044. 叫び声
晃生さんは暗闇の中、アーティファクトたちの声を頼りに慎重に進んでいきます。
私はというと――
空気の固定する高さを“地面から十センチ”と設定したためか、時々ある凸凹に少し戸惑いながらも、引っ掛かることなく、転ぶこともなく順調に進んでいました。
黒い光は変わらず揺らめき、白い光を取り込もうとしているようにも見えます――
何かのきっかけで呪いのアーティファクトになる……
これまでアーティファクトを見てきて、感じてきて――使用者が望まなければ、そんな変化が起きるはずがないと思うのです……
だから使用者を……なんとしてもアーティファクトから離さなければ――!
だいぶその場所に近づいてきたようで、晃生さんの歩みが少しずつゆっくりになってきました。
人感センサーアーティファクトたちの配置を見ると、少し行った先を右に曲がると、広めの空間があるようです。
微かに聞こえる水音も、その場所が近い証拠でしょう……
「トウマ――光だ。光が見える」
晃生さんが立ち止まって、私の耳元で囁くように言います。
「呪いのアーティファクトのものだと思うが――」
目を開けてみると、確かに先の方から光が漏れてきているのが見えます。
黒い光――――!
「……すまないがここから俺は、アーティファクトの声を聞くことができない――
トウマも何か……不安や怒りのような物を感じたら、感覚を閉じた方が良いぞ――」
苦しそうな声――もしかして……
「アーティファクトの……叫び声が聞こえるんですね――?」
「……あぁ……
どうして私が、やめて、助けて、と悲鳴を上げてる――――」
胸が――鷲掴みにされたかのように苦しくなります――
「早く……助けてあげましょう――」
そして私は、晃生さんに一つの提案をしてみます。
「ちょっと思いついたんですけど――
私がスーちゃんで、その人の動きを奪う、というのはどうですか? そうしたら、抵抗される事なく、晃生さんが結界アーティファクトであの子を助けることができると思うのですが」
たぶん、装束のアーティファクトたちのおかげでしょう。自分がまさか、こんな戦略のようなものを考えつくだなんて――。
「なるほど……」
「ただ、それを躱されたら……その後どうしたらいいのかは……」
「そこから先は俺が対処しよう。その時は結界アーティファクトの発動を頼む」
「――わかりました」
晃生さんの了承も得て、私は深呼吸をしました。
よし……ドキドキはしているけど、頭は冷静です。ありがとう、アーティファクトたち――
「じゃあ……もう少し近づいて、手を離したら――頼んだぞ」
「はい」
絶対に助けます。
だからもう少し頑張って――――
一歩、また一歩と音を立てぬように、慎重に。息を殺しながら私たちは近づいていきました。
そして――後一歩でその場所が見えるところまでやってくると……
“圧”と言うのでしょうか、何とも言いようのない感覚が、うねる波のようにやってきました。
「――!――」
これが――さっき晃生さんが言っていた――




