トーナメント戦⑪
ジャックがスキル【リアルフィールド】を発動したが、何も変わった様子がない。
「ド派手に行くぜ!」
DDはジャックが唱えたスキルを気にすら様子もなく、ジャックへ突っ込んでいく。少し遅れながらシェリーもジャックに向かっていく。ジャックはふぅーっと短く息を吐き、2本の大剣を構える。
DDがシェリーよりも先にジャックに近づいていく。ジャックもまずはDDにカウンターを入れようとぐっと手に力を入れる。しかし、DDはジャックの一歩手前で地面に刺さっている刀をポールのように利用して、移動方向を急にグルンっと変えた。DDが向かったのはシェリーの方である。シェリーもジャックへ突っ込んでいたので、DDとシェリーは向き合う状態になった。DDはシェリーに2本の刀をクロスするようにして振るう。シェリーは咄嗟にシャッシャッとプロのスケーターのようにしてDDをかわし、そのままジャックへ突っ込んでいく。そして、シェリーはジャックに向かって氷剣を振り下ろす。ジャックはそれを大剣で受け止め、もう片方の大剣をシェリーに振るう。
「【氷丘】!」
シェリーはそう唱えて、大剣を防ごうとした。が、なぜか氷壁が出現しない。そして、そのままジャックの振るった大剣がシェリーの脇腹を切り裂き、思いっきり吹っ飛ばす。DDもシェリーに続いてジャックへ突っ込んでいた。DDの振り下ろした刀がジャックの肩に直撃し、ジャックのHPは1まで減ってしまった。しかし、ジャックは1歩も怯まない。ジャックは肩に振り下ろされた刀を片手で掴み押さえつける。そして、DDに大剣を振るう。DDはノブナガとは違い、柔軟な思考を持っている。咄嗟に刀を離し、後ろへ飛び退ける。ジャックは肩に刺さっている刀を抜き、DDに向けて投げつける。DDは空中で短刀で弾く。
そんな攻防をしている間にもシェリーは杖で体を支えながら立ち上がっていた。
(スキルが…使えなかった…?)
◇◇◇
スキル【リアルフィールド】一定領域内のプレイヤーはスキルが使えなくなる。また、称号の効果も一時的に失う。
◇◇◇
(でも、氷剣や氷床がそのままってことは、【リアルフィールド】発動前に使用したスキルは持続するってことかな…)
そんな思考を巡らしているシェリーのHPはジャック同様、1にまで減っていた。
集中攻撃が終わったジャックは足を動かし始めた。思いっきり足を踏み込んで氷床を砕き、大剣で地面に突き刺さっている刀を薙ぎ払いながらDDの元へ突き進んでいく。そんなジャックに身を低くして突っ込んでいくDDだが、気のせいかスピードが遅くなっているようである。ジャックは左手に持った大剣を薙ぎ振るう。DDはジャンプしてかわす。しかし、ジャックはそれを読んでいたらしい。右手に持った大剣を空中にいるDDに薙ぎ振るう。普段ならどうにかしてかわすDDだが、体がうまく動かないようである。恐らく、【リアルフィールド】で称号を失っているせいだろう。DDは咄嗟に刀で防ごうとしたが、STRに差がある。DDはシェリーの方へと吹っ飛ばされた。シェリーは自分の元は吹っ飛ばれてくるDDを避ける力がないらしい。シェリーは咄嗟に氷剣を前に突き出す。その氷剣はDDの背中を貫いたが、DDの勢いは止まらず、シェリーを巻き込んで、闘技場の壁まで吹っ飛ばされた。そうして、シェリーは赤いエフェクトに変わった。ジャックはDDの元に氷床と刺さっている刀を粉砕しながら近づいていく。
「ぐっ…」
ジャックは、呻き声を上げながら立ち上がろうとするDDに向かって大剣を振り下ろした。そうして、DDは赤いエフェクトに変わり、決勝戦はジャックの勝利で終わった。
参考文献:鬼○の刃




