしょうしねー。しかしダメージを負わない狙撃手だからこそできる戦術もありますよー」

「嫌な予感がするな」

「そんなことはないですよー」

 妙に楽しそうなイッカクさんの提案を聞くと、それはまた使えそうなものだった。



 マゾヒストというのは負ったダメージの割合でステータスが上昇するスキルだ。それだけではなくバッドステータスにも適応されるのではないか、ということだ。

 呪いがかかっている装備を身に付けて、筋力を下げて全てのステータスを上げることができないかということだった。


「これさえできれば、とてつもない強化ですよー・このスキルの取得条件を特定できれば他のプレイヤーに情報が高い値段で売れますねー」

 売れるって……RMTリアルマネートレードじゃないよな。

 確かに凄い強化だ。

 あ、そういえば。


「その時のボス戦で共闘した竜人が凄く固かったんだが、それはスキルなのか? ヨツキちゃんもステータスが凄く高そうだし」

 いやー、あの2人はかっこよかった。

「耐久性を上げるスキルはたくさんありますし、竜人は元々耐久が高いですしねー。ヨツキちゃんのは狂化で能力をブーストしているだけですよー」


 狂化というと耐久が落ちて筋力が上がるっぽい効果は想像するけど違うのだろうか。


「使いこなせないスキル筆頭ですねー。手足の感覚を全て入れ替えて、全ての能力が大幅に上がりますー。ようするに右手を動かそうと思ったら、右足が動くって感じですねー」

 ん? どういうことだ?

 手足の動きが変わるなんて、そんなことできるのか?


「MPのみを上げて、狂化を使った砲台型魔法使いはいますけどー、それでも緊急回避ができなかったりするのであまり好まれてはいませんし。全く手を動かさないというのも難しいですねー」

 それを戦士職でできているヨツキちゃんは異常なのか。

 実は魔法を使えたりもするのだろうか。



「そんなことよりほら、これをつけてみてくださいー。もしステータス減少でもスキルが発動するようだったら、これは革命ですよー。とりあえず入れておけばいいスキルの中に入るかもしれません!」

 イッカクさん興奮してるなー。そして見るからに怪しく呪いがついてるような見た目の指輪。色々と禍々しいオーラが出ている。


「これ大丈夫なの?」

「後遺症は残りませんよー。安心してつけてくださいー」

 つけたら外れなくなるとかキャラ作り直しレベル。そんな恐ろしい装備があるのか。


 装備してみた。

「無理みたいだな」

 ステータスを見なおして思い出したが、俺の弓には体力減少の呪いがかかっている。


「そうですかー。残念ですねー」

 イッカクさんは凄く残念そうにしている。さすがにそんなことができたら……ね。狂化とかマゾヒストとか強化スキルで最強の魔法使いとかできちゃうし。


「では次にこの剣を装備してみてくださいー」

「え? まだやんの?」

「この剣は手に取った人に毒の状態異常を与えますー。耐性付にもいいんじゃないですか?」

 ちょ、ちょっと待て。毒耐性つけるから。


 あー、毒気持ち悪い。

 HPが徐々に減っていくー。

「毒でも効果あるなー」

「なるほどー。修正値教えてくださいー」

 手元のメモ帳にイッカクさんが修正値を書き込んでいく。


「じゃあ、次行きましょうかー」

「次?」

 なんかこの人も色々と酷いな。


 その後、俺は麻痺、眠り、石化、暗闇、気絶などの状態異常を受けた。

 装備したら気絶する鎧って何なんだよ。


「効果があったのは麻痺と石化だけですかー」

 俺の推測したスキル内容は間違っていたようだ。麻痺と石化はHPは削れないのに何故だろう。


「そもそもHPとか関係なかったみたいですねー。一体条件は何なんでしょうねー」

 謎は深まるばかりか。


「次来るときはもっと種類を増やしておきますねー」

 ……おう。


「まあ、聞いてくれてありがとな」

「シノブさんが落ち込むと敬語になるのが面白かったですよー」


 ……よし、カラコさんと合流するか。


「カラコさんがどこにいるか知ってるなら教えて欲しいんだが」

「そうですねー。刀ができたと報告したらとりにきたんですよー。それ以外は知らないですねー」


 刀を取りに来たって……俺がボスと戦っている時とかか。

 カラコさん……刀受け取りに行く余裕があるんなら。誰か呼んでくれよ……。


「たぶん冒険者ギルドに行けばヴィルゴさんと……あ」

「なんですかー?」

 すっかり忘れてたー。ヴィルゴさんが盾職を無理してやっているんじゃないかってことイッカクさんに聞くんだった。

 他にも忘れてること無いかな。


 ……不動産とえるるさんに素材を渡す。後ルーカスさんから教えてもらった場所に行く。今のところはこれぐらいかな。


 ん、ポイズナスフラワーの鑑定もしていない。スライムからドロップしたスライムの粘液も調合できるか確認しないと。後は新しいスキルをどんなものを取ればいいのか。冒険者ギルドに弓の使い方を教えてくれるNPCがいたらおすすめスキルを教えてもらわなければ。

 やらなければいけないことはたくさんあるな。



「そう。ヴィルゴさんのことだ。今は俺達の願いで盾を使ってもらっているけど。βの時はどんな戦い方をしていたんだ?」

「あー、そうですねー。彼女は人型の生物相手に拳で闘うことが多かったですねー。運動している人なので他の武器も使えるとは思えますがー。私としては対人間近接格闘術トップの人に盾を使わせるのはもったいない気がしますねー」

 やっぱりそうか。というかトップって言っちゃうんだな。

 ヴィルゴさんって今、調教関連のスキルと盾関連のスキルと格闘関連のスキルを同時に持っているのか。特化しているわけでもないのに、あそこまでできるのはプレイヤースキルが段違いなのだろう。


「ヴィルゴさんにはゲームを楽しんでもらいたいし、でも盾いなかったら相手の攻撃が突き抜けて俺に来たりしたら一発で乙るし……何かいい案ないかな」

 格闘しながら盾を使う。背中に盾を背負って捌き切れない攻撃が来たら亀みたいになってやりすごすとか。無理か。



「んー、せっかくの弓でスナイパーなのだから敵の攻撃が来ないぐらい後ろで戦えばいいのですけどー。ボス戦じゃそうは行きませんしねー」

 さっきのハエ戦では1つの攻撃も受けなかったけどな。ああいうフィールドで起きるボス戦ばかりだったらいいんだけどな。


「やっぱり難しいかー」

「こちらでも格闘ができながら、盾役もできるような方法を探しておきますー」

 イッカクさんにも負担をかけてばっかりだな。



「じゃあ、俺は冒険者ギルドに向かうよ」

「ではまた来た時には各種状態異常の武器を揃えておきますー」

「た、楽しみにしてるよ」

 俺としてはこれ以上強化してもしなくてもという感じだ。宝の持ち腐れというのか。


 マゾヒストがあるならサディストもあるのだろうか。

 攻撃をするたびにステータス上昇とか……強すぎる能力だな。

 何でこんな名前のスキルが強力なんだろう。



 俺は礼を言ってイッカクさんの工房から出た。

 ここから選べる選択肢は3つ。

 冒険者ギルドに行ってヴィルゴさんを待つ。そろそろ来ることだろう。

 カラコさんと連絡する。

 ルーカスさんが教えてくれたゴブリン肉を調理できる店に行く。


 さて、どれにしようか。


 とりあえずカラコさんに連絡するか。と思ったらメールが届いている。


 冒険者ギルドについたら連絡ください。



 カラコさんは冒険者ギルドにいるのか。それなら俺も冒険者ギルドに行くとするか。

ありがとうございました。


訂正

最後のカラコさんのメール内容

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