らんまるvsノブナガ①
「へー、荒野か…完全な実力勝負になりそうだね!」
「そうでござるな…」
らんまるとノブナガは、試合が開始しても喋っていた。
「ノブナガさんは、功績値9位だったよね?僕、そんな強い人と直接戦うの初めてなんだよね〜」
「拙者もでござる。らんまる殿は5位、胸を借りるつもりで挑ませてもらうでござる。」
「ふふっ、いいよ〜」
「いざ尋常に…勝負!」
最初に動きを見せたのはノブナガだ。
「【神風抜刀】!」
腰に差してあった1本の刀を、一瞬で蘭丸との間合いを詰めて抜き放った。重そうな甲冑を着ているのにも関わらず凄まじいスピードである。
__カキィィン…
「ヒュウゥゥ〜怖い怖い…」
ノブナガの放った刀はらんまるの首手前で止まっていた。止めたのは、らんまるが両手に持った2本のダガーだ。
「よく言う…」
言葉とは裏腹に余裕そうな表情をしているらんまるを見て、ノブナガはニヤッと笑った。ノブナガは、一旦距離を取り、刀を鞘に戻した。
「今度はこっちから行くよ!!」
らんまるは叫びながら、ノブナガの周囲を回るようにして走り出した。
「【幻像】!」
「むっ、これは…」
ノブナガの周りを走っていたらんまるが20人くらいに分身したように見える。
「「どれが本物か分かるかなぁ〜??」」
全てのらんまるが声を重ねて、ノブナガを挑発してくる。
「ふんっ、分からぬのなら全て斬るのみ。」
「「じゃあ、いっくよ〜」」
そう言うと同時に全てのらんまるがノブナガに向かって走り出した。
「【円斬孤月】!」
ノブナガがそう唱えて、刀を薙ぎ払うようにして振った。すると、ノブナガを中心に円状の斬撃が放たれた。それは、ノブナガを取り囲んでいた全てのらんまるに直撃した。
「安易な攻めだ…」
全てのらんまるが消えたのを確認し、ノブナガはそう言い放った。
(…プレイヤーが消える時のエフェクトが出てたか?否。では、本物はどこにっ…!)
まだらんまるを倒せていないと悟ったノブナガは、キョロキョロと周囲を見回し始めた。
(横には…いない。となると…)
「上か!!」
ノブナガは刀の柄の部分を握りしめ、いつでも抜ける構えで上を向いた。だが、そこには、何もいなかった。
「残念!下でした〜【烈風斬】!」
「ぬぐっ…」
ノブナガの真下、つまり地面の下から声がして、気付いた時には、ノブナガは宙に吹っ飛ばされていた。
「へっへ〜どうだ!らんまる様の力は〜」
ノブナガがいた場所に大きな穴が空いており、そこから這い出てきたらんまるが叫んだ。
原理はこうである。らんまるは【幻像】を使うと同時に【土竜双爪】を使用して、分身だけを地上に残し、本体は地面を掘って地中に隠れたのだ。そして、分身で時間を稼いでいるうちにノブナガの足元まで掘り進み、【烈風斬】を見事ヒットさせたのだ。
(森が目の前にある状態で木を探せと言うと、人は森の中から探し出そうとする。そうした固定観念に囚われてるうちはアマチュアだよ…)
らんまるは、そう心で決め台詞を吐き、カメラに向かって拳を上げた。
「ワァァァァァァァァーーー!!!」
恭弥のいるモニタールームでは大きな歓声が鳴り響いた。
「やっぱ、らんまるはすげーな!」
「スキルの使い方が上手いな〜」
「〈スキルコレクター〉の称号は伊達じゃないな!」
__ガシャンッ
宙へ吹っ飛ばされたノブナガが地面に落ちてきた。
「…流石でござる。」
大きなダメージを食らったと思われたノブナガは、平気そうに立ち上がった。
「やっぱり、これで終わりってわけにはいかないよね〜」
らんまるはカメラからノブナガへと視線を戻した。
「やはり、らんまる殿は強いでござるな…」
「それほどでもあるけどね〜ノブナガさんもあれを耐え切るって、ちゃんとトップランカーなんだね〜」
「心にもないことを…貴殿のその態度、拙者の力を把握しているからと見た。」
「…だったらどうするの〜?」
「では、これは知ってるか?」
ノブナガはそう言って、甲冑から袴の様な姿へと換装した。




