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狙撃手の日常  作者: 野兎
王都解放戦
125/166

124 初ダンジョン

 一般的なダンジョンって感じ。

 迷路のような洞窟を探索し、宝箱を見つけたり、モンスターを倒したりするのだろう。

 足元には石造りの階段がある。


「すみません。僕の身内が迷惑をかけまして」

「あははー、ユイちゃんってもしかしてお嬢様ー?」

「僕はそんなの知らないよ。ただゲーム内でもうるさい人がついてくるだけだよ」

 何やら本物のようだ。触れないようにしよう。お嬢様は怖い。金の力で無双するからな。このゲームはあまり課金要素がないから良いが。


「じゃあ、俺が前衛、ユイが中衛、ヒナタとピグマリオンとシノブが後衛でいいな」

 そういえばユイちゃんってなんの武器を使うのだろうか。


「それじゃ前衛の負担ありすぎるっしょ。俺前もできるから」

 ピグマリオンは小さな盾を取り出した。前衛もできる魔法使いか。良いかもしれない。


 前衛を先頭にして地下へ向かっていく。



《〜修行の洞窟2F〜》



 安直な名前だが、嫌いではない。


「さあ、気を引き締めていこう!」


 まず出てきたのは、ネズミ。つい最近見たことあるあの弱いネズミだ。


「先手必勝!」

 サフドの一太刀でネズミは消えた。


 そしてサフドが立ち止まる。


「な、なんじゃこりゃあぁー!」


 どうせアイテムが凄いものだったとか経験値が多いとかそんなものだろう。


「ファイアボール」

 俺の手の上で3つの炎の球が回り始める。

 他の面々もそれぞれ自分が仕留めるという風に武器を構えている。なんとユイちゃんの武器は鞭だった。あれで叩かれたいとか思ってしまってはいけない。



 俺も用意していたが、次に来たネズミを倒したのは前衛にいて、なおかつ魔法が使えるピグマリオンだった。


 次は俺が仕留める。



「提案がある」

 3度目の遭遇で俺は提案した。


「まだ二階だから弱い。ここが何階まであるのか知らんが、5階までバラバラでいかないか」

「『あの時前衛志願してよかった。後衛のやつらざまぁ』な視線に耐えられないから私も賛成」

 俺はピグマリオンを押して、1番前に出る。


「じゃあ、5階で会おう」

「あ! シノブ団体行動乱すなー!」


 あばよ、サフド。俺はさっさと階段見つけてレベルアップ天国だ。

 ここではレベルの低いものを優先的に育てよう。


「テイルウィンド」

「魔法装、風」


 俺は少しでもレベルを上げるため、そして先に進むため階段を探していた。

 何匹かのネズミをエアバレットで瞬殺。無事に地下3階への階段を見つけることができた。


《戦闘行動により【風魔法Lv15】になりました》

《レベルアップによりスキル【ウィンドハンド】を取得しました》

《戦闘行動により【魔法装Lv11】になりました》



《~修行の洞窟3F~》



 それにしてもアイテムはない。

 倒しても何もアイテムはでなかった。

 生産系の人に取ってはあまり美味しさはないダンジョンだな。あんな弱いネズミを倒すだけで簡単にスキルのレベルが上がるから戦闘を鍛えるためなら良いが。


《戦闘行動により【風魔法Lv16】になりました》

《戦闘行動により【魔法装Lv12】になりました》



 随分風魔法の上がりが良い。さすがだな。

 相手はゴブリン。特に苦戦することもない。魔法を使ってしまえばすぐに終わる相手だ。

 そしてウィンドハンドの効果。

 ブラストの規模が小さくなって更に器用になった感じだ。


 かなり細かく動かせて便利だ。

 しかし戦闘に使えるかというと少し弱いだろう。どちらかといえばその他便利なことに使えるという感じだ。


 探索を進めていると部屋の中に宝箱を発見。

 ワクワクする。一体中に何が入っているのか。まだ3階だし、期待しすぎるのも良くないと思うが。


 開けるとそこに入っていたのは、勇者っぽい剣。

 触ったら呪われそうな気がしないでもないが、一応回収しておくか。そんな悪質なトラップはないだろう。

 拾ったら名前がわかった。鉄の剣というらしい。そのままだ。

 誰かに売ろう。


 そしてまた進んでいくと道の選択が良かったのか、すぐに階段が見つかった。

 運が良い。



《~修行の洞窟3F~》


 ここはオークがいるようだ。

 と言っても何故かこのオークが逃げる。


 エクスプロージョンで一体しとめたものの、俺を見た瞬間オーク達は逃げていく。

 何だこの階は。確かに経験値が多いやつが逃げやすいというのは納得できるが。


 この階でも宝箱を見つけることができた。

 俺が恐らく1番深くまで進んでいるようだな。


 俺が宝箱に手をかけた時、気配察知が大量の気配を察知した。


「何だお前ら」

 俺の経験値になりに来てくれたのか。このオークは頭良いようだ。宝箱に入っていた槍を素早く回収すると、狭い通路から次々に入ってくるオーク達へ魔法を放つ準備をした。





《戦闘行動により【火魔法Lv28】になりました》

《レベルアップによりスキル【ファイアアロー】を取得しました》

《レベルアップによりスキル【クリメイト】を取得しました》

《戦闘行動により【木魔法Lv24】になりました》

《戦闘行動により【土魔法Lv19】になりました》

《レベルアップによりスキル【マッドプール】を取得しました》

《レベルアップによりスキル【ストーンウォール】を取得しました》

《戦闘行動により【風魔法Lv19】になりました》

《レベルアップによりスキル【エアハンマー】を取得しました》

《レベルアップによりスキル【ウィンドウォール】を取得しました》

《戦闘行動により【魔法装Lv14】になりました》

《戦闘行動により【魔力操作Lv16】になりました》

《戦闘行動により【気配察知Lv22】になりました》

《戦闘行動により【発見Lv20】になりました》

《戦闘行動により【隠密Lv21】になりました》




「ハァハァハァ」

 口から漏れ出る息を消すことができない。

 大量のレベルアップ。成果は充分だった。


 しかし何だあの量は。一体一体がそこそこ堅い上にそれが物量で攻めてくる。

 俺が最初の方なめていたのも悪いのだろう。神弓を展開するどころじゃない。各魔法を使い、ゴーレムやトレントを呼び出してやっとのことで逃げ出してきたという感じだ。

 しかしまたどこかの部屋に入ったら物量戦で攻めてくるだろう。


 ソロじゃ確実に死ぬだろう。

 うん、ここは他の人を待ったほうが良いな。階段近くで見回りオークを神弓で暗殺しておこう。



 それにしても大量にレベルアップしたな。

 火魔法ではファイアアローとわかりやすい魔法とクリメイトというよくわからない魔法。

 マッドプール。泥沼を作る魔法だな。足止めに使えそう。そしてストーンウォール。壁。ただの壁を作れるのだろう。そして風魔法のエアハンマーとウィンドウォール。エアハンマーはファイアソードみたいなものかな?



 ここではMPの回復速度も速いし、試してみるか。

 魔法を試していると来たのはサフドだった。ユイちゃん大丈夫かね。


「おお、シノブ! 俺が1番だと思っていたが」

「ここからじゃ1人じゃ厳しそうだからな。前衛が来てくれて嬉しい限りだ」

 ユイちゃんの方が嬉しかったが。


 サフドはスケルトンだがどんな戦い方をするのだろうか。

 人間のHP特化版とかか?


 と思って見ていたが、普通に剣士との変わりがわからない。

 オークが見えるとその鎧をガチャガチャと鳴らして走って襲いかかり、特にスキルを使うわけでもなく倒している。


「なあ、サフド」

「なんだ!」

 俺から声をかけたのだが一々うるさいやつだ。


「スケルトンって具体的に何ができるんだ?」

「そうだな……」


 そのままサフドは現れたオークに向けて走っていった。

 答えてからいけよ!


「ファイアアロー」

 ファイアアローはその名の通り、火の矢を作り出す魔法だ。

 全て先制技になるとかいう魔法ではなく、1回の詠唱で5本から10本の矢が生み出されて、連続で攻撃できるのだ。そしてこの火は怯みやすいという点も持っているのか、哀れなオークはあつっ、あつっとかやっているうちにHPがなくなっていく。


 クリメイトはやたら弾速が遅く使えていないが、遅いということは強力な魔法なんだろう。

 マッドプール、ストーンウォールは名前の通りの魔法で、エアハンマーは中距離から空気のハンマーでぶっ叩く魔法。ウィンドウォールは見えない壁ができたが手を突っ込むとそれなりにはダメージが入った。



 サフドは敏捷に多く振っているのか、オークよりかは速い。それでいて威力はある。

 手早く剣で斬り裂き、俺の元へと戻ってきた。


「スケルトンは物が食べれないし、状態異常にもなりにくい」

 食べ物が食べれないのか、勿体無い。美味いのに。と言っても俺も作られなければ食べないが。それに状態異常になりにくいというのは厄介だな。


「1番良いのは身体が軽いのと、夜でも明るく見えるってことだな! 暗視スキルもいらないし、こうして身軽でいられる」

 この脳筋が暗視スキルの存在を知っているとは、中々強そうな特性に聞こえるが、その差はステータスにも現れているのだろう。


 こうして考えると最初の種族選びって重要だよな。機械人間で魔法使いにはなれないし。俺も素直にエルフになっとけば。




 そして俺たちはまた階段のそばで駄弁っていた。この階層に1人で来た人の負担になるだろうから。この気配りを見せたのは俺だ。


 というよりサフドと2人きりは嫌だ。


 ユイちゃん来いと念じていたが次に来たのは、ヒナタ。


「あー、1番だと思ってたんだけどなぁー」

 皆同じことを言うんだな。

 ヒナタは水魔法と空間魔法を使う魔法使いらしい。テレポーテーションとかかっこいい。



 そして最後に来たのが、ピグマリオンとユイちゃん。


「うわぁ……」

「遅かったな!」


 何こいつ女の子と来てやがる。ふざけんな。何で紳士力発揮しているんだよ!


「お前ら女の子置いて行くとか、バカっしょ」

 確かにバカだ。


 いつもはサフドに向けられるバカという言葉なのだが、何故俺は気づかなかった。目先の経験値に心奪われて何よりも大切なはずの女の子からの好感度を下げてしまうとは。2人きりでダンジョン攻略とかフラグ立ててんじゃねえよ。

 あー、バカバカバカ。


 過ぎたことだけど悔やむ気持ちを抑えきれない。


「やっぱ『小ちゃい子可愛い。JCとか俺得。VR内でも小学生と仲良くできるとか最高ですわー』とか思ってるんでしょ」

「お前らは思わないのか?」


 こいつ、やはりロリコンか。

 というよりユイちゃんって小学生なんだな。あの周りにいたのが保護者だったのだろうか。

 そんな小学生ごときにこの俺が惑わされるとも?


 どうでも良いけど。最近の小学生発育良すぎ。全然小学生に見えない。小学生で第二次性徴期なんて始まるのか? 全然いける。

 小学生にも負けてるカラコさんには頑張って欲しいものだ。


 何も言い返せなかった俺たちを尻目にピグマリオンはスタスタと先へと歩き始めた。



 なんかこいつがリーダーみたいだな。

 というよりサフドもなんか言い返せよ。


 ユイちゃんの武器は鞭でした。女子小学生に鞭で叩かれるとか誰得。


 オークを鞭で調教する女子小学生。要素要素はエロ向きなのに。なんか違う。

 オークも叩かれて気持ちが良いのか喘いでいる、ような気もしないでもない。スキルの効果か、武器の効果か、叩かれた後が焼けていて非常に拷問向けと言えるだろう。


《行動により【擬態Lv12】になりました》


 魔法も後1レベルで新しいスキルが得られるのが多い。キリが良い数字にしたら、他のスキルを鍛えた方が良さそうだ。



《〜修行の洞窟5F〜》




 4階。出てくるモンスターは鬼。筋肉の塊で頭に小さい角がある。オーガと言っても良いだろうか。


 ここでクリメイトの効果が見れた。火傷みたいなものだ。相手についた火が消えない。地獄の業火みたいなもん。


 ピグマリオンが盾でオーガの攻撃を受け、サフドが斬り刻み、ユイちゃんが鞭で目を潰し、俺たちは欠伸をしながら魔法を適当に放ったり、レベル上げのために無意味な行動を繰り返したりしている。過剰火力に押し負けてまあまあ強かったオーガは倒れた。




《戦闘行動により【火魔法Lv30】になりました》

《レベルアップによりスキル【インフェルノ】を取得しました》

《【火魔法】がスキル【火炎魔法】に進化可能になりました》

《スキル【火炎強化】を取得可能になりました》

《スキル【詠唱短縮】を取得可能になりました》

《スキル【魔法分解】を取得可能になりました》

《スキル【魔法合成】を取得可能になりました》

《スキル【呪文融合】を取得可能になりました》

《スキル【MP消費軽減】を取得可能になりました》

《スキル【魔法同時発動】を取得可能になりました》

《戦闘行動により【木魔法Lv26】になりました》

《戦闘行動により【土魔法Lv22】になりました》

《レベルアップによりスキル【シェルター】を取得しました》

《戦闘行動により【風魔法Lv23】になりました》

《レベルアップによりスキル【サフォケイション】を取得しました》

《戦闘行動により【魔法装Lv19】になりました》

《戦闘行動により【擬態Lv20】になりました》

《戦闘行動により【狙撃Lv21】になりました》

《戦闘行動により【発見Lv24】になりました》

《戦闘行動により【遠見Lv18】になりました》



 ちょっと待って。

 火魔法で必殺技っぽいのが取れたと思ったら、火炎魔法? 進化には100ポイント必要みたいですが。唯一取得ができそうなのは20ポイントの火炎強化のみ。後も50もかかるから無理。

 そして木魔法で呪文得られなかった。何故25だけないんだ?


 土魔法はわかりやすい。しかし風魔法のサフォなんとかってなんだ?

 それは試してみるとして。


「初の激流魔法。追加呪文はウォータースネーク」

 ヒナタを包み込むように水でできた蛇がとぐろを巻いている。こいつ100もポイント持ってたのか。俺が今まで何にも使わなくとも100はなかっただろう。レベルあっ以外に何か得られるものがあるのか。


「おお! おおお!」

 サフドうるさい。


 何か色々と皆新しいスキルを手に入れたりしている。

 うるさいサフドに風魔法でも使ってみようか。

「サフォケイション」


「これは凄いな!」

 補助魔法なのか? どうも効いていないように見える。それにしても何を驚いてるんだか。


 自分に使ってみよう。

「サフォケイション」

 ……何も起きない。と思ったらだんだん息苦しくなってきた。

 その場から動くと回復したが。おそらく酸素をなくす魔法だろう。サフドに効かなかったのはスケルトンだからか。


 動かない相手には良さそうだ。


 サフドは剣をブンブンと振っている。弓術もレベル30になったら進化するのだろうか。


「時間もないからさっさと進んだほうが良い」

 それもそうだな。ちくしょう、すっかりユイとピグマリオンは仲良しじゃねえか。お兄ちゃんポジションは俺のはずだったのに。ダンジョンの中で死んだら街まで戻ってしまうかも知れないからやらないけど。



 というより時間なんてどこに表示されているんだろう。時々俺と周りが見える景色が違うのかと思っちゃうことあるよ。俺が一々メニューを確認しないからだけだろうけどね。せっかくリアルにこだわってくれてんのに、メニュー開くとかしたくないし。


 メニューを開いてみるといくつかのタイマー的なものがあるが、どれがどれなのかさっぱりわからない。気にしなくても良いと思うが。



 さて、スキル構成を変えるか。火魔法を試すのはまた後として、少しリスキーだが弓を使うか。

ありがとうございました。

ダンジョン編究極の難産でした。

誤字脱字等ありましたら感想まで。

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