トーナメント戦⑧
「ベスト4が決定しました!早速、第5回戦第1試合、功績値3位のジャックと功績値4位のシェリーの試合を始めます!」
そうして、恭弥と智美を除いたプレイヤーのトップ2の戦闘が始まった。
「【氷山】!」
試合開始早々、シェリーが荒々しい声でそう唱える。すると、シェリーの足元からジャックに向かって氷壁が生成されていく。ジャックの足元から急に氷壁が生成されるわけではない。ガガガッーっと押し迫るように生成されていくのだ。
「オラァァ!!」
ジャックはイラついたように叫び、身の前に迫ってきている氷壁に大剣を振り下ろし、相殺する。そして、ジャックはフィールドに生成された氷壁をぶち壊しながら、シェリーに元へ向かっていく。シェリーは【氷山】【氷山】と何度も叫び、氷壁を生成しまくり、ジャックを妨害する。どうやら、ジャックとシェリー、どちらもイラついている様子である。テッドやキーラ以外、2人のイラつきの理由が恭弥であることを知っている人はいないだろう。
何度も生成される氷壁をドガァンドガァンと壊しながら、どんどん近づいてくるジャック。負けじと【氷山】を発動しまくっているシェリー。どちらも譲らないように見えるが、ジャックがジリジリと近づいてくる。そして、攻撃が届く距離まで近づいて、シェリーに大剣を振るった。
「【氷丘】!」
シェリーがそう唱えると、ジャックの大剣とシェリーの間にシェリーと同じ高さくらいの氷壁が出現した。そして、その氷壁にジャックの振るった大剣が衝突した。先程のようにその氷壁を大剣が砕くと思われたが、砕ききれずに大剣の勢いが止まる。どうやら、【氷丘】は【氷山】より小さい代わりに頑丈なようだ。
「【氷造形】!」
シェリーがそう言うと、シェリーの持っていた50cmの杖から氷が生成され始め、それは剣のような形になった。そして、シェリーはそれを氷に挟まった大剣を抜こうとしているジャックに振るう。しかし、それと同時にジャックは【氷丘】で生成された氷壁をドガァンと破壊し、シェリーの氷剣を弾き返す。
ダメージを受けなかったシェリーだが、少し後ろへ吹っ飛ばされる。
「【氷領域】!」
後退りながら、シェリーをそう唱える。すると、闘技場の地面全体が氷に包まれた。ジャックはツルッと足を滑らせそうなったが、思いっきり氷床を踏み割り、体勢を立て直した。スキルを発動した本人であるシェリーはプロのスケーターのようにスルスル移動できるようだ。動きが鈍くなったジャックを逆に速くなったシェリーが氷剣で攻撃していく。しかし、剣の扱いはジャックの方が上である。動くのが難しくても、近づいてくるシェリーに合わせて正確に大剣を振るう。シェリーもそれを【氷丘】で受け止めて、氷剣ですかさず攻撃をする。しかし、ジャックはそれももう1本の大剣で払い返す。そんな激闘を繰り返した。そして、30分が経った。
「ここで時間切れとさせてもらいます!時間が押している為、ジャック選手とシェリー選手、どちらも決勝進出ということになります!つまり、決勝戦は次の試合次第ですが、三つ巴になります!」
兎さんは、まだ見たかったのだろう、少し悔しそうにそう宣言した。そうして、第5回戦第1試合は終わった。
「団長、いつにも増して荒々しかったですね」
テッドは転送され戻ってきたジャックに話しかける。
「あの女もキョウヤも…気に食わねーな」
「あのスキル使っていたら勝てた試合だったのでは?」
「ふんっ…」
勝ちきれなかったジャックはイラつきが増している様子であった。
「あー、キョウヤ様が見てないならもう辞退しようかな〜」
シェリーはだるそうにそう言った。
「なら、早く負ければ良かったではないですか。30分も戦わずに」
「だってさ〜最強のキョウヤ様に釣り合う女になる為には、私も最強にならきゃじゃん?」
(単純シエナ様、可愛すぎ。好き)
キーラに不純な目で見られているとは知らないシェリーは、恭弥のことをずっと考えてモヤモヤしている様子であった。




