8つのダンジョン⑥
[巨大虫の巣穴]をクリアした恭弥は、次のダンジョン[怪鳥の大樹]に向かっていた。
[巨大虫の巣穴]のある森を出た恭弥は、マップを見ずに[怪鳥の大樹]に向かっていた。名前にもある通り大きいので、まだ距離があっても十分に見えるのだ。
[怪鳥の大樹]に着いた恭弥は、上を見上げていた。近くまで来るとそれは、大樹と言うよりも大きな2本の蔓が絡み合って上に伸びている植物だった。
恭弥が今まで攻略してきたダンジョンは、仕組みが違えど、全てが洞窟の様な形だったが、[怪鳥の大樹]はどうやら木、いや蔓を登っていく必要がある様で、ダンジョンと呼べるのか怪しいものであった。その蔓は、螺旋状になっているので、その上をぐるぐると歩いて登れる様である。
恭弥が登っていくと
__シュッッッ
何かを察知して立ち止まった恭弥の目の前を何かが通る音がした。恭弥が恐る恐る横を見ると、蔓に直径20cmくらいの穴が空いていた。
その穴の正体は、カミガゼ(神風)鳥である。嘴をドリルのように回しながら、プレイヤー目掛けて一直線に突撃してくるのだ。カミガゼ鳥にとって必死な技だけあって、命中すると大ダメージである。
止まるという選択肢がないからか、恭弥が今まで戦ってきたモンスターの中で一番速いようである。ただ、一直線にしか進めないようなので、来ると分かれば避けられない程ではない。恭弥が避けて、その鳥が勝手に自滅してくれるだけでも経験値は入るようだ。
恭弥はその後も神風特攻を避けながら進んだが、モンスターはカミガゼ鳥しか出てこないようであった。恭弥は避けるだけではつまらないなと感じ、攻撃をしてみることにした。
単純な動きではあるが、驚異的な速さなので避けれはしても攻撃を入れられるプレイヤーは少ない。DEXをある程度上げていないと無理であろう。お世辞にもDEXが高いとは言えない恭弥だが、一発でカウンターを決めた。VRMMOでは、ステータスも大切だが、感覚的な部分は現実と大きく関係してくるのだ。撃たれる場所さえ分かっていれば、銃弾でさえ短刀で弾ける恭弥にとっては朝飯前のことのようである。
《Lv 30 に上がりました。
スキル【我慢】を獲得しました。
装飾品枠が5個に増えます。》
どうやら、避けるよりもちゃんと倒した方が経験値が多く入るようである。ただ、ひっきりなしにカミガゼ鳥の攻撃が続くので、恭弥はスキルの確認はできなかった。
恭弥は後で知ることだが、【我慢】は1日に1度、必死の攻撃を受けてもHPが1残るというもので、取得条件はLv 30になるまでノーデスであること。高ランカーのプレイヤーは、殆ど持っていると言っても過言ではないスキルだ。
そして、大樹?の樹冠が見えてくる辺りでまた新しいスキルを手に入れた。
◇◇◇
スキル【予見】相手の行動を10秒先まで見ることができる。1日に1度まで使用可能。
獲得条件 カミガゼ鳥を50匹以上倒す。
◇◇◇
このスキルも、恭弥は後で確認して初めて効果を知った。
そして、恭弥は樹冠に辿り着いた。そこには、怪鳥のでかい巣らしきものがあったが、怪鳥の姿は見当たらない。
【気配感知】で感じ取ったのか、恭弥が上を見上げた。恭弥の視線の先で真っ白な羽を羽ばたかせて飛んでいるその怪鳥は、色は真逆だがカラスのでかい版のような見た目であった。
怪鳥は、空を飛んだ状態のまま風の刃で攻撃をしてくる。恭弥はそれらを避けることができても、高い空にいる相手に対して攻撃を当てることが出来ないでいた。【水刃】を放っても、普通に避けられてしまうのだ。
膠着状態に痺れを切らした恭弥は、普段は全然使用していなかった大蛇の短刀を取り出して、怪鳥に向かって思いっきり投げた。それが、怪鳥の脇腹辺りに上手い具合に命中して、大ダメージを与えると同時に怪鳥の高度が落ちた。また、運良く【毒牙】が発動して、怪鳥を毒の状態にする事に成功していた。
《【スキル【投擲】を獲得しました。》
【水刃】を十分に当てられる距離まで怪鳥の高度が落ちたので、後はもう恭弥によって完膚なきまでに【水刃】の餌食になった。
【水刃】と毒の効果により怪鳥が赤いエフェクトになって消えると、巣の上に宝箱が現れた。
◇◆◇
【報酬】
10万ジル
怪鳥の卵
◇◆◇
「終わったーーーー!!」
報酬を確認した恭弥は、8つのダンジョン全てを攻略し終わった達成感を山彦が聞こえてきそうなくらいの大声で表現した。
そして、【隠しクエスト】クリアという音声が頭に鳴り響いて、すぐにピロンッと恭弥の目の前に青いパネルが現れた。




