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狙撃手の日常  作者: 野兎
王都解放戦
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145 勲章

 女性が3人。そんな中に俺1人なのは気まずいというわけでもなく、俺は会話に参加せずに空中を見つめていただけであった。


 そう、背景に溶け込むのである。

 コミュニケーション力が上がったかと思ったが、暇潰しを理由に人と話すのはやはりどうも無理だ。



 ハーレムは男の夢などというが、それを成すにはそれなりのコミュニケーション能力が必要なのだろう。

 俺は周りが女性だらけだとパシリに成り下がる自信がある。

 やはり小さい頃から女の子の扱いをわかっていて、コミュニケーション能力がほどほどあり、そこそこ鈍感でハーレムを維持でき、しかもイケメンでなければいけない。男の夢って難易度高い。


 俺は可愛い彼女が1人がいれば良いんだけどな。


 それにハーレムなんて本人はあれかもしれないが、周りから見てると酷いもんだ。何度かハーレムと出会ったことがあるが、皆イケメンの前ではニコニコしながら後ろでは壮絶な争いをしていたからな。何も知らないのは男だけ。

 恐ろしい。女の子は怖い。



 ハーレムは時々映像で見るだけで十分だ。




「暇そうですね、シノブさん」

「うわぁぁ!」

 いきなり声をかけられて、椅子から落ちてしまった。

 カラコさんか驚かすなよ。

 自分でも不埒なことを考えてることぐらい理解しているんだからさ。



「大丈夫ですか?」

「暇ではない妄想するのに俺は忙しいんだ」

 カラコさんは冷たい目で俺を見てくるがその視線が俺をMに改造していくのだろう。

 俺は虐げられたいからこのような発言をしているのではなく、ただ自分に正直であり、カラコさんなら問題がなさそうだから言っているのだ。


「妄想ですか」



 そしてカラコさんも黙り込む。何か妄想しているのだろうか。

 そういえばイベントも終わったことだし、海に行きたいな。俺は水中用装備があるから良いけどカラコさんの装備はない。やはり水着だな。


 えるるに頼んだら作ってくれるだろうか。王都に行った後はカラコさんにそれを提案してみるのも良いな。




 妄想をしていたカラコさんがいきなり頭をテーブルに叩きつけた。大丈夫かなこの人。情緒不安定? なんか怖い。



「一体どんな妄想していたんだ?」

 カラコさんの額から煙が出ているが何のエフェクトなんだ。


「死にたくなるような妄想ですね」

 死にたくなるようなことを妄想するとかレベル高いな。俺はいつでも女の子のことしか妄想していないが、それで死のうと思ったことはない。現実に絶望することはあるが。


「妄想は人を殺しますよ」

 名言だな。

 妄想の意味が病気の意味で使われているならあると思うが。


 妄想のし過ぎで餓死とかあるかもしれない。というかその域に達したら修行僧になれるだろう。というかそれだけの執念があれば現実でも大成しているに違いない。




「……待たせたな」


 ワイズさんが来るまで2人して空中を見つめていた。どこかカラコさんとの距離が縮まったような気がした。

 気がしただけだが。信憑性はない。


 カラコさんは思春期らしく色々と恥ずかしいことを妄想していたらしい。何故わかるのかというと俺がニヤニヤしながら「一体どんなこと妄想してるの?」と聞いたら怒られたからだ。理不尽だと思うが、10㎝近くまで顔によって挑発した俺も悪い。

 俺は妄想中もある程度、外界の状況を把握できるプロモウソリストだが、カラコさんは目の前が見えなくなるらしい。椅子に深く腰をかけて空中一点を見つめているカラコさんは魂が抜けたようだった。

 もちろんセクハラはしていない。当たり前だろう。俺をなんだと思っている。




「では、行きましょうか」

 えーと、何しに行くんだっけ?

 王都で爵位が貰えるんだっけ。


 公爵とか子爵とかだろうな。

 男爵イモを英語で直訳すると言うとバロンポティトゥ。わざわざ英語で言うと気持ち悪がられるし、男爵イモは固有名詞なので正しく言うとダァンシャァクポティトゥとなる。

 どうでもいい豆知識だ。



 俺達はその場所から王都へ飛んだ。

 王都前に転移するとプレイヤーやNPCの行列が作られている。

 俺はその長さを見ただけで引き返したくなったが、皆が何もないように進むので仕方なく、ついていく。ゲームの中ですら並ぶってどうなんだろうなぁ……。



「領地とか貰えたら良いですね!」

 こんな調子で大丈夫なのだろうか。領地を貰える即ち王の下につくということだし、そしたら人民を治めなきゃいけないし、そしたら良いではないか良いではないかああお代官様みたいになるし、俺の欲望が抑えきれなくなって、俺は稀代の悪大名として後世まで語り継がれることになるだろう。

 何たることよ。

 そんな世界に行きたいものだ。


 こうして何も考えてないギルドはどんどん王の配下って感じの勲章を貰って、戦争イベントが起きた時に駆りだされることになるのだろう。

 しかし俺は違う。

 NOと言える日本人だ。しっかりと辞退させてもらって他の報酬を貰いたいものだ。





『汝らに子爵の称号を与える』

「ありがたき幸せ」


 断れると思った?

 断れねえよ。


 勲章授与は完璧に流れ作業。グループで待機させられて、その後名前を呼ばれて、王の前では膝をつけと言われて、そのまま王様の前まで来たら、おっさんが凄くダルそうな目をしながら大声で勲章授与してくれる。こんな静まり返った場で俺に何が言えるかよ!


 ちらりと見た王様はまだ若い女王だった。若いというより幼いというべきか、目が死んでいる。これから大変だろうけど頑張ってください。

 その頭に王冠が乗っていないのが気になったが、重そうだし、サイズが合うとも思えないし。


 まだ若いと言ってもきちんと王として扱われているのか、武装解除。全ての武器を装備から外し、スキルを外さなければ謁見は不可能とのことだ。スキルを外したかどうかが何でわかるのかというと俺にもわからない。




 報酬は別室でゴブリン侵攻の時と同じような本が渡される。



「前とあまり変わりませんね……」

 しかし少し豪華になっているような気がする。王都の土地や、更なる地位や、スキルオーブなど。


 その中で俺は1つの報酬に目が惹きつけられた。


 ゴブリンでもわかる! 戦闘? 生産? 何でもこい講座! 応用編!


 前回も見た。

 そして前回での役立ちを考えるとこれを取るしかないだろう。

 そしてゴブリンタロウがどうしているかも知りたい。あのまま音信不通なのだが。



「カラコさんは何取るの?」

「迷っているんですが……」

 カラコさんが迷っているのは、妥当な戦力増加になるスキル欄増加と王都のダンジョンの入場券。


「今特に欲しいものもないから簡単なパワーアップになるものを貰おうと思ってまして」

「ならさ、俺とゴブリンの講座に行かない? 前行った時はほとんどの魔法職が実行してない魔法スキルの組み合わせとか教えてくれたしさ。多分役立つよ」

 というかまた1人なのは嫌だ。前の講座を受けていた人はまた来るだろうけど。


「シノブさんがそう言うなら私もそれにします」


 この講座で養蜂とか牧畜とかのスキルの詳細がわかれば良いのだが。後は槍の使い方もだな。実践あるのみと言われるかもしれないが。



 臨時、という感じにできているカウンターで講座を申し込む。


「私はダンジョン入場券にしようかと思うんだが何にしたんだ?」

「俺たちはゴブリン講座。ヴィルゴさんもそれにしたら?」

 ヴィルゴさんはほとんど己の拳でスキルを活用しているイメージがないからあれかもしれないが。


「遠慮しておく。講座など、座っていられる自信がない」

 やはりな。絶対途中でラビを連れてレベル上げしに行ってしまうだろう。



 そういえば、使っていないオーブがいくつかあったな。

 俺だと宝の持ち腐れだから、この際全てカラコさんに預けてしまおうか。


 無魔法……何となく取得してなかったけど、取得してみるか。



《スキル【無魔法】を取得しました。スキル欄が限界なので控えに回されました》

《スキル【ボール】を取得しました》

《スキル【ポール】を取得しました》

《スキル【ウォール】を取得しました》

《スキル【コール】を取得しました》



 練習用魔法の名前通りの呪文だな。

 ボールはボール系の魔法、ポールはそれより大きい魔法、ウォールは壁魔法コールは何かを呼ぶ魔法だろう。魔法の基礎だな。


 実戦で使うことはないだろう。

 というか召喚系の魔法を魔力操作で変えられるのだろうか。試したこともなかったな。でかいゴーレムが呼べたりするのかな?



「シノブさんは取得しなくて良いのですか?」

「俺には必要のないものばかりだな」

「ではギルドのために役立てますので」

 カラコさんが適当に売り払えば良いのに。


 アイテムも時間ができたら倉庫に放り込んでおこうかな。



「明日の7時、冒険者ギルドサルディス支部で講座みたいですね。遅刻しないように」

 遅刻なんてしないさ。朝からログインしてるんだからな。それよりかは何かに巻き込まれてしまうのを心配したほうが良い。



「この後、どうしましょうか」

 そうだな。何をすべきか。


『シノブは私の用事に付き合いなさい。カラコちゃんもついてきてくれないかしら。貴女にも関係ない話ではないから』

「了解です」

「わかりました」


 一体何の用事があるのか、そしてカラコさんにも関係することといえば……神関係だよなぁ。





ありがとうございました。

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