第2階層探索
恭弥はその日、エンデルを探索することにした。ウバドス大迷宮の入り口前にスポーンした恭弥は、地上へと出た。
(さて…)
まだ、第2階層の中でアインの鍛冶屋とウバドス大迷宮入り口しか訪れていない恭弥は、どこへ行こうかと考えていた。
(やっぱり、一番目立つあれかな。)
特別目的があるわけではない恭弥は、街の中心にある一番大きい煙突を目指すことにした。ただどういうわけか、町の中心だけ地図に道が示されていない。店や入れる施設もないようである。
(まぁ、目立つし、地図なくてもいけるだろ。)
恭弥は建物に囲まれた街の中でも見える煙突を見上げ、そう思った。マップを閉じて、聳え立っているでかい煙突へと歩き始めた。
__1時間後
「………」
恭弥は、出発したところで煙突を見上げていた。まるまる一時間、煙突を目指して歩き回った恭弥だったが、全然辿り着けなかった。いつの間にか同じ道をぐるぐる回っていたり、行き止まりになっていたりと中々煙突に近づくことが出来なかった。恭弥が、方向音痴だからというわけではない。恭弥と同じ様に真ん中の煙突を目指そうとしたプレイヤーは、第2階層が解放されてからまだ一日二日しか経っていないが、数多くいる。それでも、煙突まで辿り着けたプレイヤーはただ一人もいないのだ。
(しょうがないか。)
恭弥は、煙突へ行くことを諦めて、街の中で行ける所を散策することにした。ウバドス大迷宮入り口は、街の比較的中心に位置している。店や施設は、周りの方に多く点在している為、恭弥は先程とは逆の方へと歩き始めた。
色鮮やかな1階層とは違い、ほとんどの建物が錆びた鉄でできていて、ガラスも埃がかかっており、パッと見ではどんな店か分からない。恭弥は建物前に置いてある看板を近くで見ながら、興味が湧くような所を探すことにした。
恭弥が興味を惹かれるような所はなく、建物内に入らずにぶらぶらしていると見覚えのあるプレイヤーが話しかけてきた。
「クロさん!」
手を上げながら近づいてくるのは、ヤマト達だった。
「どうもっす。」
恭弥も左手を上げて答えた。
「あれっ?右腕どうしたんですか?」
恭弥は昨日失った右腕をまだ治しておらず、ヤマトが聞いてきた。
「昨日、ちょっと…」
「クロさんでもそんなやられることあるですね〜」
驚いたようにナデシコが言ってきた。
「ははは〜」
恭弥がひっかかったスライムのトラップは、すでに多くのプレイヤーが餌食になった凶悪なトラップなのだが、それを知らない恭弥は、スライムにやられたなんて口が裂けても言えないようで、苦笑いをしてやり過ごした。
「ヤマト、クロさんを誘うのはどうだ?」
「それは、いい案ですね。」
「あっ、私が言おうとしてたのに!」
恭弥を見て、何かを思いついたようにホヤがヤマトに何かを提案した。カタクリも賛成している様子である。ナデシコはホヤを睨んでいる。
「ああ、確かにな。」
ヤマトも賛同した様子である。恭弥は何の話か分かっていない様子であった。
「クロさん…提案なんですが、私達のクランに入りませんか?」
4人でこそこそと話し合った後、恭弥の方を向いて、ヤマトが提案してきた。
「クラン、ですか?」
「そうです。クランは、様々なプレイヤーの集まりのことです。アップデート後に、そのクランという仕様が追加されて、私達も自分達のクランを立ち上げることにしたんです。それで、今メンバーを募集中ってわけなんです。」
「そうなんですか。でも、俺は今のところ一人でプレイしていたいので、またの機会にってことで大丈夫ですか?」
「あっ、全然大丈夫ですよ。イベント5位のクロさんに入ってもらえたら心強いなってだけなので…」
明らかに残念そうにしているヤマト達。その後も少し情報交換などをしてから、恭弥達は別れた。
恭弥はヤマト達と別れた後も街の中を探索して回っていた。途中で見つけた薬屋で再生ポーションを買い、右腕を復元した。エルがそのことを知ったら、うちで買えと怒るだろう。
薬屋以外は建物内に入ることもなく、しばらく歩き回っていると、第1階層で前に見た場所と似た様な所を見つけた。薄汚れた看板には、修練場と書かれていた。




