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狙撃手の日常  作者: 野兎
拠点
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外伝 ラビの冒険

本日二度目の更新です。

 振り下ろした杵が血熊ブラッドベアーの頭を粉砕する。


 東の森最強の魔物ともいえる血熊。

 ラビとマラの2匹といえども苦戦は避けられなかった。


 2匹の血で汚れたラビの白い毛もラビが一度身震いすると、綺麗に汚れが取れていった。傷も恐ろしいスピードで塞がっていく。

 ある出来事で身体の色が変わった時から、ラビは自らに分け与えられた力を制御する訓練をしていた。その結果、自由にHPを回復させることが可能になったのだ。


 マラが倒れたまま動かない血熊の上でぱたぱたと飛んでいる。その顔に浮かんでいる笑みはまるで死んだ血熊を嘲笑っているようで。


 ラビの蹴りがマラに放たれた。何が起きたのかもわからないまま、マラは吹き飛び木に激突して止まった。

 マラはその笑みを収め、神妙な顔をしてラビの横に立った。


 良い戦いをくれたものに感謝を。

 そう祈りを捧げたラビは、主に言われたとおり、次なる相手を探す。



 その時、聞き覚えのある声が聞こえた。

 普段は出くわさないように、避けるのだが。


 ラビはマラに合図をすると、音もなくそちらの方向へ駈け出した。





「さっきから何のモンスターにも会わなくて気味が悪いわね……」

 エルフの少女、サナは辺りを警戒しながら進む。


「いないならいいじゃん。私達が1番にボスを見つけて、ボス討伐のパーティーを募集すれば!」

 吸血鬼の少女、リアムは棒を手のひらに乗せて、バランスを取りながら進む。足場の悪い森の中でありながら、その棒は未だバランスを崩したことがなかった。


「全く、徘徊型のボスだったらどうするの」

「あー、あはははは」

 その答えには苦笑いで返すリアム。

 何も考えていなかったんだろうと、サナはため息をついた。


 徘徊型のボスでまだ発見されていないぐらいの高レベルなモンスターだとしたら、2人の実力ではとても敵わないだろう。逃げるのもできないかもしれない。



「おおっとと」

 順調だったリアムの棒は手の上でぐらつき始めた。

 リアムは落ちてくる棒を掴み、足元を見た。


 足元には拳大ほどの大きさの何かの実がたくさん落ちている。

 リアムはそれに躓いたのだった。


「何かのアイテム?」

 サナが聞いてくるが、リアムは腕を組みうなり始める。


「なんで私が躓いたのか……」

「そこにそれがあったからでしょ」

 一体何を考えているのかわからないが、サナは無言で友人が解答を出すのを待った。

 武術や、こういうサバイバルに関してはリアムの知識の方が頼りになるということを知っていたからである。


 突如リアムの上を白い影が飛ぶ。

 相当な質量の金属同士がぶつかったような音がして、2つの影は別れた。


「敵襲?」

 リアムは棒を構え、警戒したが攻撃は来ない。

 そして足元を確認した時、そこに新たな実が落ちているのに気づいた。


「サナ、ここを離れるよ! 超特急新幹線で!」

 リアムは駈け出し、サナはわけがわからずも、親友を信じてその後に続いた。



「一体何があったの?」

 息を切らしたサナが、リアムの肩を持ちリアムの歩みを止める。


「あそこに後1秒でも長くいたら、私達の命は危なかったね!」

 気取った様子でリアムは、サナの様子を見る。サナは走るのに疲れ、それどころでないようなのに、心の中でがっかりしながら、簡単に種明かしをした。


「あの木の実。見た目に比べてすっごい重かった。たぶん下にプレイヤーが来たら自動的に落ちるようになっているね。当たったら大ダメージってこと。Q.E.D.証明終了!」

「罠が多いって聞いたけど、私達は初めてね」

 リアムが犯人はお前だ、とでも言うようにビシっと突きつけた指を軽く払って、サナはフードをかぶり直した。


「それだけど、急に出てきたのは何だったのかしら」

「この私でも情報不足で推理できないね」

 はいはい、と言いながらサナは考え始めたリアムの背中を押しまた奥の方向へと歩かせ始めた。


 あの、シルエットはどこかで……リアムは記憶を辿っていたが、結局思い出せなかった。ラビの色が変わっていたというのがなかったら、また違っていたはずだが。




 ラビはリアムを落ちてくる木の実から守った後も、その木の下で立っていた。


 目を瞑り、落ちてくる木の実を音だけで捉える。

 ラビが一歩前に進むと、今までいた場所に木の実が落ちてくる。

 そしてまた微かな落ちる音を捉える。


 マラはその木の上でどこからか、紙を広げて、そこに怪しげな模様を書き込んでいた。魔法陣だ。


 2匹はそれぞれの方法で自らの力を蓄えて、やがて主が狩りに連れて行ってくれる日のことを、心待ちにするのだった。

ありがとうございました。

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