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狙撃手の日常  作者: 野兎
神の弓は月の形
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25 マジカルな人が多い防具店

 マジカル☆ファイターは色々不思議な店だった。不思議な店っていうかなんというかはわからないが。


 まず外観。やたらキラキラしてる。ピンク色を基調としており、真ん中にはフワフワとした文字で『まじかる☆ふぁいたー』と書いてある。平仮名かよ。カタカナかと思ってたよ。

 周りのレンガ造りの家と比べても目立つことこの上ない。


「なんか凄いお店ですね……」

「だな……」

 凄いとしか言いようがない。


「そんなところで立っていると通行人の邪魔だ。さっさと入るぞ」

 ヴィルゴさんは凄いな、慣れてんのか。そしてグイグイ体押すのやめてください。絶対楽しんでるでしょ。いや、カラコさんとヴィルゴさんが入っても別にいいよ。俺は待ってる。俺は待ってるから。


 俺の心の叫びも聞いてもらえずに俺はその店の中に入ることになった。


「凄いですね……」

「だな」


 店の中には防具が所狭しと並べられている。そしてどれもかっこいい。


「いらっしゃいマセー」


 金髪碧眼片言の日本語!

 腰まで伸びた綺麗な髪を持つ女の子がいた。金髪碧眼なんてゲーム内では沢山いるのだろうけど。外国人というのは珍しい。ロールプレイかもしれないけど。


「あの、イッカクさんから紹介されて来たんですけど」

「イッカクさんデスカ。私の名前はえるると申しマス。ヨロシクお願いしマス。イッカクさんのー紹介なら、少しヤスクしておきマスよー」

 イッカクさんの名前プライスレス。


 俺たちは自己紹介をして、どんな防具を作るかについての話し合いに移った。足りないお金はヴィルゴさんが貸してくれるって、ありがとうヴィルゴさん。

 えるるはやはり日本人ではないらしい。日本に来て2年らしい。発音は拙いが、意思疎通には問題ないようだ。


「私はスピードタイプの侍ですから、敏捷と筋力を底上げしたいです」

「サムライ! デザインはどうしますか?」

「和風っぽいものの方がいいですね」

「OKデース!」


 俺は精神力をとにかく上げて欲しいと言ってデザインはお任せにした。ゴーグルと弓が似合うものにしてくれるらしい。

 ヴィルゴさんは盾と鎧の修復をしてもらっていた。


「定期的に整備しないとどんどん耐久値が下がって大事な時に壊れてしまうからな」

 そういうものなのか。俺の初心者用の弓も修復してもらった方がいいのかな?


 カラコさんは脇差しを、俺は初心者用の弓を修復してもらったが、ほとんど俺の弓はほとんど消耗がなかったようだ。



 2日目から、店を持てるほどの財力を持つ人たちは流石だな。イッカクさんのように裏路地の小さいところなら安そうだがここは大通りだ。

 どのぐらい金がかかったのだろうか。


「えっるるちゃーん!」

 店にハイテンションな大男が入ってきた。いや男性なのだろうか。3メートルほどの体を鎧で覆っているのだがその鎧が酷く目立っていた。

 額には1本の長い角、飛び出ている肩、紫の体に緑の装甲。その手には巨体に見合うサイズの銃が握られている。


「これは……初号機」

「お、お客さんか。いらっしゃーい」


 その初号機はぺこりとお辞儀をした。


「この方はシンジさんです。この店の出資者の1人デスねー」

 出資者……というとこの店は何人か共同で買ったのか。なるほど。納得だな。


「なんと言うか……ネタ満載ですね」

 カラコさんに完全同意。著作権とか色々不安になってくる。


「忍者と重戦士と弓術士のパーティーかな。バランスが取れてるね」

 凄いな、全部外してる。仕方ないことだが。


「シンジさんはパーティーを組んでいないのですか?」

「僕の銃は特注サイズだ、店では買えない。銃弾一つ一つもオーダーメイド品になる。素材をこちらが提供するのと引き換えに銃弾を作ってもらってるけどそれでも赤字になることが多い。パーティーなんかに入ったら一日中鉱石を取りに行くことになるよ」


 シンジは鎧をつけたまま修復してもらっているが、その鎧を作らなければ金欠にはならなかったんじゃないかと思う。それほど手が込んでいる。

 銃も鎧に合わせた特大サイズだ。アサルトライフルだったかな。


「シンジさん、お願いがあります。私たちが護衛をするので、鉱石を少し分けてくれませんか?」

 流石はカラコさん。俺にはそんなこと思いつかなかった。これはお互いにとってもいい取引だろう。


「すまないけど。鉱石類は僕も数が足りていないんだ」

 断られた。

「そうですか。無理を言ってすみません」

「鉱石ならピッケルを買って、山の壁際を掘ると出てくるよ。鉄鉱石、金鉱石、銅鉱石とか。金鉱石は特に高く売れる」

 ピッケルか……。植物を収穫する時も何か道具を使った方がいいのだろうか。ハサミとかスコップとか。


「情報ありがとうございます。落ちている石は鉄鉱石だったりしないのでしょうか」

「ああ。あれはただの石ころ。投擲武器として使えるよ」

 石ころ……俺が発見で見つけて拾ってたのは石ころだったのか……。


「アレクさんなら夜の9時カラログインできるデス」

「じゃあ、その時にまた来るかな。じゃあ、また会ったらよろしく。鉄鉱石が取れることを祈ってるよ。っとフレンド登録しない?」


 シンジはアレクという人を待っていたらしい。俺たちとフレンクド登録をすると颯爽と去っていった。凄い目立ってそう。横を歩きたくないな。



「できるだけ早く終わるようニハ善処しマス。作り終わったら連絡しマース。イベントまでには間に合わせたいデスが……間に合わなかったらごめんなさい」

「いえ、この忙しい時に私達の方こそ無理を言って申し訳ありません」

「イエイエ、戦闘職を支えるのが生産職の役目デスから」


 俺がカラコさんぐらいの年にこれほど丁寧な言葉が使えただろうか。カラコさんの年はわからないが何にしても立派な事だ。


「ピッケルってどこで売ってるんでしょうか」

「NPC武器屋で売っていたと思う」

 武器屋でピッケル……同じ鍛冶スキルを使って作られるからかな。


 という事で俺たちは武器屋に向かう事になった。

ネーミングセンスはないです。日々のノリで書いています。

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