らんまるvsノブナガ②
(甲冑を脱ぐことで防御力を捨て、素早さと攻撃力を最大限引き出せるこの袴の装備…もう誰も拙者の攻撃を目で捉えることはできぬ)
装備を変更したノブナガは明らかにさっきまでとは違うオーラを放っていた。
「へー、それは初めて見た」
らんまるは試合が始まってから初めて鋭い目つきになった。
「人前でこの姿を見せるのは初めてでござるからな」
「それは僕を認めてくれたってことかな?」
「…貴殿の解釈に任せるでござるよ」
「まーいいや。見せてよね、ノブナガさんの本気をさ」
「そのつもりでござる」
「【円方領域】!」
ノブナガは、左手を鞘に右手を柄に手を添えてそう唱えた。【円方領域】の発動と同時にノブナガを中心に薄い膜の様なものが広がっていく。それはノブナガの周りを包み込む様なサークルになった。
(ふーん、あの領域に入った瞬間、察知されて斬られるんだよね多分…)
らんまるの予想通りではあるが、予想できただけでその領域を破ることは難しい。
(こういう時は遠距離攻撃に限るよね…)
「【水刃】!」
__バシュッ
放たれた水刃はノブナガの領域に入った瞬間にただの水に変わり果てた。
(刀で弾いたのかな、見えなかった…)
「ねーノブナガさん、ずっとその中にいるつもり〜?」
「…………」
(やっぱ挑発には乗んないよね…となると一か八か下から攻める?下には領域ないかもだけど、さっき下から攻撃したばっかだし警戒されてるだろうな…こんなことなら手の内見せとくべきじゃなかったかな…いや、今はそんな場合じゃないよね)
「じゃあこれはどうよ」
らんまるはそう言って、アイテムボックスから何かを取り出した。そして、そのアイテムを自分の足元に向かって投げた。
__ドガァンンッ
大きな音と共に爆発が起きた。
「な、何が起きたんだ?!!!」
「らんまるが投げたやつ、手榴弾だったよね??」
「でもらんまるの足元に投げて、なんでノブナガの方でも爆発するんだ!??」
「俺は見たぞ!!らんまるは手榴弾を地面の穴に向かって投げてた!」
観客が盛り上がっている。観客の1人が言った様に、らんまるは手榴弾を穴に投げ入れた、らんまるがノブナガの足元に行く為に掘った穴に。そして、爆風と爆炎がらんまるとノブナガの近くにあった穴から噴き出たのだ。
「今どうなってんだ?!!」
爆風で巻き上がった土煙で2人の状況が第3者からでは分からない。
風で徐々に土煙が流れ去っていき、2人の影が見え始めた。2つの影はそれぞれの武器を交えた様に近くで佇んでいる。爆発と共に2人とも相手に向かって突撃したのだろう。そして、土煙が完全に消え、2人の姿がはっきり見えた。
「…ここまでやられるとはね」
痛みはないが、苦痛に顔を歪めてらんまるが言った。らんまるの右腕が肩から丸ごと地面に斬り落とされていた。
「くっ…かははっ、よもやここまで…」
ノブナガも辛そうな顔をしている。らんまるの左手にあるダガーがノブナガの脇腹に深々と刺さっている。2人のHPバーはどちらも1を示している。恭弥も持っているスキル【我慢】がらんまるもノブナガも発動した様である。
「あと1発…あと1発入れた方が勝ちということでござるか…」
「本当にそう思う?」
これからという顔をしているノブナガに対して、らんまるがニヤッと笑って言った。
「…どういうことでござる?」
「よく見てみなよ、自分の状態をさ…」
「…?」
ノブナガはなんの話だと自分のステータス画面を開いた。
「毒でござるか、いつのまに…」
「さっきだよ、あらかじめ僕のダガーには【微毒】を付けておいたからね」
「拙者が【我慢】を持っていると知っていたのか?」
「もしもを考えたたけだよ」
「そこまで予想できなかった拙者の負けというわけか…」
「…楽しかったよ、ノブナガ」
「ああ、らんまる…拙者も楽しかったでござる」
ノブナガは赤いエフェクトに変わり、試合はらんまるの勝利で幕が下りた。
(意外と面白かったな…)
らんまるとノブナガの勝負を観戦していた恭弥は、立ち上がり体を伸ばした。
(さて、今度は俺がやる番だな)
恭弥は、モニタールーム入り口近くにいたNPCの教えてくれたSクラスがマッチングできる部屋に向かって歩き出した。




