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狙撃手の日常  作者: 野兎
王都解放戦
162/166

157 ゴブリンの恩返し

前回のあらすじからお読みください。

 前回のあらすじ

 自殺をしようとしたらカラコさんに首を絞められて止められた。




 ゴブリンでもわかる以下略講座にそろそろ行こうという誘いであった。

 そういう誘いならメールで送ってくれないかな。また黒歴史が増えてしまったじゃないか。

 ゴブリン講座は公式wikiみたいな感じだし、今回もまた役に立つものを教えてくれたりするだろう。それに消息がわからなくなっているゴブ太郎が一体どうしてるのかも知りたい。

 なんだか老いなくなる薬の成分が裏でヤバいことになってるらしかったな。ヤク草を抽出させたら遡行成分が出てきたんだっけ。ちょうど1週間前のことだが、まるで1年以上も前のように記憶が曖昧でこの年にして深刻な老いを感じる。


「シノブさん、行きましょう」

 深い記憶の海でバタフライをしていた俺を現実へと引き戻したカラコさんと共に久しぶりなギルドへと飛んだ。


「えーと? ゴブリン……あー、講座はあっち」

 やる気のなさそうな受付だな。それにプレイヤーだ。いつからNPC以外でギルド職員になることができるようになったんだ?


 前とは違う大部屋に入るとそこには趣味の悪い金色の全身鎧や、仮面を被ったいかにも訳ありそうなお嬢様風な人、そして前回もいた悪友達とその連れがいた。


「久しぶり。こいつ中学の時に歩いてるだけでぐおぅ!」

 貴様のように純粋な魔法使いタイプではないのだよ。この俺の近接職並みの硬さの鉄拳をくらいやがれ。

 ギルド内だからか油断していたピグマリオンの鼻にクリーンヒットした。全くどうせまた俺が小学生にダッシュで逃げられた話とか、何回職務質問を受けたかとかの話だろう。もう大学生だというのにくだらん昔のことをぶつぶつと。


「カラコさん。こいつのことは気にするな。高校の時に……」

 ニヤリと笑うピグマリオン。

 そう、俺はこいつの非常識的な点や、弱点が思いつかなかったのだ。


「あははー。確かにマリオはキモオタなだけで特に中二病だった訳でもないし、私らの中で唯一黒歴史がないかな?」

 悔しい。しかしキモオタというものも大概ではあると思うが。


 というように昔の話をしてカラコさんが感心していた時、前のドアから入ってきたのはゴブ太郎だった。


「ゴブタロウ!」

 その気難しげなゴブリンは俺のことを珍しいものでも見るような目で見て自己紹介を始めた。


『私はゴブジロウ。ゴブタロウは私の兄で本来のこの講座の教授であるが、行方がわからなくなっている。ということで私がこの講座を受け持つことになる。質問は最後に受け付けるので各自質問したいことがあれば考えておくように。では配布されているテキストを開いて』


 眠くなること必須の講座をここでつらつらと書き連ねたところで時間の無駄であるし、強力な睡眠薬として犯罪に使われる可能性も考えると得策ではない。

 カラコさんは開始10分で睡魔の手に落ちたことをお知らせしておこう。

 ゴブリンでもわかるという名前がついているように確かに内容は高校の科学がしっかりと出来ていれば簡単だった。しかしここには高校の科学すらもできない人が大量にいる。


「何でこんな無防備なんだよ……俺だって男なんだぜ……」

 スヤスヤと眠っているカラコさんの寝顔を慈愛の目で見つめる。決して邪な目ではない。言葉に反して心はネコが安心して眠ってくれたかのような安らいでいる。ネコを例に上げたのに他意はない。エロいことを考えていたわけではない。そうだとも。

「知ってます」

「うわーーーー!!!!」

 カラコさんが急に目を開いた。

  起きていたとは気づかなかった。確かに頭から大量のZマークは出なくなったとは思っていたが。


「どこから起きていた」

「シノブさんが『な、なんだってー!?』と叫んだところからです」

 良かった。まだ被害は少なくすんだ。


「もう終わったのか?」

「水素酸素二酸化炭素」

「ここって寝癖つくんだ」

 失礼極まりない連中が喋りながら起きてきた。


『魔法は変形可能。それが私達のだした結論です』

 詳しく説明してくれたが、前回の魔力操作同様、魔法というものを根底から覆すものだ。スキルがなくても本人の技量により、スキルと同じ効果を作り出すことができる。つまり火魔法のスキルしか持っていなくとも、水魔法や土魔法が使えるということだ。実際はそんな簡単なことではないのだろうが、ワイズさんがやっている召喚魔法を使わずに召喚魔法と同じようなことをしているのと同じなようなものだ。あれも考えてみればおかしい。召喚魔法は召喚魔法という独立した体系でなっているのではなく、魔法陣という生産スキルの上に成立しているということだ。

 つまりこのゲームはスキルなど取らなくてもその現象が起こる仕組みをわかっていれば再現できるということ。いわゆる知識ゲーだったのか。


 恐ろしい。やり込み要素が過ぎるぞ運営よ。

 しかし何でもかんでもできるってわけでもないだろうし、ゲームバランス崩壊するほどはできないだろう。



《スキル【魔法合成】を取得しました。スキル欄が限界なので控えに回されました》

《スキル【モノマネ】を取得しました。スキル欄が限界なので控えに回されました》


 そして水魔法のスキルのオーブを貰ったがどうすればいいのか。四属性全てをコンプリートしたらただでさえ取捨選択しなければいけないスキル欄が更に激しい争いを繰り広げることになる。


《スキル【水魔法】を取得しました。スキル欄が限界なので控えに回されました》

 仕方ないよね。


「火魔法がきました。シノブさんは?」

「水魔法だ」

 自分が持っていない魔法スキルが貰えるのかな?



 ゴブジロウによると、牧畜スキルは動物が繁殖するようになる他、牧場を管理することができるようになるみたいだ。そしてレベルを上げるにはたくさんの家畜を飼えばいい。100匹を越えるウサギがいるというのに、意味がわからない。

 養蜂スキルは持っている蜂がアイテムを作り出すようになると。これは肉団子のことだな。


『君は……兄さんのことを知っているのかい?』

「一応、メル友でした。意味深なメールを残してそのから返信が返ってこないので心配していたんです」

『そうか。兄さんは自分がさらわれるそとがわかっていたのかもしれない。兄さんの家には抵抗した後と血痕があっただけで……』

 それもう死んでるじゃないですかー。

『私は兄さんがまだ生きていると思っている。冒険者、どうか私の兄を探してくれないか?』

 クエスト発生ですね。前イッカクさんに頼んで探してもらったけど見つからなかったのはこのやり取りがなかったからか?

 しかし盗賊ギルドはもう壊滅しているし、一体どこがこれに関与しているんだ? まさかプレイヤーでもあるまい。



「シノブ、高校の時の約束覚えてるか?」

 高校の時のことなんか記憶にも何もないな。そんなくだらんこと覚えてるか?

「そんなくだらんことを覚えるほど俺は脳のリソースが有り余っていないって言ってるね」

「シノブ! 俺は! 悲しいぞ!」

「はいはい、うるさいうるさい。あれだよ。一番最初に童貞卒業したやつに豪華なプレゼントってやつだよ。あ、もちろん素人な」

 こいつら、純粋無垢なカラコさんの前で何を言いやがる。

「し、シノブさん? 私は帰ってますね?」

 ほら、真っ赤になって消えてしまった。さすが火魔法を持っているだけあってすぐ赤くなるな。


「まだやってないのか」

「据え膳食わぬは男の恥ぃ!」

「あの調子じゃ襲っても大丈夫じゃなーい? 押しに弱そう」

 全く俺が黙っていると思って好き放題言いやがって。


「あのな、カラコさんはこのVRやりまくり世代の中で奇跡的な純粋な心を持ち続けている。しかもあの歳でゲームがVR初めてな初心者だぞ? 全年齢対象なゲームで卑猥な言葉を連呼するのはやめておくんだな。俺は彼女をそういう対象として見る邪な心は持っていない。あくまで人生の先輩として様々な人が世の中にいるということを教えているんだけなんだ」

 俺の大演説にもひねくれた彼らは心を改めない。


「綺麗事だな。たとえ今は純粋でも。純粋だからこそ快楽堕ちするんだよ」

「やっぱり女子って気持ちいいからね!」

「男を見せろ!」

 こいつらといると文章が穢れる。頭脳が高校生から発達していない哀れな人達なのだ。許してやってくれ。


「お前らに一言言っておく。俺は変態紳士かつヘタレだ。そして自分がモテることはないということに絶大な自信を持っている。俺が気軽に愛を告白できるのは、嫌われてもいい相手か。裏でその人が俺のことが好きだという情報をつかんだ時だけだ!」

 そして俺はまた何かを言われないうちにギルドに戻ってきた。過去のことを知られている相手は会いづらい。俺が忘れている恥ずかしいことを何故か覚えているからだ。


 カラコさんはいない。

 新作の魔法合成の効果でも試してみるか。スキルを使わない方法としては魔力操作で同時に魔法を発動させるというものだ。スキルを使うと新たな一つの魔法として登録される。


「スプラッシュ!」

 広い範囲の空間が爆発する。そしてキラキラとした水だけが残って消えた。

 水魔法の最初の呪文はは全体魔法か。攻撃用のものが少ないと言われているだけあって一番最初のものなのに攻撃性能が高いな。


 さて、毎度お馴染みファイアボールさんと……合わせられるようなものが何もないな。

「グロウアップ……をこらえて、ウッドバインド」

 同時に発動したが、あくまで魔力操作の範囲内の効果な気がする。


《【ウッドバインド】がスキル【ダブルウッドバインド】に進化可能になりました》


《行動により【魔法合成Lv2】になりました》

 意味がわからない。スキルポイントは10か。よく使うし進化させるか。




「ダブルウッドバインド」


 グロウアップをかけた状態のものが最初から出てきた。MP消費は2つの魔法を合わせた時よりも少し多め。




「グロウアップ」


 おお、更に大きくなった。


 けど特にインフォは来ないからこれが原因か、はたまた魔法合成のレベルが低いからか。しかしMP消費が増えて手軽に使えなくなるのが痛いな。ダブルウッドバインドに関しては誤差の範囲内だけど。なるべく低レベルの時に取得した魔法で試してみるべきだろう。




 モノマネに関しては相手がいないのでできない。名前からして相手の真似をするスキルだろう。




 どうも最近あまりレベルが上がってないような気がする。森呪術師なんて8だぞ。


 海に行ったけど結局何もしてない気がするし、明日にでもヴィルゴさんに頼んで良いレベル上げの場所を紹介してもらうとして、今日のところは寝るか。


 別に早く寝るわけじゃないぞ。ただ講座の部分をはしょったので短く見えるだけ。




 ログアウトしよ。


もう1話か、2話ほど更新します。

ユイとかサフドとかピグマリオンとか誰ですかってなってほとんどが背景みたいになっているのは申し訳ありません。

追加するかもしれません。

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