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狙撃手の日常  作者: 野兎
王都解放戦
127/166

126 一騎打ち

遅れてすみません。

 スキルを確認しておこう。弓術、回避術、火魔法、風魔法、魔法装、魔力操作、気配察知、思考加速、マゾヒスト、精密操作だ。相手は翼人。空を飛んで有利な場所から攻撃するタイプとみえる。ということで土魔法と木魔法はお休みだ。


 25レベルに風魔法が達していたなら、フライも使えたのだろうが。空を飛び慣れている翼人とは張り合えないだろう。しかし意表をつく事はできただろう。


 相手が持っているのは薙刀のようなもの。青龍偃月刀みたいなものだ。おそらく空中から急降下、相手の間合い外から斬りつけていくスタイルだろう。

 近距離戦が苦手な俺には良い選択だと思える。



「愚かな、神の力を得た俺にはどんな奴だって勝てはしない」

「神の力?」

 月、夜、水の他の何かだろうか。


「俺は選ばれたんだよ。このゲームの上に立つためにな」

 もしかしてこの人、神の力持ってんのが自分しかいないと思っているのだろうか。

 ひょんな事で神とあって、力を手に入れて自分が運営に選ばれたと勘違いしてる。笑えるな。


「審判はこの俺、カイザーが務める。正々堂々とは言わない。お互い全力を持って楽しめ!」

 中立から審判が出たか、妥当だな。


「ブースト……くっ」

 耐えきれない痛みでもない。


「覚醒!」

 周りがざわついたのが聞こえたが、どうでも良いさ。


 光が収まった時にはイケメンな俺と、そんな俺の肉体がいた。

 久しぶりってほど久しぶりでもないな。何もないよりマシだろうから、鉄の剣を持っとけ。



「中々面白い小技を使うようだな」

 完璧ラスボスだよ。何なのこの人魔王なの貴方。小技って、あんたも神化使うんだろうが、と思ったが使ってこない。ステータス異常が怖いのか?


「では……始め!」

 物凄い勢いで空中に飛んでいく、俺の体は置き去りだ。


「展開、装填、加速、付加、ウィンドショット」

 速いな。捉えきれん。神化していない状態なら余裕で倒せると思うのだが。


 矢を構えている方が脅威だと感じたのか、オルカーンは俺の方へと向かってきた。残念だな。俺は体じゃない。


 これだけ近ければ当たる!

 器用さが底上げされている効果もあるのか、オルカーンの翼に当たった。俺の前でバランスが取れなくなり地面に突っ込むオルカーン。

 飛べない翼人はただの人間にも劣る。起き上がって斬りつけたのはあっぱれだが、残念。俺は体じゃないから効かないんだよな。精神体じゃなくて肉体を攻撃してくれなきゃ。


「諦めろ。俺がここで弓を放てば、死ぬぞ」

 脅しじゃなくて、本気で死ぬ可能性がある。


「神化!」

 ようやく本気出してくれるか。さてどんな神なのか。翼人関係という事で風の神、次点で空の神、大穴で囚われてるらしい昼の神だな。



 なーんだこりゃ。

 カラコさんは良い感じでかっこよくなってたが、こりゃあ化け物だな。うん、モンスターと変わりない。


 背中の翼は驚くほど大きくなって、虹色に輝いている。そして体は肥大化、目は爬虫類っぽいものになっている。


「虹か?」

「虹の根元を掘り出したらな。こんな力を手に入れたってわけだ。さあて、形勢逆転だぁ」

 虹の神。聞いた事ないな。

 掘り出したらということなので、そこに神の屍か、何か神にまつわるものでもあったのだろう。


 現実世界でもあまり聞かないし、マイナー神だろう。しかし変な技を持ってるかもしれないし、気をつけようか。


 オルカーンは俺の肉体の方に飛んでいった。

 好都合、俺の体ごと焼き払ってやれば良い。不思議な能力使われないうちに。


 さて、回避術と火耐性を入れ替えて。

 あちら側では俺が魔法装を発動させるのが見えた。


「装填、加速、付加、破壊、連射、ファイアショット」

 これで勝てなければおしまいだ。


 肉体の俺に斬りかかったオルカーンの顔が驚愕しているのがみえる。

 まさか自分ごと巻き込むとは思ってもなかったのだろう。残念だが逃がさないし、お前の命運はここで尽きる。


 俺の体はオルカーンを掴み、逃がさない。鳥人と樹人の体力、さてどのぐらい振っているのかな。


 さすが精神力に振ってる俺は固かった。というより、やっちゃったな。

 まあ、元々神化しててステータス異常で満載だったろうし。


 こうして俺は勝ったのだが。

 待っていたのは1部の少年達のキラキラした瞳と、冷静なプレイヤーの何なんだそれはという目線。神関係のことを知っている人もちらほらいそうだな。


 オルカーンが凄く咬ませ犬的な発言してくれたから俺のかっこよさが引き立ったような気がする。


「シノブさん何やってるんですか!」

 あー、カラコさんだ。


「勝ったんだから良いじゃないか」

「そうじゃないです。周りを見てください」

 かなり険悪な状態になっているがそれが何か?


「散った散った、シノブだって悪気なかったんだろ?」

「手加減できないからな。あそこでやらなかったら俺が死んでた」

 精神力が高いだけで、耐久力はないので物理攻撃には弱いのだ。


 カイザーさんのお陰で険悪な蒼天の翼の連中は散っていった。


「俺はお前が勝って良かったが、うちのギルドマスターがうるさいと思う。すまないな」

 先に謝るなら、止めろよと思うのだが。


「君、約束を破ったね?」

 何を怒っているのか。確かに殺さないようにするとは言ったが、それは相手があそこで諦めなかったからだ。神化しなければ俺も命までは取らなかった。


「お前は自分が殺されそうになってる時に約束だからって、そのまま殺されんのか?」

「そういう話をしてるんじゃない。僕は人と人との信頼関係について話しているんだ」

 一体何を言ってるんだこいつは。


「おい、ミファ。戦い見てたんだろ。1回この小僧は警告した、しかも最初から本気を出さなかったやつが悪い」

 ミファか、女の子みたいな名前だな。女の子みたいな名前なのは悪いことではないが、自分でつけるのはどうかと思う。


「しかし彼は手加減すべきだった」

「だからそういうことができないやつなんだよ」

 さすがカイザーわかってるな。神化なんてどんな能力持ってるかわからないんだからさっさとやっちまうに限る。魔法を使えない種族が魔法使ったりしちゃうしな。


 ミファはカイザーに収められて、連れて帰られていた。しかしあの顔は絶対納得していないな。


 それにしてもMPもないし、HPも超再生ですぐ満タンにならないぐらい減っている。

 死んだ場所にあったアイテムは全てオルカーンのギルドメンバーが回収してたし、経験値稼ぎになっただけか。


 張り詰めていた空気も消えて、分かれていた人達もバラバラになっていく。


「前のイベントぶりやね」

『久しぶりね』

 アイネルちゃんとその持ち主さんじゃないですか。


「送られたメール見たで。そして前起きた街中での精霊暴走事件。それシノブやろ」

 どうしてそれを!?


「ここで話すのもなんやし、人がいないところで話すか」

 思い出した、ネヴィとアイネルちゃんだ。


 俺たちの陣営の場所に行こうとカラコさんを見ると何やら考え込んでる途中だった。

「カラコさん、大丈夫?」

「これで解決したんでしょうか」

 何だよ。次作作りたい映画みたいなこと言って、引き延ばしは嫌われるぞ。


「今の所は解決しただろ。これでオルカーンがまだ文句つけてくるなら、それこそギルドごとぶっ潰すしかない」

「そうですよね」

 同じ神と関係してるものとして、何か気になることがあるんだろうな。



 いつ誰が買ったのか、砂漠の上には巨大なテントかパラソルみたいなものが張られており、一箇所だけ見るとビーチのようでもある。

 その下で思い思いにくつろいでいるのが、うちのギルドメンバー。


 ヴィルゴさんなんかは、百人組手っぽいことをしている。暇なのか、それとも鍛錬のためか。



「相変わらず凄い面子やな」

 俺には凄さはわからないが、怖さはわかる。


「わいは口下手やから、説明はアイネルに任せるやで」

 じゃあ、お前何のためにいるの? そしてお茶を出してくるカラコさんの気遣い。


『そうね。少し前にこんな事件があったわ。風のエレメンタルと飛んでいる途中に、急に風のエレメンタルが暴走。そしてその場所は海上。多くの人が海に叩き落とされたり、船が壊れたりしたわ。そして肝心の犯人、風のエレメンタルは消えていた。それとカグノちゃんの事件、似てない?』

「確かに」

 暴走、カグノと同じようなものか。たまたまなのか、それとも必然なのか。


『それ以降は風のエレメンタルの暴走は聞かないわ。その持ち主も責任を感じて遠くに去っていった』

 遠くに去る。キャラを作り直したか、ゲームをやめたということかな。俺でも大量のプレイヤーを巻き込んでしまえばそうなっただろう。運が良かったんだな。


『エレメンタルの持ち主は皆暴走を心配しているけど、その心配はいらないわ。カグノちゃんの事件が起きてから、燻っていた剣がなくなっている』

 そういえばそんなことも言っていたな。


『暴走じゃないわ、目醒め。心の剣を燃やした。そういうことね』

 一体どういうことだ? 同じようなことは初めて会った時にも言っていたが。


「アイネルたんが言うには、なるべくしてなったちゅうことやな。エレメンタル1人だけが暴走するらしいわ」

 一体どういうことなのか。

 土と水も発見されたら暴走するのだろうか。


「すまないが、何故暴走するんだ? それも1人だけ」

『それは私にもわからないわ』

 嘘だな。

 わかっているのに、話していない。しかし俺が無理やり聞き出すことはできないだろう。相手は精霊というよくわからない存在。言ってはいけないこともあるのだろう。


「それにしても、あの大人化。どうやったん?」

 ああ、それか。


「仲の良くて体の相性がいい人と合体すると大人になれる」

 これは事実だ。事実エウレカ号は仲良しで、熱い体を持つという共通の部分もあったしな。


「NPCとやれるって本当やったんか……熱うなかったんか?」

「火耐性を上げてたから余裕余裕」

 NPCとやれる? エレメンタルも一応NPCだが、普通の人間は合体できないと思うが。別の意味ならできると思うけど。


「あー、わいはダメやわ。もう娘みたいに思ってもうてな」

 もうエレメンタル持ってんのか。


「どんな子なんだ?」

「出でよクウネル!」

 カグノと似ている、が少し違う気もする。アイネルは愛して寝る、クウネルは食って寝るということなのかな? 何故寝るのかはわからないが。


「可愛いやろ?」

「いや、俺のカグノの方が可愛かったな」

「なんや、親バカやな」

 親バカではないと思うのだが。


 しばしクウネルちゃんを観察していたが、カグノより大人しそうだ。少なくとも好奇心に負けて何かを燃やすとかはしていない。がアイネルにベッタリくっついてる。

 

「ほな、わいは行くわ。カグノちゃん見つかるとええな」

 ネヴィはアイネルを連れ、大量の精霊達がいる場所へと帰っていった。なんだあのハーレムパーティー。ほとんどの人が精霊持ち、そうでなくとも美少女の召喚獣がいる。


 羨ましい。いや、けしからんパーティーだな。


 さて、カラコさんと今後の相談でもするか。

嵐で停電してました。

ありがとうございました。

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