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狙撃手の日常  作者: 野兎
神の弓は月の形
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31 中毒とギルクエと遭遇

 おはようございます。

 俺には早寝も早起きもできなかったようだ。夜更かしは余裕なのにどうして早く寝ることができないのだろう。


 昨日は攻略サイトを見ているうちに寝落ちしてしまった。


 痛覚軽減設定だが、0にするとモンスターの攻撃がトラウマレベルに痛い代わりに触覚とかが敏感になるらしい。生産職は痛覚軽減設定をなるべく低くしてるとか。

 後前衛でリアルスキルが高い人も低くしているそうだ。痛いと本能が働いていい動きができるんだと。どこの戦闘民族かな。当たらなければいいということか。

 俺はダメだな。後衛で攻撃を食らう機会はないけど。当たった時に痛いのは嫌だ。


 変な格好で寝たせいで体中が痛い。ベッドに寝転がるのも一苦労だ。



 まだカラコさんはログインしてないようだな。

 メールが来てる。


 えるるさんからだ。

 今日の夜はログインできるということだ。

 その時に素材を渡そう。


 昨日できなかった生産でもしようかな。魔法の試し打ちをしてもいいが、今からどこかに行くという時にMPを消費するのはまずいだろう。


 ギルドの生産部屋に行く。

 やはり戸棚のガラス瓶は全てなくなっている。仕方ない、品質の悪い順に飲むか。


 その前に植物類の見極めをしなきゃな。前取った時は戦闘用のスキル構成だったから見極めができてなかった。

 スキルを入れ替えて仕分け始める。



《生産行動により【植物鑑定Lv8】になりました》



 本当に上がりやすいな。収穫スキルをセットしていなかったからか、品質が低いものが多いような気がする。


 そういえば収穫した状態でもグロウアップの効果はあるのだろうか。


 MPの無駄遣いとなった。



 ポーション3本を一気飲みする。HPバーは変化なし。さて、調合するか。


 前回と同じように、すり潰し、煮て、濾す。これを繰り返し、1番出来が悪かったものを飲む。

 飲みすぎて段々気持ち悪くなってきた。



《生産行動により【料理Lv2】になりました》

《生産行動により【調合Lv4】になりました》

《生産行動により【薬品知識Lv7】になりました》


 作り続けているうちに、調合のレベルが大分上がり、品質も徐々に良くなっていく。そして以外だったのが料理のレベルが上がったことである。

 料理と言われれば料理だけど。



 何十本か飲んで吐き気がするようになった。品質はBが最高だ。やはり素材の品質が低かったからだろう。


 お、カラコさんから電話がかかってきた。


(シノブさんどこにいるんですか?)


 頭の中に直接語りかけている!?


 ということはなく、俺以外の人には聞こえないらしい。


「すまない。生産に没頭していた」

(いえいえ、ではギルドの前で待っていますので)


 ぐっ。急に立ち上がると吐き気が。こんなので今日1日活動ができるのだろうか。




 ギルド周辺には朝からゲームとかこいつら何してんだというような人がたくさんいる。

 カラコさんもその中に紛れて……いないね。うさ耳が飛び出てるから見つけるのはたやすい。


「おはようございます。またポーション作ってたんですか?」

「品質が悪かったせいで中々のいいのが、できなかったけどね」

 カラコさんは俺の顔をしげしげと眺めている。ポーションのよだれでも出ていたのだろうか。


「顔が青白いですよ。大丈夫ですか?」

 肌色の肌じゃないのに青白さがわかるのか。凄いな、俺だったら絶対にわからない。

 というよりアバターだから青白くなるなんてことは無いはずだ。現実では必ずしも万全とは言えない状況だが、ゲーム内まで持ち越されるとは思わない。痛覚軽減設定のおかげか痛みはカットされているのだ。


 ステータスを確認してみる。

「ポーション中毒って書いてある」


 何これ?

 ポーション飲みすぎたから?


「聞いたことありませんね。何かステータスの値に変化はありますか?」

「何もない。気持ち悪いだけ」

 一体どういう効果なのだろう。大事にならない状態異常であればいいんだけど。


「気持ち悪いだけなら大丈夫ですね」

 どこのブラック会社や……。

 気持ち悪いだけって……立派な状態異常にかかってんのに。


「一応掲示板に報告しておくので、どうしたらかかったか教えてください」

 ポーションをがぶ飲みしたことを伝えると何ともったいないことをしたんだと呆れられたが、うちのパーティーで飲む人はいないから仕方ない。

 飲ませる前にヴィルゴさんの回復魔法が飛ぶ。



「2人でクリアできるとは思いませんがギルド設立のクエストの内容を聞いてみましょうか」


 2人でボスに挑んで死にそうになったしな。

 その時みたいなことはごめんだ。



 ギルド設立受付は他の受付に比べて人がいない。そしてそこに向かう俺達は必然的に目立つことになる。しかも俺は称号持ちだし、昨日とかで色々顔バレしている。だからこうなるのはわかりきったことであったのだ。


「よお、兄ちゃん。あんた称号持ちだってな」

「何か用ですか?」

 声をかけてきたのは2メートルもあろうかという大男。巨人なのか人なのかはわからないがとにかくでかい。背中には巨大な斧を背負っている。毛皮の防具だし、武器も斧だし、山賊のロールだろうか。

 しかも取り巻きが2人いる。これは気絶した親分担いで「お、覚えてろよ-」っていう役目だな。


「いや、噂の称号持ちに会えたから声をかけただけだ。俺の名前はジン。見ての通り戦士をやっている」

 あれ? 悪い人じゃなさそう?


「私はカラコです。そしてこっちの半樹人がシノブです」

「良かったらフレンド登録してくれないか? 俺はそれなりには腕が立つぜ」

「もう少ししたらギルドを作る予定なんです。腕が立つ人はいつでも歓迎ですよ」

「今はギルドがどうこうは考えてないさ。イベントでは上位に入ってやるからな。それから直々に勧誘しにきてくれ」

「わかりました。イベントが頑張ってくださいね」

「ああ、お前こそな」

 何か2人はいい感じで握手していた。俺は取り巻きの2人と目だけで会話していた。「うちのボス、いつもこんな感じで人に話しかけるけど、見た目のせいで怖がられているんだよなー」って感じの目をしてた。

 いや、目で会話することなんてできないからただ目を合わせて肩をすくめて見せただけだけどね。俺が思っただけ。


 装備的に、戦士、盗賊、魔法使いの典型的な3人だろう。

 ジンは巨人か人。盗賊は猫耳をつけている。男の猫耳とは誰得だろうか。少し尖った耳を持っているので魔法使いはエルフだ。

 エルフは純粋な魔法職で、ダークエルフは肉弾戦にも耐えられるステータスだそうだ。

 典型的なバランスの良いパーティーだな。バランスがいいのは俺たちの所も同じようなものか。


 ヴィルゴさんが壁、カラコさんが物理攻撃、俺が魔法攻撃。


 というよりヴィルゴさんはやっぱり拳で戦う方が好きっぽいよな。盾も完璧に使いこなせているが、本領は素手の時にあるのだろう。何とか盾を持ったまま、素手で戦わせて上げられないだろうか、俺の敏捷が低いからかわすタイプの盾役では俺が被弾する可能性があるから無理だし……今度こっそりイッカクさんに相談してみよう。



「なるほど。シノブさん聞いていましたか?」

「すみません。聞いてませんでした」

 受付のNPCの声ってどれも同じ感じだから背景音として聞けちゃうんだよ。



 カラコさんは大きなため息をついたが、ヴィルゴさんだってよく聞いてないことあるじゃん。どっちかっていうと俺の方が真面目に聞いてること多いよ。無言だがな。


「ギルドを設立するには第一に拠点が必要みたいです。後ギルド職員を雇うお金。ギルドマスターとしての資質を問う面接。ギルドに対して実力を示すためのモンスターの討伐。他にも書類仕事が沢山あるみたいです」

 大変だな。昨日絡んできた……有翼の人だっけ? のギルドマスターはやはり実力者なのだろう。セリフが明らかに三下だったけど。


「聞いていますか? ギルドマスターとしての資質を問う面接ですよ?」

「……ギルドマスターって俺じゃん」

「そんなことにも気づいてなかったんですか?」

 気づいてなかったよ。何だよ、面接って。無理無理無理無理。中学受験を落ちたトラウマが蘇るから。

 そう、それは何年前だったか。俺は小学6年生だった。


「現実逃避しないでください。よほど変なことを言わない限りは大丈夫だと思います」

「影武者とか……」

「ありません。モンスターの討伐はワイズさん達に頼んで。お金は全員で出し合って。問題は拠点ですね……どうせなら動く城とかが良いですね」

 とんでもないことを言い出したな。火の悪魔を動力源にして動くあの城か。動いたら拠点じゃないような気もするし、全員がログアウトしている間にモンスターに壊されると思う。


「金もないし、そこらへんのアパートを借りれば……」

「街の中以外にでも作れるらしいですね。街の中より大きい家が作れる代わりに魔物を寄せ付けない加工とかで高くなるらしいです。ここで話し合うのも何ですから私は不動産屋に行ってきます」

 私は?


「シノブさんは面接をクリアしておいてくださいね」

 え? ちょっと待てよ。不動産屋という楽しそうなことを放り出して俺は面接?


「俺も家を見に行ったほうが……」

「私に任せてください。良い場所を幾つか候補として探してきますから」

 カラコさんだから心配なんだ。気づいたら動く城とか天空の城とかのローンを組まされてるかもしれない。


「あ、そういえば今日アオちゃんが来るって言ってたな。アオちゃんが来るまで狩りでもしてて、来たら2人でいけば? 俺も新しい魔法と、弓の性能を確かめたいしね」

「そうですか。ならそうしましょうか」

 本当にやれやれだぜ。アオちゃんがいればカラコさんが暴走してバベルの塔みたいなものの契約をしてしまうことはないだろう。


 そして俺の計画は西に行き、昨日ルーカスさんに言われた店に行き、なんだかんだ時間を潰し、「もうログアウトする時間ですね。不動産は明日にしましょうか」ということで、カラコさん達がログアウトした時に面接を終わらせ、俺は無事に一緒に不動産屋に行ける。

 完璧な計画だ。



 カラコさんの頭の中を覗ける能力を持ってしても、俺の奸計を見破ることはできまい。フハハハハ。


「そんなに家を見に行きたいなら言ってくれれば良いのに」


 あれ……?

 バレてる?

ありがとうございました。

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