トーナメント戦②
◇◇◇
ユニークスキル【タイガーフォックス】見たスキルをコピーして使うことができる。コピーしてから24時間以内使用可能。
◇◇◇
接近戦で恭弥に勝ち目を見出せなかったらんまるは、コピーしておいたシェリーのスキル【氷山】を使用したのだ。
「流石にこれは避けられないでしょ」
らんまるははぁはぁと息を切らしながら、闘技場をうめつくした巨大な氷壁を見つめている。
__ヒュッ
空気を切るような音が微かに聞こえた。
(なんだ…今の音は…)
「まさか?!」
らんまるは左右をキョロキョロと確認してから、焦ったように顔を上に向けた。
「遅い」
そんな低い声が聞こえた時にはすでに手遅れであった。恭弥はあるスキルで氷壁が届かない空に飛び上がって避けていたのだ。そして、恭弥の放ったワイヤーの先端が、らんまるの足の甲を貫き、地面にまで刺さり込んだ。
「くっ…」
らんまるは逃げようにも片足が地面に固定されて動けない。そんならんまるに短刀を両手に持った恭弥が空から突っ込んでくる。
「【ヘッジホッグ】!」
らんまるは自由が効く両手に持ったダガーで恭弥の振るった短刀を弾き返した。しかし、恭弥の攻撃はそれだけでは終わらなかった。ダガーと短刀でのやり取りの後、ワイヤーがらんまるの体全体を縛り上げるように絡まり、らんまるは足だけでなく手も動かすことができなくなっていた。
「ウィンドブレ…」
らんまるが何らしかのスキルを使おうとしたが、恭弥の方が1歩早かった。恭弥は2本の短刀でらんまるの首をザシュザシュと斬りつけた。そして、らんまるは赤いエフェクトに変わった。
「ここで試合終了〜!勝者は功績値2位のクロ選手だ〜!思わず息をするのを忘れるほどの攻防でした!私はこんな熱いバトルを見たことがない!!」
兎さんは興奮しすぎて、音割れするくらいの大声で叫んだ。そして、恭弥も光のエフェクトに変わり、転送された。
「なんだよ、あいつ!なんなんだよ!」
元いた場所に転送されていたらんまるは、地団駄を踏んでいた。らんまるのいる部屋はお金さえ払えば誰でも借りられる小部屋なので、周りを気にする必要はないのだ。
「青蘭、大丈夫?」
くそっくそっと半泣きしているらんまるにある女性が話しかけてきた。
「うわぁ〜ん…ママァ〜」
どうやら、らんまるに話しかけてきた女性は、らんまるの実の母親らしい。らんまるは母親に抱きつき、顔をお腹に押し付けながら、大泣きし始めた。
「よしよし、悔しい時は好きなだけ泣きなさい…」
らんまるママは、らんまるの頭を撫でながら優しい声でらんまるを包み込む。視聴者には知られていないことだが、らんまるは13歳の中学生である。しかも、度が過ぎるほどのママっ子、つまりはマザコンなのだ。アムシュタークも母親同伴でプレイしているほどなのだ。Hautubeのコメント欄では生意気や上から目線などの批判が見られるが、圧倒的なゲームセンスにより動画配信者として人気になっているのだ。
「お疲れ〜」
「おっす」
恭弥は智美のもとに戻ってきた。
「今回も早かったね」
「そうか?」
「そうだよ!スキルが厄介とか言ってたけど、そうは見えなかったよ?」
「そりゃあそうだよ。知ってるスキルは対応できるだろ」
恭弥は第2回イベントが始まる前のことを思い出しながらそう言った。




