水遊び
第1階層にある8つのダンジョン全てを攻略することにした恭弥は、始めに[湖底の洞穴]に挑むことしたが、水の中で自由に動ける様になるスキルの必要性を感じ、どうにかして得ようと考えていた。
[湖底の洞穴]の近くにある湖、名前は白湖というらしい。現実にはないくらい水が透き通っており、ちらほら古代魚の様な魚が泳いでいた。
「アムシュターク」にも、モンスターみたく攻撃してこない生物が存在しており、白湖の魚もそれに含まれる。それらを捕まえると鱗や生肉などの素材に変わる。いつもなら、数も少なく貴重な素材になる魚を釣ろうとプレイヤー達が何人かいるのだが、アップデートが近いせいか1人も見当たらない。
__ザバンッッ
恭弥は、周りを気にすることなく、思いっきり白湖に飛び込んだ。もし、誰かが釣りをしていたら、ブチ切れられていたことは間違いないだろう。
ただ泳いでいるのもつまらないと思い、恭弥は泳いでいる魚を追いかけながら泳ぐことにした。ネロも召喚して、一緒に泳ぐことにした。恭弥は、全然魚に追いつける気配がなかったが、ネロはスキルを持っていないくせに最初から速かった。恭弥は、謎の敗北感を味わっていた。1時間くらい泳ぎ続けていると
《スキル【遊泳(小)】を獲得しました。》
泳いでいる恭弥の頭に音声が響いた。その後は、まだ捕まえるまではいかないものの、格段に泳ぐスピードが上がったのを恭弥は感じていた。その頃、ネロは【遊泳(大)】を獲得していた。
(不公平じゃね?)
楽しそうに泳いでるネロに嫉妬の目線を送っていた恭弥は、負けまいとその後も泳ぎ続けた。そして、1時間後には(中)、2時間後には(大)にまで上がっていた。(大)とまでなると、スピードは地上と同じくらいで、本気で泳ぎ続けても1時間は息が続く様になっており、余裕で魚を捕まえることができる様になっていた。
本来、スキルは(大)が1番性能が良く、【遊泳(大)】を獲得した恭弥はそれ以上泳ぐ必要性はなかったのだが、水の中で自由自在に動けるのが楽しくなったのか、その後も泳ぎ続けていた。そして、泳ぎ終える頃には湖に生息していたほとんどの魚を捕獲できていた。
何十匹も捕まえた魚は、アイテムボックスに入れておけば、腐る心配はないのだが、恭弥は今すぐその魚を食べたくなり、焼いてみることにした。
恭弥が魔法を使ったのは、今回が2回目であった。普段の戦いでは全然使われないのに、料理で使われる魔法の気持ちを恭弥は一生知らないだろう。
恭弥は、傭兵時代に野営などが多々あったのでサバイバル飯は得意な方であった。魚を何匹か焼いていると
《スキル【調理(小)】を獲得しました。》
どうでもよさそうなスキルを得たという音声が頭に響いた。一応、確認してみると
【調理(小)】調理の技術に補正効果が入る。また、出来上がった料理を食べることで一日中、ステータスに少し補正効果が入る。
(何この意外と良さそうなスキル…)
基本、ソロの恭弥にとってバフ効果が得られるのは結構嬉しいことであった。味自体も確実に向上しており、ネロも美味しそうに食べていた。その日は、もうログアウトする時間だったので、バフは意味をなさなかったが。
翌日、智美をアインとエルに紹介し終わったので、智美より先にログインして、寄り道せずに真っ直ぐ[湖底の洞穴]に向かい、【調理(小)】を使用して、ネロと一緒に魚を食べてから中に入っていった。




