隠しクエスト
VRMMOにはまった元傭兵の伊黒恭弥は、誰もやりたがらなかった長期間のクエストをクリアした。
傭兵を辞め、やることのない恭弥は今日もまた「アムシュターク」にログインしていた。
「そういえば、昨日、修練場にいた教官に挨拶しないでログアウトしちゃったな〜」
そんなどうでもいいことを思い出して、また修練場に足を向けた。
修練場に入ると、2週間で見慣れた光景だが、隅の方に教官が1人で座っていた。
恭弥は教官の前まで行って
「2週間お世話になりました!」
深々とお辞儀をした。
2週間も同じ場所にいて、少し親近感が湧いた恭弥だったが、教官も同じだったらしい。
「2週間もよく頑張ったな!この修練をやり遂げたのは、お前が初めてだ。これは、餞別だ。」
《【隠しクエスト】クリア》
頭の中に音声が響いて、目の前には青いパネルが表示された。
◇◆◇
【隠しクエスト】教官に認められる〈初回限定〉
報酬
10万ジル
情報屋としての利用
◇◆◇
「なんか分からないことがあったら、いつでも頼れよ」
と言ってくれた教官に再度礼をして、修練場を後にした。
(10万ジルか〜そういえば、全然お金のこと考えたなかったな〜初心者ボーナスでもらった5万ジルと合わせて15万か…1ジル1円っぽいし、俺って貧乏じゃね?)
と当たり前のことに今更気付いた様子である。
そして、街を歩いているとまたまた今更ながら気づいたことがあった。
(そういえば、俺って初期装備のままじゃん。)
街を歩いているプレイヤーはほとんど、なんかカッコいい鎧やローブを着て、キラキラした武器を持っていた。
それに比べて、恭弥は村人Aみたいな初期装備のままであった。
「ああいうのって、どっかで買えたりするんかな?
一旦、ログアウトとして調べてもいいけど…あっ…」
何かを思い出した恭弥は回れ後ろをして、歩き出した。
恭弥が来たのは、さっき出たばかりの修練場だった。
(情報屋って書いてあったし、色々聞けるよな…)
「すいませーん」
教官のところへ走り寄り、色々質問をすることにした。
得られた情報はこうである。
・装備品や武器は、ドロップアイテムかオーダーメイド
・全身の装備を揃えるには、少なくとも100万ジル必要
・お金を稼ぐなら、ダンジョン攻略が一番でこの街から一番近くにあるのは、北門から出てまっすぐ行ったところにある[大蛇の洞窟]
「なるほど…貴重な情報ありがとうございます!」
「頑張れよ。」
と言葉を交わして、再び修練場を出た。
100万も集めるのはだるいと感じた恭弥はまず、オーダーメイドができる生産職を探すことにした。ログイン時の広場近くに大きな鍛冶屋っぽい店を見つけ、入ることにした。
「たった15万?!だめだめ!もっと金を稼いでから出直しな!」
と店を追い出され、他の店にも行ってみたが、同じように言われただけであった。
「やっぱり、100万集めるしかないか〜」
諦めかけた恭弥がトボトボ歩いていると、小さい鍛冶屋を見つけた。




