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狙撃手の日常  作者: 野兎
拠点
114/166

113 動物屋

本日三度目の更新です。お気をつけ下さい。

10月27日1時54分ループしていた部分を修正しました。

 魔女の店だからといって、フクロウとか猫とか、カエルばっかりいるわけではない。

 鷹とか犬とかもいる。というか檻が何重にも積み重ねられていて総数は確認できない。どうやって持ってきたんだか。


『猫が欲しいけど、手間とか考えたら飼えないのよ』

 確かに、良い面だけみたら可愛いとか色々あるが実際はフンだったり、匂いだったりと色々あるしな。


 普通の動物もいるが、ファンタジーな生き物もいる。

 上半身は鷲、下半身は馬というヒッポグリフが1匹繋がっているのが目立つ。

 確かグリフォンと馬の雑種だったな。

 雄の馬は喰っちまうけど、雌の馬は別の意味で食うらしい。どこか人間の戦争を思い出させるな。



 こういう生き物は欲しい。凄く欲しい。でも落ちた時のことを考えると、地面の方が安全だろう。落下ダメージで死ぬとかは馬鹿らしい。


「満月狼……」

 俺よりでかい狼が檻の中で寝そべっている。

 これ乗れるのかな。


『ジロジロ見るな人間』

 喋った?! なんだこの狼凄い。というか二人称が人間なんだ。俺半樹人だけどな。


満月狼ダイアウルフね。これが欲しいの?』

「いや見てただけです。何か乗れるものが欲しいと思っているんですが」



 この大蝦蟇オオガマとか何に使うのだろうか。蝦蟇の油採取用?



『乗るならこれとかどうかしら』

 このヘビですか。どう考えても足が擦れる。例え物凄い速さで動いても俺が引きずられる形になるだろう。というか両腕塞がるじゃん。腕離しても乗ってられる生き物が良い。


『その蛇じゃないわ』

 ヘビじゃないと漢字で書くとじゃじゃないとも読めるな。意味は知らんが。どこかの方言っぽい。


『これよ、わかりにくいけどいるわ』

 師匠の指差すところには蛇と……何かの薄い影が。月明かりがあるおかげでわかっだが。これはなんだ。


 そして動く鎖。何かが繋がれてるのか?

 透明な何か師匠が触っているだろう場所に触れると一瞬見えたのは雪男っぽいゴリラ。

 ナニコレ。


「これはないだろ」

『何よ、フサフサで触り心地も良いし透明なのよ』

 確かに上質な毛皮のような手触りでしかも透明だから狙われることもないだろうけどさ。これっておんぶされて移動するんだよな。俺にはそんなこと耐えられない。透明ゴリラに背負われて移動とか外から見たら凄いシュール。



『お客かの?』

『お久しぶりです、アザミさん。クロユリです。それでこちらは弟子のシノブです』

 店主が来たようだ。髭もじゃのお爺さんの魔女だ。俺は一礼をする。

 魔女なのに男とは、とは思うが俺も魔女だ。何も言わないでおこう。そしてアザミ。もしかして魔女の名前って植物縛りなのだろうか。


 店主に騎乗に良い生き物を聞こうか。


「騎乗用の動物を探しているんですが。初心者でも乗れるような動物ってありますか?」

『ラバじゃの』

 溶岩?

 かと思ったが、原物は馬をカッコ悪くしたようなものだった。ロバと馬のハーフ? そんな感じだ。

 これに乗ろうとは思わないな。よほど高性能ならともかく。


『お客さん、ヒッポグリフやグリフィンを欲しがるんじゃが、大抵は扱いきれず逃げられて終わりじゃ。鳥人などは心通わせやすいがの。最初は大人しいラバが1番じゃよ』

 一理あるな。かな理ある。初めから難易度高いのだと失敗しそうだし。


 鳥人がヒッポグリフと心通わせやすいのなら、樹人と心通わせやすい生き物もいるんじゃないのか?



『貴方は器用だから、すぐ乗れるようになるとは思うけど』

 師匠のお墨付きだが、やっぱり心配だな。ラバから始める気にはならないけど。


「かっこいい感じの乗りやすい生き物ってありませんか?」

 まあ、この2つが両立する動物なんていないだろうがな。

『ユニコーンじゃな。清らかな心を持っているか、処女だと簡単に乗りこなせるのじゃ。まあお前さんには無理じゃな』

 会ったばかりなのによくわかっていることで。


『不純な生き物としてはバイコーンがおるが、これはとても乗りこなせるものじゃない。それ以外でというと神の馬しかありゃあせん。地道に馬から練習するのが1番じゃよ』

 やっぱりそうかー。

 馬か。


「それでお勧めの馬は?」

『ここに馬はおらん。それに実力があるのなら、強力な魔物を倒しそれに乗るのも良いものじゃぞ。ワシが若い頃はドラゴンなど乗りこなしておったものじゃ』


 自分で捕まえるという手段もあるのか。しかし今のところ乗れそうなモンスターって串鹿しか見ないな。それにあれに乗ったら潰れてしまいそうだ。

 となると色々なモンスターが出てくる西での戦闘となるが、あれだな。

 効率が悪い。


 召喚魔法欲しいな。取れないけど。取れたとしても、最低でも100はポイントが必要だろう。諦めるしかないか。

 しかし乗るというだけなら選択肢はたくさんあると思う。


 牛みたいなものだったら難易度も低いだろうし。弓の狙いもつけやすそうだ。

 というかここで買ったものはそういうものとして扱われるんでしょうかね。


『置き場所には心配しなくて良いよ。封印陣に封印させておくからの』

 え、それめっちゃ便利じゃん!

 ということは戦闘でもアイテム扱いでパーティーに入らなかったりするのかな?


「じゃあ、一番安いやつください!」

 お試しだ。


『それなら無料にしてあげるよ。何せ主を救ってくれたクロユリちゃんの弟子だからのう』

 あ、ならもっと高いのにしとけばよかった。今金持ってないからって遠慮したのが悪かった。


 貰ったのはクロウ。

 ただのカラスだ。

 俺の頭に乗ってふんぞり返っている。せめて肩にしてくれませんかね。


『カラスは夜の使いとも言われるからのぅ。特別価格なんじゃよ』


 確かに夕方によく連なって飛んでるよな。朝も多いけど。

 でもどうせならフクロウとかが良かったなと思わないでもない。


「ありがとうございます」

 こいつは一体何をしてくれるんだろう。畑に放しておいたら害虫を食ってくれるかな?


『カー』

 飛んでいった。

 封印陣があるから大丈夫だろうが。逃げたんじゃないだろうな。



『封印陣に封じられている魔物は成長せん。戦闘などに役立てたいと思うのなら自ら心を通わせて、封印陣から解放することじゃな』


 モンスターを従えるのには今のところ三種類あるのかな。


 召喚魔法は持っているだけでモンスターが召喚でき、召喚魔法のレベルが上がると召喚できる種類と同時召喚できる数が増える。大体の種類は選べるが、強さは完全にランダム。スキル数1から10まであり、スキル数10の場合はモンスターの高いステータスと豊富なスキルで普通にプレイヤーより強い。リマセラしてドラゴンを出したプレイヤーの話しは有名だな。召喚している時は最大MPの何割かが削られるらしい。


 次が調教でモンスターを従える方法。

 難易度高すぎてマゾ用と言われている。しかしプレイヤーと離れても行動できたり、かなり高い自由度がある。根気さえあればどんなモンスターでも調教可能と言われていたりする。情報少なすぎてそれぐらいしか知らないな。ヴィルゴさんが2体従えているのは相当なレアケースだと思われる。

 たぶんあの人の殺気に怯えて仲間になったんだろうな。特に維持するのに代償は必要なし。それでいて強いモンスターを従えられるので、時間の浪費を気にしない廃人に取っては非常に有効だと思われる。


 最後がこの封印陣かな。

 馬とかもこれに入るのだろうか。逃げられないし、アイテム扱いで好きな時に出したり仕舞ったりできる。特に代償も必要なしで、店でも買える。便利だ。しかし成長もしないし、基本サポートにしか使えないんだろう。




 カラスは一体何してくれるのか。

 戦闘の時に呼んでみるか。


『カラスね。私も好きよ』

 それは夜の神の化身と言われているからじゃないのか?


 その後も師匠と一緒に色々な店を冷やかして回った。

 師匠が1番若いからか、それとも夜の神を救ったからか、かなりサービスしてもらったりした。


 師匠が髪染め薬を買っていて、師匠の黒髪が染めたものだということを知れたのは大きな発見だ。地毛はルーカスさんと同じ茶色なんだな。みんながみんな魔女っぽい服装しているわけじゃないんだから、黒以外のものも身につけたら良いのにと言ったが、黒が好きなんだそう。

 熱心な信徒……というより師匠のそれはアイドルファンに近いような気がする。いや、預言者達が生きていた時代ってのは信徒はみんなそんな感じだったのか?

 俺にはわからん。


 師匠にお揃いの真っ黒なローブを買ってもらって俺も立派な魔女の風体に。

 やはり女の子とのデートは楽しい。



『疲れたわね。少し休みましょう』

 その言葉で襲いかかってきた女のことを思い出した。

 言いにくいな。こんな楽しそうなのに。


 遠回しに尋ねようか。

『他とは違って特に上下関係もないし、主の元では皆平等よ。特にそんなものはないけど……何か気になったことでもあったの?』


 師匠全く気づいてない。上下関係がないなら、一応最年長が議長勤めてるけどそれは一応なんだろうな。

 ここで言って良いものか。

 しかし俺だけで抱え込んでいても更に厄介なことになった時に怒られるかもしれないしな。


「実は……」

 俺は師匠に全て話してしまった。

 これが果たして正解だったのかはわからない。


 師匠は難しい顔になった。


『私のせいでそんなことになってごめんなさい』

「いやいや、そんな師匠のせいでは」

 本当に師匠が気にする必要はない。


「ご要望とあれば、私が最年長をとっちめてきますよ」

『貴方ほどに負けるほど弱くはないと思うわ』


 ……師匠は俺の本気を見たことがないからな。神弓を持った時の俺は凄いんだぜ?

 それでも師匠がギルドマスターより全然格上なことを考えたら俺よりかは強いのかな? 年取ってるだけあって経験もあるだろうけど。


 だが相手の攻撃が届かない所から一方的に攻撃するのであったら俺は勝てる。近寄られたら終わりだけどな。



『貴方が気にする必要はないわ。放っておいて良いわよ。そして杖を奪ったのは良い判断だったわ』

 これは俺が使って良いのだろうか。


『魔女と杖は切っても切れない関係にある。貴方が杖を持っている限りはその命を握っているのと同じようなものよ』

 そんな大切なことどうして言ってくれなかったのだろう、初耳なんだけど。


「これはどうすれば良いのでしょう」

『貴方の好きに使ったら良いと思うわ』

 そうですか。

 有効活用はさせてもらおうかな。俺も木魔法は使うし。



『そんなことがあったなら、もっと早く言ってくれれば良かったのに』

 タイミングがつかめなくてね。


『もう帰りましょう。最後までいて厄介ごとに巻き込まれるのも嫌だわ』

 何だか俺のせいで帰るみたいで申し訳ないな。


 大師匠に挨拶をして俺たちは師匠の家に帰ってきた。

 ルーカスさんは師匠のベッドで寝ている。

 もう午前3時か。全然眠くはないが、明日の行動に支障を来たす。

 もうログアウトした方が良いだろう。


「今日はありがとうございました」

『色々任せてしまってごめんね。私の弟子なら切り抜けて当然だとは思うけど。じゃあ、おやすみなさい』

 師匠はベッドに潜り込んだ。

 おい!


 何だこの仲良し兄妹は。いやダブルベッドほどのでかいベッドだから2人で寝てもスペースはあるのだけど。

 いや、羨ましいというか。何か事故は起きないのかな? ルーカスさんも立派な男性だし、朝起きて腕に胸が押し付けられていたとかなったら理性が持たないんじゃないか?

 いや、妹がいない俺はわからないことが。確かに姉が横で寝てても何も感じないもんな。あの姉は暴君だからだが。


 姉に幻想を抱いてる皆さん、美人でブラコンの姉なんかいないんです。


 さて、ログアウトして寝るか!

 今日はやったことが多すぎて疲れた。

ありがとうございました。

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