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狙撃手の日常  作者: 野兎
拠点
102/166

101 暗闇の中で

 変装した俺たちは誰にも気づかれることなく冒険者ギルドへとやってきた。

 そもそも知り合いに合わなかったから俺は普通だな。イッカクさんが誰にも呼び止められないというのがこのコスチュームの性能を表している。


 冒険者ギルドはいつもの騒がしさ。コスプレしている人も多いから俺達が特に注目されることもない。アレクは奥へ入るところの守衛に黒いコインを3枚渡す。

 こいつも裏側と繋がっているのか。そうぞう以上に汚職だな。



『今日は104号室です』

 104号室で何があるというのか。

 暗号も何もないなんて危機意識が足りていないような気がする。

 こんなの盗まれたら終わりだろう。実際盗まれてるしな。


 部屋に近づくたびに緊張してくるのがわかる、いかん、身体をほぐそう。これはゲーム、楽しんでいけば良いんだ。

 指定された部屋に入ると、魔法陣がある。転移魔法陣だろう。転移魔法陣だと思わせておいて、人が乗ったら爆発する仕組みとかだったら完敗だ。


「行くにゃ」

 アレクの号令と共に俺達は魔法陣の上へと踏み出した。



 辿り着いたのは、冒険者ギルドのロビー的なところ。地下にあるらしく、窓が一切ないという所を除けば、冒険者ギルドとよく似ている。違う点といえば多くの人が顔を隠しているという点だけだ。依頼に乗っているものきな臭いというか政治色が強いというかそんな感じだ。

 そういえばこの街って誰が収めているのだろうか。ゴブリン防衛戦でもギルドマスターが出てきただけだし。まだ見ぬ領主とかいるかもしれないな。


「じゃあ、検討を祈ってるにゃ」

「上で会いましょうー」

 それぞれ場所がわかっているのだろうか。俺はどこに行けば良いのかさっぱりわからない。


「そっちこそな」


 一体どこに行けば良いのか。

 牢屋といえば、地下。奥に行ってみるか。もうクビチョンパされちゃった可能性もあるが、フレンドの状態が普通なので大丈夫と信じたい。




(シノブさん!)

 驚いたな。カラコさんから電話だ。

 いきなりかけてこないでくれ。と言ってもいきなりかけてこない電話なんて電話の意味をなしていないしな。


「悪いが潜入中なんで返事はできん」

 俺は小声で返事をし、周りを見る。幸いなことに誰にも気づかれなかったようだ。


(一体何をしてるんですか! ギルドマスターなんですよ?)


 確かにバレたら問題だ。ならバレなければ良いんじゃないか?

 奥に行く道には守衛らしき人が立っている。

 何とかタイミングを見て、こっそり忍び込まないとな。


《行動により【隠密Lv13】になりました》




(大体シノブさんは、まず相談してからとか考えないんですか? 事後報告だけではこちらも色々と把握しきれないことがあるんですよ)


 よしいける!

 俺は守衛が少し鼻をかいた時に横を素早くすり抜け、あくまでもここにいるのが普通みたいな態度をして歩いて行った。


 平静を保て、俺が入手すべきなのはここの地図。もう本当中に人がいなくて、予備知識なしの潜入とか一体他の人たちはどうしてるんだ? ダクトでもあれば良いのだが、そういうのも見当たらない。

 俺にそういうスキルがあれば良かったんだがな。


「魔眼」

 天井の照明が魔力を使っているものとわかる。

 その他ドアがある場所なら中の魔力量が少しわかる。何か役に立つかと思ったがこの程度だ。

 そうだ。こんな時のため、透視ゴーグルがあるんじゃないか。透視ゴーグルを目に当て、1つずつ扉の中を見ていく。



 怪しげな何かの実験場に書類置き場、様々な標本やホルマリン漬けみたいなものがある部屋。怪しげな部屋と普通に冒険者ギルドにありそうな部屋がある。

 そしてその中の1つの部屋に見たことがある人の姿が見えた。


 確か俺が龍木を取った時に出てきたやつだ。かなり偉かったのか、同じような格好をしたやつらと何かについて話し合っている。会議してるから偉いってわけじゃないだろうが。

 ……見られた。


 扉を通してはっきりと目があったやつがいた。透視持ちか。それとも気配察知か何かで察知されたのか。

 ここは逃げるしかない。近くの扉に入って隠れてもあの透視があったらバレる。



 俺は奥へと走り出した。

 遠くから怒号と戦闘音が聞こえ始める。

 誰が戦っているのかはわからないが、それで足止めになっているのなら良い。あの人数は多すぎる。ここが外だったら、距離を充分に取って神弓で一掃できるのだが。



 薄暗い階段はどんどん降りていく。一体何階あるのだろうか。時折人とすれ違うものの、特に俺に何か言ってくるようなことはなかった。


 何階分降りたのか。俺はある階で立ち止まった。

 明らかに他の階とは違う魔力の濃さだ。


「何だここは」

 妙に気になって、俺はその階を探索することにした。

 何か厄介ごとに巻き込まれると薄々感じていた。こんな魔力だなんて強力な魔物が囚われているとかいう気しかしない。それがわかっていても、何故か俺は歩みを止めることができなかった。俺もつくづく馬鹿だな。


《行動により【魔眼Lv10】になりました》

《行動により【隠密Lv14】になりました》



 一室から魔眼を発動させていると前が見えなくなるほどの魔力が出ていた。

 いかにもな感じの重そうな扉。


 いつの間にかカラコさんとの連絡は途絶えている。逃げている時だろうか。

 いくら近づいても、中を透視することもできない。不気味だ。


 それどころか、頭まで重くなってきている。一体何が起きてんだここは。

 しかし今更引き返すのも癪だ。


「少しだけ見てみるか」

 押してみたが動かない。引っ張っても動かない。

 よくよく考えたが、鍵がかかっているのが普通だよな。浅慮だった。

 仕方ない。また下に行くか。


『そこは引き戸よ』

 お、かなり重いが動く。なんでこんな単純なことに気づかなかったのか、大分西洋に毒されているな。

 師匠?! いや、師匠の自然さに驚いたよ。え? なんでいるの?


『月に汚染されたからどうしようかと思っていたけど。ちゃんと働いたみたいね。よくやったわ。さすがは私の弟子ね。この短期間で冒険者ギルドのここまで入れるようになったなんて』

「は、はあ」


 なんでここにいるかは一先ず置いておこう。まあ、秘術でも使ったのだろう。

 師匠が冒険者ランクをSにしろと言っていたのはここに来るため? しかし俺はまだAのままなのだが。Sになってもここに入れたとは思わないし。そりゃ思ってたより随分早かったですね。




『さあ、行きましょう』

 師匠が重い扉をいっきに開け放つと、そこに息を呑むほどに美しい、巨大な結晶があった。

 不思議なことに、結晶の中心には美しい黒髪を持った女性がいた。結晶の中なのに血が通っているように見えた。不思議だ。眠っているように見える。



『主よ。お迎えに参りました』

 主、ねぇ……。どんな関係なのか。まあこんな所にいるということはやんごとなき生まれの方なのだろう。服装も貴族っぽいし。そして巨乳。わかってらっしゃる。




 そんな時、突然ドタドタと大勢が走る音が聞こえてきた。これはやばいんじゃないか? とも思ったが、師匠は恍惚とした表情で美人さんを眺めている。確かに美人だけど、凄く気が強そうな感じもあるな。ちなみに巨乳。


『魔女よ、やはり来たか』

 仮面をつけた中二病コスチュームの集団が扉の前に立っていた。さっき会議していた連中だ。師匠と知り合いのようだが。


『あら、お久しぶりね』

 師匠の方も知り合いのようだ。数ではこちらの方が負けているのに余裕たっぷりの笑みで応える。

 さすが師匠かっこいい。


 師匠と大勢の睨み合い。俺達の間に流れる空気には徐々に緊張が高まってきている。相手側は剣の柄に手を添え、師匠は笑みを浮かべているままだ。俺も装備をした方が良いのだろうが、ここでそれをしたら、一気に戦闘が始まってしまいそうで怖い。

 この距離、この狭さでは俺1人ではどうやっても倒せないだろう。

 さて、どうする。




「わ?」

 突如俺の前に現れたのはカラコさん。師匠が来た時も驚いたけど、ナニコレ。最近いきなり人の前に出るのが流行りなの?

 


 カラコさんは周りをキョロキョロとし、今にも戦闘が起きそうなことを確認すると刀に手をかけ俺の前で構えた。


「シノブさん。これは何なんですか?」

「俺にもさっぱりわからん」

 実際わからない。今のところは師匠の大切な人がここに捕まってて? 助けに来たけど絶体絶命のピンチということだ。


『月の使徒か』

『これは好都合だ。捕獲しよう』


 盗賊ギルドの人達は忌々しさ半分、運が良い半分みたいな態度だ。うちのカラコさんにそんな目を向けるのやめてほしいな。セクハラだぞ。

 ……俺が言えることでもないけど。



 突然風切り音がなり、空中から多数のナイフが飛んでくる。

 何故か、1人を狙っているが、その1人は簡単そうに避ける。

 しかし紙一重で避けていたのが災いしたのか、面に傷が入り面が落ちてしまう。


「会議中と言われた場所にいないじゃないですかー」

 この場の空気なんか知らないという風に聞こえてきたのは、先ほどまで一緒だったイッカクさんの声。


「イッカクさん?!」

 なんでいるんだ? しかも変装を解いてるし。


『イッカク?』

 盗賊ギルドの面々もざわざわし始める。さすが有名な人なだけある。


「元ギルドマスター。大人しく捕まってくれませんかー? もう貴方は必要ないんですよー」

 ギルドマスター?

 遠くからしか見たことがないが、確かにゴブリンの時にいたかもしれない。というか覚えてない。


 いつの間にかイッカクさんの横にはアレクがいる。あのナイフもアレクが投げたものか。大した腕前だな。

 この2人は別行動していたわけじゃなかったのか。それともアレクの用事が終わったから合流したのか。



『貴女って月の兎?』

「は、はあ。兎ではないですけど月には関係してたり……」

 師匠はカラコさんにやたら興味を示している。カラコさんが顔出してるし、俺ももう普通に戦っても良いのかな。バレてもイッカクさんがどうにかしてくれそうだし。


「師匠、この方は一体どなたなのですか?」

『私達魔女は夜の神に力を与えられたもののことを言うのよ』

 ということは今結晶の中で眠っているのは夜の神ってことか。月の神と何か似ている感じだな。

 師匠は夜の神を助けるために来て、イッカクさんは汚職を暴くために来たのか。神タイミングだな。神の前で神タイミングだなんて馬鹿にしているようだが、眠っているので勘弁してもらおう。




 なんで夜の神がこんなところにいるのかとか、ゴブリンタロウを助けに来ただけのはずだったのにとかそんなことは取り敢えず後回しだな。

 イッカクさんが殺されそうな感じで睨まれているし。戦うしかないだろう。


『ええい、全員口封じすれば良い。やってしまえ!』

 ギルドマスターの号令で相手が皆剣を抜く。

 死んでも死んでも生き返る俺達を口封じする? 冒険者ギルド内で生き返るからやろうと思えばもう二度とログインしないように思わせることは可能だが。随分と気が長い人達だ。




「ファイアゴーレム!」

「邪眼!」

 俺の呪文に合わせてカラコさんが邪眼を開き、戦いの火蓋は切って落とされた。

 イッカクさんはアレクと共に消える。あちらは心配ないな。

 俺は龍槍を取り出し、剣を身体で受けたエウレカ号に投げ渡す。


『カグノ参上!』

 盗賊ギルド側の手が止まった所にカラコさんが2本の刀で斬りこむ。


 これは仕方ないだろう。

 俺だってゴーレムがいきなりグラマラスな美女に変化したら腰を抜かす。


 師匠が手から黒い魔法を放ち、2人を部屋から弾き飛ばし、戦闘不能にした。

 そしてカラコさんの2本の刀とギルドマスターの剣が激しい音を立ててぶつかり合う。


 俺は俺の方の戦いに集中しよう。カグノが相手にしているのは2人。

 カグノが押され気味だ。かなりの手練だろう。今ここにヴィルゴさんがいないことが悔やまれる。

 あの人だったら喜んで戦いに行きそうなのだが。



「展開、装填」

 うーむ、近くでちょこまかと動かれると難しいな。カグノに当たってしまいそうだ。やはり近距離で戦うのはきついな。


『気をつけろ、弓使いが何かするぞ』

 何もしないと思ってたのかい?

 そりゃ攻撃するに決まってるじゃないですか。






 今回の戦闘で得られたことは狙撃の有能性だな。狙撃で視界を大幅に狭めて、それから黒い影が入った瞬間に射抜く。カグノは燃えているから判別は容易だ。それに目の保養なあの物体を見ないで済むことにもなる。たまに狙撃の視点を変えて胸元を観察していたのは秘密だ。

 思考加速も狙撃状態だとよく効果がわかる。


『ぐうう……くそっ』

 腕を射抜かれて、腹を刺されただけなのに軟弱な人達だ。血は出ていないのは、焼けて止血されているのか、そもそもNPCは血が出ないのか。

 HPは半分以上残ってる。ゴブリンだってHPがなくなるまで止まらなかったのにな。


「ウッドバインド」

 逃げられないように拘束してと。



 後はギルドマスターだけか。師匠の方も序盤で終わらせているし。

 長剣を振り回すギルドマスターと2本の刀を持ち舞うように戦うカラコさん。ギルドマスターは相当な技量というかレベルの持ち主だな。素早いカラコさんを着実に押さえている。一進一退といったところだろうか。


「リフレッシュ」

「ありがとうございます」

 回復魔法のお礼を言う暇があるなら早く終わらせて欲しいものだ。


『こいつら舐めやがって!』

 確かに4人いて、3人が暇そうにしてたらそうかもな。

 師匠は水晶の部分を何やら調べているし、俺はカラコさんの戦いをボーッと見ている。カグノは縛り付けられた相手に拷問をしている。触れられるだけで火傷するもんな。カグノのそういう行為を見ていると無意味に蟻をいたぶっていた幼少期を思い出す。

 子供って何がしたいんだろうな。

 ただ忙しくなったり他に面白いものが見つかっただけで、人間の残虐性は十分に残ってるんだろうな。

 怖い怖い。


 とか考えていたら、ギルドマスターが覚醒した。


『うおおおおお!』

 金色の髪が真っ黒に変わって、目も紅くなった。まさに悪堕ちって感じだ。いや、本性を現したというべきか。


『この力を手に入れた俺には誰にも負けん。一瞬で終わらせてやろう』

 これはまずいな。大抵の漫画ではこういうセリフを言った敵は一瞬で負けるもんだが。カラコさんの神化みたいなレベルだと、対応できないだろう。


「カグノ、手伝ってやれ!」

『わかった!』

 その変化に気づいた師匠も何やら魔法の構築を始めた。



 こうも美人が揃っていると眼福でたまらない。貧乳巨乳妹属性と三者三様の萌えがある。

 ただし暑苦しいおっさんが邪魔だ。こんな年になってまで、中二っぽいことを言って剣を振り回しているとは。俺が年を取ったら脱いだらムキムキなご隠居タイプ、もしくは魔法の達人的な賢者タイプでプレイしたい。




「クラック!」

 ギルマスの足元に割れ目ができるが、引っかからない。あいつ浮かんでるのか?

 この混戦であまり周りに影響の出るような魔法は使えない。広範囲魔法だったら当たるとか気にしなく良いんだが。


「ストーンバレット!」

 未だに魔力操作できない魔法だ。しかしファイアボールよりも弾速は速い。

 これは無事に当たったが……土の弾丸当たっても平気とかどんな肌をしているんだろう。


 俺の魔法は全て作用しないみたいだな。全然効いてない。

 カグノの体力を回復するだけか。



『皆退いて!』

 その言葉を聞いたと同時に2人はギルドマスターから離れ、師匠の両手から闇の光線が放たれる。

 その魔法もギルドマスターは難なく受け止めた。



『夜の化身になった俺にそんなものが通じるとでも?』

 相手のセリフだけみたら絶望感漂うシーンかもしれないけど、まだ誰も必殺技を使っていない。カラコさんが神化を使えばまた話しは別だろう。

 というか俺はMPがあれだから覚醒使えないけどな。

 思った以上にこのスキル使いにくいな。予め強敵だと分かっていれば良いのだが。



 皆に一瞬退いてもらって、ファイアショットの連射を叩き込みたいが、ここだと崩落の危険があるしな。最近俺が全力で戦えない所が多いような気がする。いずれ行くであろうダンジョンのために狭い所での戦い方も考えておかなければな。

 屋内の狭い所の戦いって難しい。


 しかしカラコさんが神化しなきゃ、窮地は脱せないわけで。俺が瞑想しながらポーション飲みまくるという手段もあるけど。でも俺は強制できないしな。



『仕方ないわね』

 師匠がそういう言葉を言ったのが聞こえた。

 師匠の言葉に振り向くと師匠の体が闇に包まれ、目も紅く光る。

 ギルドマスターと同じような状態だ。


『な、何ぃ?』

 ギルドマスター凄い焦ってる。ざまあ。夜の化身となって最強なんだろ。ほら、やってみろよ。

 おそらく、ギルドマスターと師匠の力は同じこの夜の神から出ているものだろう。



『無理やり力を手に入れた貴方と、主の恩寵を受けた私と。どちらが強いかしら』

 師匠の本気を見たという感じだ。ギルドマスターなんかより全然かっこいい。


『ふん、夜は目を覚まさぬ。これからもだ!』

 ギルドマスターは身体から邪気的なものをだし、カラコさんとカグノを吹き飛ばした。ダメージはないので大丈夫だろう。

 ギルドマスターの刃が師匠に向けられる。


『闇の恐ろしさを』

『黙れぇぇ!』

 師匠の心配はしていないが、大丈夫だよな。ごつい男と可愛い女の子という対面ではどうしても不安になる。


『思い知るが良い』

 師匠がその紅い目を見開くと、ギルドマスターは剣を取り落とし、地面に膝をついた。

 そしてそのまま動かない。

 一体どうなっているんだ?


 師匠の目が元に戻った。これで終わりなのか?



『やっぱり力を借りるのは疲れるわね』

 師匠の周りに漂っていた黒いオーラが消え、目も元に戻る。


《戦闘行動により【弓術Lv19】になりました》

《戦闘行動により【狙撃Lv16】になりました》

《戦闘行動により【火魔法Lv25】になりました》

《レベルアップによりスキル【ボルケーノ】を取得しました》

《戦闘行動により【土魔法Lv13】になりました》

《戦闘行動により【木魔法Lv19】になりました》

《戦闘行動により【魔力操作Lv10】になりました》

《戦闘行動により【思考加速Lv9】になりました》



 火魔法の新呪文か。火山でも作ってしまうのだろうか。

 また試さなきゃな。使いやすいものだと良いのだが。


 ギルドマスターは宙を見て放心している。恐ろしい力だ。意識をなくすとかそう言う力なのか?



「シノブさん、これは一体何なんですか? そもそも何で私がここにいるんですか? ぜ、ん、ぶ、説明してください」

 んなこと言われたって俺にもわからない。


「えーと、この人はルーカスさんが紹介してくれたゴブリン肉の調理の方法を知っている師匠で、師匠はこの神様の居場所を探してて、そのために俺をギルド高ランクにしようとしてて、まあなんだかんだ言ってこんな中に入れて、あれだな。俺にある師匠の印が反応したとかで師匠が飛んできて……カラコさんが来た理由は知らん」


 自分で説明しても意味がわからん。何でゴブリン肉の調理法を教えてもらいに行くとかいうお菓子の作り方を的なノリが最終的に神を巡る争いになってるのだろうか。

 子供が仲良くて知り合ったママ友が出先で家に来てよ的な話になって一緒に家に行ったらお互いの旦那が不倫中だったとか。例えも意味がわからん。

 


『私の名前はクロユリよ。よろしくね』

 差し出された師匠の手をおずおずと掴むカラコさん。

 なんか俺の時と初対面の反応が違うんですけどー。これが神と関係してる人達の親近感?


「初めまして、カラコと申します」

『カグノだよ!』


 捕らえたやつらはイッカクさんに任せておけば良いかな。


「終わりましたかー」

 イッカクさんが顔を出した。一体どこに隠れていたんだか。


「精神的に終わってるやつが1人いるけどな」

 こいつ治るのか? 師匠大分怒ってたらから治さないと思うけど。別にこの中二病野郎は治らなくても問題ないような気がするが、なんでこんなのがギルドマスターだったんだか。


「好都合ですねー。この人達は私たちが引き取りますー」

 私達? と思ったら何人かの人が入ってきて素早く縄で縛りあげ、担ぎ上げ出て行った。


「盗賊ギルドにも反ギルドマスター派はいるんですよー。こうなったらもう現体制は崩れ落ちますけどねー」

 まあ、トップがあんな様子じゃな。そりゃ反発派も生まれるだろう。

 そしてイッカクさんアレクの方が詳しいとか言っておいて、充分知ってるじゃん。中に内通者いるぐらい知ってるじゃん!


「じゃあ、冒険者ギルドはどうなるんだ?」

「今の副ギルドマスターがトップになりますねー。私に多くの恩がある副ギルドマスターが」


 こうしてイッカクさんの権力はドンドン大きくなっていくんだろうな。個人でそれだけやれるって恐ろしい。

 クエストを通してプレイヤーに金やアイテムを与える冒険者ギルド。それが1プレイヤーに支配されたら……イッカクさんって何者なんだろう。


 鍛治師だけど。

 この世界で金属武器が非常に強力なこと表しているんだな。



 師匠とカラコさんはほどほどに打ち解けたようだ。


『流石私の弟子ね。後でその子と一緒に私の所に来なさい』

「かしこまりました」

 師匠は巨大水晶を装置から外し、消えていった。

 風のように来て、去っていったな。詳しいことは後で聞けばよいか。


 何しに来たんだっけ? といえばゴブリンタロウ。元の予定から大きく離れたが、仕方ない。イッカクさんに頼むか。


「イッカクさん、ゴブリンタロウっていうゴブリンを見つけたら俺に教えてくれ」

「ふざけた名前ですねー。了解しましたー」

 そんなこと言うと怒られるぞ。


「一件落着というか。何でこんなことになったんでしょうね」

「さあ?」

 俺にもわからない。あの時、変な気を起こしてこの魔力が溢れ出る階に入らなかったら……。


 俺たちは月神と師匠の手の上で転がされてたのかもな。カラコさんが来た理由も、俺がこの場所に来たのも。


 俺が盗賊ギルドと接触したのも師匠からの言いつけに応えるためだし。まあそれでも師匠が驚いていたというのは予想外に速かったからだろうな。

 何の偶然が折り重なってこうなったんだか。


 本当に神が色々舞台でも整えない限りありえないような偶然だよ。

 できすぎてる。


「じゃあ、師匠の家に行くか」

「色々聞きたいこともありますしね」


 さっさとこの辛気臭い地下から出て地上に戻ろう。もう狭いところで戦闘になるのは嫌だ。

ありがとうございました。

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