１３６　対太陽王戦

　俺の体は2つに分かれる。

　そして俺は神弓を持ち、俺の肉体は神槍を構えた。

『えい！』

　俺の体が燃え上がると、俺はカグノに変化した。炎樹人化だろうか。姿がカグノそのままなので別の可能性もあるが。

　俺にはできないような速さで王に近づくと、炎の刃で斬りつけた。

「カグノちゃん！」

　カラコさんは既に神化を使っている。

　しかしそれでも押されているのだ。

　他に神化しているのは、風の神の使徒だけだ。他の人はここにいないのだろう。

　王は手からレーザービームを放ちながら、空中を飛び回っている。

　空中を蹴って空中移動ができる神化カラコさんと、風の使徒、翼人、ドラゴンしか近接戦闘はできておらず、後は全て魔法での補助となっている。

　純粋に跳躍して飛びかかって行っているヨツキちゃんという例外もいるが、空中での方向転換ができないので、簡単に避けられている。

「まずはあいつを叩き落さないとな」

　俺に目掛けてもレーザービームが放たれるが、効かないんだよな。

　あのレーザーは手先だけで自由に操れるらしく、素早い動きでカグノを狙っている。しかし隙はある。

　奴のレーザーが途切れた時、その時がチャンスだろう。近距離職にとっては。

　俺はそういうの関係なく砲撃するだけなんですけどね。

「展開、装填、加速、付加、破壊、ロックショット」

　MPは多くはない。

　計画的に使わねばな。

　普通に頭に突き刺さったのにHP削れるだけとかどんな構造しているのだろう。

　幸い魔法の通りは悪くないようだ。

　というか俺が参戦しなくてもゴリゴリHPが削られていっている。

　もしかして1人で戦う設定だったHPをそのままで使っているのだろうか。

　ここはカグノに任せて、俺はMP回復に努めるか。

　戦闘中静かに瞑想している俺というのは外から見れば奇妙なことだと思うが、本来、こうして使うのが正解な気がする。

　いや、違うか。本来は体を逃げ回らせて、精神の方だけにヘイトを集めまくるが、一切の攻撃は効かないという盾の完全版みたいに使うんだろうな。体を前線に送り込んでいる俺はおかしな使い方をしているんだろう。

　カグノは調子に乗ってるのか、空も飛べるようだ。空中を縦横無尽に飛び回りながら炎の槍を振っているその姿はまさに炎の女神といったような感じだ。

　その一撃一撃は重く熱く、順調にダメージを与えているが。

　特に効かないからってビームを避けずに攻撃するのはよしてほしい。貴方に効かずとも、しっかりダメージは入ってます。

　ポーションを消費し、俺は立ち上がる。MPは半分ほどまで回復した。連射を使うならすぐ無くなるだろうが、相手は一体。充分だろう。

「装填、加速、破壊、付加、ロックショット」

　かわされた？

　小癪な野郎め。男ならしっかりと受け止めろよ！

　仕方ない。必殺技を使うか。

「魔眼」

　さて、どうなっているのか。

　ビームは魔力を収束させたものであっている。しかし核はどこだ？　見えないぞ？

　ビームそのものが動くのと、王そのものも動くので中々見つからん。

　スキルに発見をいれる。

　これで少しはわかりやすくなればいいのだが……見つけた。

　ビームの核は物凄い勢いでビームの中を回っている。DNAを意識しているのか。二重螺旋構造だ。適当に言ったので二重螺旋構造かどうかは知らないが、螺旋をかいて動いている。

　これを狙うのは難しそうだが。

　やってみなくちゃわからない。

「ファイアボール」

　慣れたファイアボールを使う。

　俺の手の上にできた3つの火の球は手の上で自由自在に動く。

　さて、どうやってあのレーザーの核を狙うかということだが。

　弾速の遅いファイアボールでは難しい。じゃあ、凄く近くに寄ればいいじゃないか。

　そう、レーザーの影響を受けないんだからもうレーザーの中に入るぐらい近寄れば良い。

　床を破壊しがら進むレーザーの下に来ました。轟音と地響きと、眩しさで五感が大変なことになってる。

　残念ながら第六感はないので、その状態じゃ核を見つけることなんかできっこない。

　まずい。非常にまずいぞ。

　特に誰もピンチになることなく、HPが削れていっている。俺の見せ場がない。カグノの活躍が俺の活躍といえば確かにそうなのだが、他の人は納得しないだろう。

　王のHPは半分を切ったが特にパワーアップする様子も見せず、バカみたいに当たらないビームを放ち続けている。

　残りHPがどれぐらいになったらパワーアップするのだろうか。

　そしたら俺も活躍できるかもしれないが。

　俺がこの状態である一定以上成果を上げたと自信を持って言えるようになるには、ふた通りの方法がある。

　あいつを空中から叩き落すか、ビームを無効化させる。

　これしかないよなぁ。

　空中から叩き落す手段。阻害魔法系は届いていないのが確認済み。

　これだけの人がいて状態異常もかかってないということはそっち方面もなし。

　後は俺自身がフライで飛んで直接落とすという手段があるけど、この体じゃ無理。そもそも使い慣れていない魔法なんか使っても意味がないだろう。

　連射を使ってもいいが、既に1回は避けられている。1回当たっただけで見切られてしまったのだろう。当たるには当たるだろうが効率は良くないな。

　じゃあどうすればいい。

　維持しきれなくなり、発動したファイアボールも難なく避けられた。

　近距離で、しかも飛べる人じゃないと戦えないとかどんなのだ。

　ヨツキちゃんは鉄砲玉のごとく飛んで行っているが、よく壁に突き刺さっていないな。

　翼人もドラゴンも、ダメージを負ってきている。カラコさんも消耗はある。

　叩き落す以外で地面の奴らが上に行く方法。

　神弓をしまい、木魔法に効果のある杖を装備する。

「トレント！」

　下は石造りの城のはずだが、トレントが生えていている。細かいツッコミは後だ。

　そして四方にトレントを呼び出す。

「グロウアップ！」

　この杖の効果か、はたまた俺のレベルが上がったからか、目に見えるレベルででかくなった。

「おい、てめえら。根っこあるんだろ？　それで足場作れないか？」

　そう、落とせないのなら登れば良いのだ。

　トレント達は複数の根を使い、床に使われていた石のブロックを持ち上げる。

　そしてそこに簡易的なものではあるが様々な高さの足場が出来上がった。

　ビームで焼き消されるものの、根だけで本体に攻撃がいかないのなら、大きなダメージはない。

「でかしたシノブ！」

　ヴィルゴさんが猫のように足場を飛び上がり、王の上から襲いかかる。壁キックをしながら襲いかかる様は、頭おかしい。いくらVRだからって普段しない動きできないでしょ。何でこんな忍者みたいなことできるの？

　高速アタッカーが上に登りながら攻撃できるようになったが、竜化している竜人や翼人にとっては戦い辛い環境になってしまったようだ。

　そこら辺はすみません。素直に謝る。

　ヨツキちゃんだが、ヨツキちゃんが飛ぶたびに石のブロックが粉砕されている。石の破片を撒き散らしながら高速で辺りを跳び回り、死角から襲いかかるその姿は破壊神というか、そんな言葉を思い出させる。

「ストーンウォール」

　トレントの周りを石の壁で覆う。

　流れビームが来て殺られるリスクを少しでも避けたいからな。

　今気付いたけど、周りに大量の足場があるから遠距離職の皆さんも戦いにくくなってますね。すみません。と思ったけど足場の上を跳びながら銃を撃ってる強い人もいる。

　動きながらシステム補正が少ないああいうやつ使う人って凄いよな。走りながら弓とか俺できない。

　やろうと思えばできるが、当たらないだろう。

　俺はトレント達へグロウアップをかけながら、戦場を観戦している。楽なもんだ。

　グロウアップをかけるたびに、トレントはでかくなっていく。根もどんどん太くなっていくし、そろそろ床ごと持ち上げられるんじゃないか？

　それに剥がしても剥がしても無限に出てくる石ブロックは謎だ。

　床に属しているときはレーザーが通っても何もないのに外に出るとレーザーで木っ端微塵になるのは何故なんだろう。

　HPが残り1割になった時、王はよろよろと足場の1つに着地した。

『く、くそっ。こんなはずでは……』

　やめたげて！　動かなくなったからって言って滅多打ちにするのやめたげて！　と言いながらも俺も魔法を放っていたりする。

　なんか前も喋ってる最中にダメージをめちゃくちゃ与えられていたやつがいたような気がする。

『我が主よ……我を貴方様の元へ……ぐあっ』

　王の王冠が光り始めだと思ったら、HPがなくなり死んでしまった。

　絶対王冠の効果じゃない。

　ヨツキちゃんの振った大剣が首に直撃したから、死んだんだと思う。

　何をしたかったのか。

　まあ、何かされる前に死んでくれてよかったな。

「じゃあ、足場は戻しといてくれ」

　トレント達が根を引っ込めると綺麗な床が現れるんだから不思議なもんだ。

　モンスターのように死骸は消えない。

　そして皆の視線は落ちている王冠に向いている。

　金ピカで各種宝石がつけられている王冠。多分特別な効果があったりするんだろうな。

　皆横の奴らを牽制しながらジリジリと近寄っていく。誰かが、素早い動きをしたら抗争が始まってしまうだろう。

「トレント、あれ封じ込めとけ」

　地面から出た根っこが王冠の上に檻をを作る。

「そんなことで争おうとしないで。まだレベルアップしてないだろ？」

　実は貰える経験値が凄く少ないとかあるかもしれないが、まだ戦いは終わっていない。と考えたい。モンスターじゃないからレベルアップなしとかないよね。

　……ないよね。

『勝ったぞー！』

　カグノは呑気に叫んでいるが、まだ終わっていないはず。

「シノブさん、今は良いですが。何があったか一字一句報告してくださいね」

　カラコさんも神化が解けていない。やはりまだ戦闘途中となっているのだろう。

　一字一句なんて覚えているかな。

　カグノの誘いを何となく断って、夜の神様に色々助けてもらって、そして元の戻った。

　別に後でじゃなくても、今一言で言えるじゃないか。

　そして言おうとした時、王の亡骸の上にアスモデウスが降り立った。

　どこから出てきたのか。

『ああ、良い顔してる……』

　苦悶に満ちた顔が良い顔だと思うんだな。全く趣味が悪いことだ。

『貴方達がこの人に勝つなんて……ゾクゾクしちゃう』

　そんなアスモたんの視線は俺の心を突き刺した。

　敵だとはわかっている。ここで釣られてはいけないとわかっているのだが。男としての性のせいで目を離すことができない。

　物凄いエロい。具体的に何がと言われると、体つきとか表情とか色々あるが。なんというか、フェロモンが凄い。

　清純派が好きな俺。具体的に言うと、巨乳で黒髪で、少し天然が入ってて、俺のことを初対面から下の名前で呼んだりして、読書好きで、静かで、俺のつまらない冗談に笑ってくれる。しかもエッチなことに興味がある。自分でも思うほどの幻想の塊だと思うが、そんな俺の好みと全く違うのに、ここまで心を惹きつけるのか。

　それともあの胸がいけないのか。

　長年、おっぱいに関しては主に映像面から学び、いつおっぱいを揉む日が来ても良いようにイメージトレーニングを重ねてきた。様々な人間のおっぱいを見てきた俺にだからわかるのかもしれないが、あのおっぱいはとんでもないものだ。

　推定Fカップ。形も良いし、何よりもあの肌。すべすべなあの肌はさぞかし……。

　やめておこう。具体的に考えている暇はないし、そんなこと考え始めたら1回ログアウトする必要がある。垢バンされたくないしな。

「私は神弓の射手、サブギルドマスターのカラコです。貴方は何が目的なのですか？」

　おお、さすがカラコさん。しっかりしているな。

　俺はただアスモたんの美しさを脳裏に焼き付けることだけに集中するよ。

『可愛い女の子ね』

「お世辞は結構です」

　すげえ、鉄壁だ！　普通に可愛いと思うんだが、そこで照れないのがさすがカラコさんだぜ！

『目的？　そんなの古臭い神様達からこの世界を救うためよ』

　古臭い？　確かに七つの大罪の悪魔の方がモダンな感じはするが、どっちもどっちだと思う。

「では私とは相容れませんね。私は神様によって力を与えられましたから。ここで死んでください」

　俺も困る。神がいなくなったらこれからのビジョンも崩れるし、大きな戦力低下に繋がるだろう。

『今は戦う気はしないわぁ。色々面白いものも見れたし。次会える時を楽しみにしてるわ』

　また会えるんですか！？

　てっきりここで殺されるのかと思ったけど。

　カラコさんの魔法が放たれるがアスモたんの体は影に吸い込まれて消えていった。

　また会った時は是非とも組手をしたいね。柔道技の寝技のかけあいをしたい。エアハンドで胸部辺りを思いっきり殴るというのも良いかもしれないな。状態異常が効いたら、麻痺にかかってビリビリしている姿とか、毒にかかってハァハァしてる姿も見たいな。

　うん、時間をくれて良かった。まだあの悪魔と戦うには実力が足りないだろう。

《戦闘行動によりレベルアップしました。ステータスに5ポイント振り分けてください》

《スキルポイントが4ポイント増えました》

《戦闘行動により【弓術Lv27】になりました》

《戦闘行動により【木魔法Lv29】になりました》

《戦闘行動により【魔力操作Lv18】になりました》

《戦闘行動により【発見Lv25】になりました》

　経験値は少なかったか。しかしあまり戦闘もしていないし、妥当か。

　魅了状態での経験値ってどこ行ったんだろうな。プレイヤーは経験値がたくさん貰えるって噂は何だったのか。

　カラコさんがその場で膝をつく。

　ステータス異常が酷いのだろう。

　俺の覚醒も解除されて……なんだこれは。体が重い。

　まさかこれがあれか。

種族：半樹人

職業：狙撃手　Lv40

称号：神弓の射手

スキルポイント：74

　体力：90（-55）

　筋力：30（-9）

　耐久力：40（-12）

　魔力　：110（＋8）

　精神力：110（＋1）

　敏捷　：30（-9）

　器用　：85（＋5）（＋32）

　ステータス異常。

　戦闘後は何もなかったが、融合が終わった時にいきなり来た。

　要するにカグノが悪い。

「おい、カグノ。ステータス異常になってるんだが」

『えへへへ』

　可愛いから許すか。

　久しぶりに会って説教もなんだしな。

「これで終わりでしょうね」

「そうだと良いがな」

　カラコさんは戦闘はできないだろう。俺は戦闘できないほどではないが、あまりしたくない。

「酷く外道なイベントだったな」

　ヴィルゴさんは同士討ちになったことが、酷く気に入らなかったようだが随分楽しんでいたように見えた。確かに後味は悪いが、倒した相手の顔が見えなかったのが、まだマシだ。

　俺は特に誰も倒さなかったしな。

　各自が戦闘を称え合え、談笑していると、急に王冠が光り始めた。

　まさか復活とかはないよな。

　あれともう一度戦うのは面倒くさい。というか無理。しかし一応戦闘になったら逃げられるように準備しておくか。