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狙撃手の日常  作者: 野兎
拠点
122/166

121生産と清算

《生産行動により【調合Lv16】になりました》

《生産行動により【精密操作Lv8】になりました》

《生産行動により【模造Lv9】になりました》



 ドク草を全て使い切った結果だ。

 精密操作は補正が32になった。装備による器用さは対応外なのが悲しいな。


 それにしてもドク草と水とガラス瓶を指定して模造をしていただけなのにどうして精密操作がレベルアップしたのだろうか。

 模造が作られている途中にガラス瓶から毒を捨てる作業?


 さて、いよいよ普通のポーションでも作ろうかな。


「シノブさん」

 カラコさんが唐突にキッチンの扉を開けて入ってきた。

 俺何かやったのだろうか。

 もしや俺の流した毒が川に流れていて公害になっているとか。魚が死んだとか。川がピンク色になったとか。


「俺はやってない!」

「一体何をやってたんですか?」

 しまった、墓穴を掘ったか? 確かにやってないと叫ぶ人のほとんどの人はやってるしな。


「いや、何でもない。俺は調合していただけだが。カラコさんは?」

「暇なので、暇そうなシノブさんのところに」

 生産スキル取ったら良いんじゃないか?

 それに俺が暇そうって酷いな。

 そういえば、カラコさんで試してみたいことがあったんだった。


「カラコさん、これ飲んでみてよ」

「何ですか、これは」

 俺の持つ紫の瓶を訝しげに見るカラコさん。ここで説得できるかどうかだな。


「飲んだ種族のサンプルが取りたい。カラコさんには効かないかもしれない」

「だからこれは何ですか?」

 騙されなかったか。


「新しい薬だな」

 俺のことをそんな目で見ないでほしいな。少しは信用してほしいものだ。


「俺も飲むし。カラコさんじゃ効かない可能性が高い」

 俺が飲むといったところでカラコさんは諦めたようにため息を吐いた。


「わかりましたよ。これは必要なことなんですね?」

 かかった!

 いや、これは実験だが。


「もちろんだ。これを使うときに機械人間に効かなければ意味ないし」


 カラコさんの手にあるのは吸うと危険な状態になる花粉を水に溶かして煮たものだ。


「イッキ! イッキ!」

「やめてください。普通に飲みます」

 ははは、大学生のノリについていけないか。ちなみに俺は飲み会に参加したことはないぞ。そもそもサークルにも所属していないしな。


 飲んだ瞬間カラコさんのHPがジワジワと減り始め、カラコさんの体からファンの回るかん高い音が聞こえてくる。心なしか顔も赤くなり息も荒くなっている。

 重いゲームでも始めようとしているのか?


「し、シノブさん。こ、これは何ですか?」

 カラコさんの声が少しノイズがかっている。機械人間にも毒は効くらしいな。それにしてもこんなにロボットっぽい反応をするとは、面白い。



「もちろん毒だ」

 笑顔でサムズアップした俺の口の中にはまだ捨てていなかった毒瓶が瓶ごと数本。

 そしてそのまま足払いを食らわされ、重心が高い俺は倒れると思いきや、カラコさんが足を持ち、倒れる方向とは逆に叩きつけられた。


 毒が効いて顔を真っ赤にしているのに元気だな。いつの間にこんな技を覚えたのか。ヴィルゴさんの影響だろうな。



 うっ、毒気持ち悪い。

 毒耐性、毒耐性をつけなければ。




 椅子に座って荒い息を吐きながら自分に回復魔法をかけている、カラコさん。

 毒耐性のレベル上げのため、あえてリフレッシュを使っていないが気持ち悪くて倒れたままの俺。

 そして周りに散らばる毒薬と椅子や調理器具。

 修羅場だな。



《戦闘行動により【毒耐性Lv8】になりました》



 これが戦闘っすか。

 確かにそうではある。

 これは100%俺が悪いな。謝らなければ。


「すまん」

「必要だったんでしょう? 謝らないでください」

 大人な対応だな。俺を地面に叩きつけたのは大人とは言えないが。段々ヴィルゴさんみたいに気が短くなってきてるんじゃないか?


 また扉を開ける音がした。今度は誰だ?


「あ、あ……」

 俺は死を覚悟した。

 蒸気した顔で実際口から蒸気を出しているカラコさん+倒れている俺=制裁。


「何が起きたんだ」

 もう怒気で死ぬから!


「いえ、毒耐性を上げるために毒を飲んでいただけです」

 カラコさん! この恩は一生忘れないぜ! 今度ツルになって恩返しに行ってやる! そして俺の体入り服をプレゼント……よく考えたら凄まじいストーカー。

 優しくされて一方的に惚れて血液入りチョコをお礼として送るぐらい迷惑だな。そのチョコが売れるぐらい旨いなら問題ないが。


「そうか、ここにあるのは退かしていいか?」

「すまない。今片付ける」

 ヴィルゴさんは何をするのかと思ったら、ウサギの肉を取り出して捌き出した。正直この人の方が師匠の弟子に向いてると思う。


「何を作っているんですか?」

「スープだな。パンも米もないから薄味で」

 米か麦も手に入れなきゃなぁ。NPCはどこから手に入れてるんだ?


「女子力だな」

「そうか、わかるか」

 俺の一言が気に入ったのか機嫌が良くなった。


「良い奥さんになれそうだな」

「ふふふふ、わかるか。わかる奴にはわかるんだよなぁ」

 ヴィルゴさんってこういう系のほめ言葉に弱い? それとも俺たちに会う前に何か良いことでもあったのか?


 ヴィルゴさんは凄い女子力(物理)を持ち合わせているのにも関わらず、可愛いものが好きで料理もできるという女子力を持っているからな。

 女子なら憧れるような人だろう。



「ヴィルゴさんってけっこん……」

 ダメだ。この質問はダメだ。

 俺は一瞬で命の危機を味わった。なんだこの殺気は。

 横のカラコさんも物凄い勢いで首を横に振っている。


「ヴィルゴさんって結構料理旨いんだな、はははははは」

 場は和まない。

 取り敢えず結婚していないということはわかった。そして恐らく結婚ができないということも。そりゃあこんだけ強くちゃね。夫婦喧嘩になった時、死を覚悟しなくちゃいけない。


「失礼しまーす」

 あ、カラコさんズリィ。逃げやがって。俺だってとばっちり食らうのはごめんだ。

 慌てて残っている用具をかき集めてカラコさんの後を追う。


 出て行く時にラビを思いっきり抱きしめている姿に、やはり女子力は高いと思いながらも、キッチンにウサギを入れている衛生観念をどうかとも思った。

 そんなこと言ったら種族がキメラなヴィルゴさんはキッチン入れないけどな。


「恐ろしかったですね……」

「カラコさんはどうやっても殴られないじゃないか」

「たまに本当に殺されるんじゃないかってVR内なのに思うことがあるんですよ」

 わかる。普通に技をかけられている時とかでも、取り敢えずやっとくかって感じのと本気で殺気が出ている時の怖さは違う。

 取り敢えずヴィルゴさんは怒らせちゃダメ絶対。



「まだ調合続きなんだけど、どこでやろうか」

「それよりシノブさんの蜂ってどうなったんですか?」

 すっかり忘れていたな。そうだな。失敗したポーションはククに上げればいいし、様子見に行くか。



 当然のように俺の後ろについてくるカラコさん、ヴィルゴさんみたいに料理すりゃあいいのに。

 ワイズさんとマッド主導で銭湯作りは順調なようだ。


「おーい、クク。元気か?」

『普通』

「喋れるんですか……」

 知らなかったのか? そういえば言ってなかったような気もする。


 蜂はというと、地面に落ちている。


「ハチ公!」

 忠蜂のハチ公は地面に落ちて弱々しくもがいていた。


「もう良いんだ。さあ、封印陣に入れ、ここに入ればお前は助かる」

 俺はハチ公を抱きしめた。

 ハチ公はしばらくもがいていたが諦めたように力を抜いた。


 無事に空いていた封印陣に登録できたようです。


「ここは拍手した方が良いんでしょうか」

「やってみたかっただけだから必要ない」

 拍手喝采されて涙なんて流されたらこっちが恥ずかしい。


 しかし、これで養蜂への道が開けたんじゃないだろうか。


 封印陣からハチを出すとどこかに飛んで行った。封印陣で縛られてるし、帰ってくるだろう。


「お役目ご苦労。特別に今日は2匹ウサギを食って良いぞ」

『血が欲しい』

「だからウサギ」

『あいつの血が欲しい』

 ククが枝を使って示したのはカラコさん。血なんてないと思うけど。


「私ですか?」

「相当痛いぞ。それに俺の血でこんなことになったんだ。カラコさんの血まで吸うとどんな風になるかわからない。やめたほうがいい。ということでウサギで我慢しとけ」

『……弱い血は嫌い』


 ここは我慢してもらうしかないだろう。

「私が野生のトレントに襲われたら、ああいう上位種族になってしまうんでしょうか」

 その想像は怖いな。モンスターはレベルアップするのか。ふとしたことで高レベルプレイヤーがウサギに殺されて、ウサギ神みたいな上位モンスターになったら。

 良い経験値になるというだけか。

 それをやるぐらいならPKKした方が早い。


 そしてトレントの横のウサギ小屋もアメリカの家ぐらいの大きさになっている。何百匹いるのだろうか。

 俺が近づくとゾワゾワと集まってくるのが気持ち悪い。


「ニワトリみたいですね」

 俺にはウサギがニワトリみたという意味がわからない。独創的なセンスを持ったカラコさんだからこその連想だろう。



 さて、青空の下でポーション作るか。


 丁寧に、丁寧に、進める。

 目分量を使って記録しながら、目指せA品質。


 カラコさんは木登りしているが、俺だったらあんな高い木に登る気がしないな。足がすくむし、落ちたら死ぬ。登れるなら上にツリーハウスでも作って欲しいものだ。


 ポーション

 品質 B

 シノブが作ったポーション。体力を大回復すると共にMPも微力回復する、




 く、このレベルまでついに来た。Aは超回復だが、Bでも十分に役立つはずだ。


「やっほぉぉーー」

 カラコさん、山じゃないんだから叫んでも何も返ってこないと思うぞ。

 登った時にかけた時間とは逆に落ちるような速度で下りてきたカラコさんはどうも嬉しそうだった。


 何とかと煙は高いところが好きということか。


「街まで見えました! 後、山と砂漠も見えましたよ!」

「良かったな」

 本人がそれで楽しんでるなら良いことだ。それにしてもちゃんと高いところからの景色も作っているんだな。空を飛べる種族がいるからだろうが。


 後は模造で作っていくだけだ。

 模造のレベルも上がっているし、Cを望む!



《生産行動により【調合Lv19】になりました》

《生産行動により【模造Lv12】になりました》

《レベルアップによりスキル【想定】を取得しました》



《生産行動により【薬品学Lv4】になりました》


 やはり模造は役に立つな。

 新しいスキルの想定。アクションスキルだがパッシブようなものだ。というよりアクションとパッシブの違いが最近わからない。魔法装がパッシブなのはどうしてだろう。強すぎるからか?


 調合成功率100%

 品質再現率5%


 300本近く作ったのだから、Bのポーションは15本あるのか。

 他の品質はDとCをふらふらしている。まだまだレベル上げが必要だな。Dは全て捨てよう。

 俺が片っ端から判別して捨てていってるのを見てカラコさんは唖然としている。規格品にも満たないものはこうして処分してしまうのが1番なのだよ。


「も、もったいないじゃないですか」

「ヤク草なんて森に入れば山というほど取れるし、捨てているのは品質がDだけだ。レベル上げのためには仕方ないし、ククの養分になる。もったいなくはない」

 俺の完璧な言葉にカラコさんは黙ってしまった、しかしその顔は不服そうだ。失敗作の活用法を考えてくれれば、それに使っても良いが。今の所はあれだ。

 ポーションの値段なんてほとんどガラス瓶のようなものだし、品質が悪いのは売れない。ただでさえ薬師は生産系の中でも多いのだ。


《生産行動により【調合Lv20】になりました》

《レベルアップによりスキル【時間計測】を取得しました》



《生産行動により【模造Lv14】になりました》

《生産行動により【薬品知識Lv5】になりました》


 新しいスキルはこれで時間を計れということか。煮る時間とか。

 Cが多くなったような気がする。


「こんなもんか」

 後は、昨日買ったヤグマ製のガラス瓶とワイズさんから貰ったガラス瓶に手作りの物を入れるか。

 そして鑑定して気づいた。


 水晶瓶

 品質 A

 ヤグマが作った水晶瓶にワイズの魔法陣が刻まれている。

 純粋な水晶で作られた瓶は中身を劣化させない。

 効果増加大、品質保存、強度増加


 ガラス瓶

 品質 A

 ヤグマが作った特殊なガラス瓶。特殊な薬が使われている。

 薬の効果によって、中に入れた物に特殊な効果を及ぼす。

 効果増加小、品質保存、強度増加、HP回復速度増加



 これってどっちも製作者同じじゃん!

 なんか名前に聞き覚えあったなと思ったらこれか。βの時からトップの腕前で、今は魔女の弟子で腕を磨いているのか。尊敬できる職人だな。


 慎重に時間と量を測って作っている俺に飽きたのか、カラコさんはいつの間にかいなくなっていた。



《生産行動により【調合Lv21】になりました》

《生産行動により【薬品学Lv6】になりました》


 中々の出来だな。と言っても品質がAになっているのはガラス瓶のおかげというのも大きいだろうが。

 後で皆に配っておこう。



「飯ができたらしいぜー」

 ネメシスの声だけが通り過ぎていく。

 また影だけで通り過ぎたのだろう。


 気がつくともう黄昏時。


 こんな時間か。早いもんだな。今日は昼からログインしたから特に、だが。俺は定期的に光合成しているが、せっかく作ってもらったんだし、食べるか。


 俺は急ぎ足で光灯る拠点へと急いだ。



ありがとうございましたぁ!

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