新たな冒険
「やるか、なんか久しぶりな気がするな」
「確かにね〜」
「じゃあ、行きますか」
「うん!」
明美も元気になり、普通に幼稚園へ通えるようになった。そして、恭弥と智美は久しぶりにアムシュタークへとログインした。
「クロミ、来たか」
恭弥達は、アムシュタークの電脳世界でまた顔を合わせた。
「見たか?俺たちがログインしてない間に新しい情報が出たっぽいぞ」
「えっ、なになに?まだ見てない!」
「やっと、あの空島に行けるっぽいぞ」
恭弥は、煙突の煙で覆われていた煙が晴れてから、全プレイヤーが気になっていたであろう、空に浮いている島々を指さした。
「お前が、なんだっけ?世界クエスト?をクリアして解放された所から、あの空島に行けるって」
「あのでかい煙突の所?」
「そうそう、早く行こうぜ」
恭弥と智美は、マップを確認しながら第2階層エンデルの中心にある大きな煙突に向かって歩き出した。
「思ったより、早く着いたな」
「ね、私の時はもっと時間がかかったと思うけど」
「マップが解放されたことで道順も変わったのかな」
「そうかもね。ほら、そんなことどうでもいいじゃん!早く行こ!」
智美は恭弥のスーツの裾を引っ張った。
「ここ、だな」
恭弥と智美は大きな煙突の前に立っていた。
「あっ!ここ、前来た時見た!」
「そうなのか?」
「うん!前来た時は開きそうになかったけど」
恭弥達の目の前にあるのは、智美が世界クエストで来た時に見つけた開閉口だった。そして、その扉は恭弥が手で触れるとガーーッと自動ドアのように開き始めた。
「わー…」
恭弥と智美は扉の奥へ入り、煙突の中を見回した。そこは、薄汚い第2階層や錆びれた煙突と反対に、白く綺麗に輝いていた。
「前に来た時、煙突から何も音がしなかったから、不思議に思ってたけど、やっぱり、煙突としては動いてなかったのね…」
「それにしてもなんだ?ここは」
「あっ!ここにボタンがあるよ」
智美は何も考えずにポチッとそのボタンを押した。
__ウィィーーーン
機械音が鳴り響き、恭弥と智美が立っている床が動き始めた。
「上に動いて、る?」
「そうみたいだな」
「なんかエレベーターみたい!」
「確かにな…」
床は機械音をたてながら、10数分動いていた。
「あっ、見て!天井がない!」
「本当だ、空にそのまま出るのかな」
そして、煙突の頂上に着いたらしく、パァーッと外の光が恭弥と智美の目に入ってきた。
「わ〜…雲の上だぁ…」
恭弥と智美は周りを見渡す。そこは煙突の天辺。恭弥達の下には、所々に白い雲が浮かんでいる。そして、横や上にはさっきまで見上げていたはずの無数の島々が浮かんでいた。
「すごい!私、こんな空まで来たの初めて!」
「俺もだ」
「あっ、見て見て!街があんなちっちゃい!」
智美は煙突から身を乗り出して、下を見下ろしながら興奮している様子である。
「おい、落ちるぞ」
恭弥はそんな智美を見て、呆れている様子だが、恭弥も周りに広がる絶景にテンションが上がっているらしく、顔が緩んでいる。
そんな2人の前に青いパネルがパッと現れた。
◇◆◇
ネームプレートを身に付けることで空を移動することができます。目印に従って、魔法の島“エデン”に向かってください。
◇◆◇
そして、恭弥達のいる場所から、真上に浮かんでいるエデンらしき島へと薄く白い光が道のようなものが出現した。
「ネームプレート?」
「あれじゃないか?第2階層に来た時に配布されたやつ」
「えーっと…」
恭弥はパッとアイテムボックスから取り出したが、智美はしばらく探していた。ちなみに、ネームプレートはウバドス大迷宮に入る為に必要なアイテムで、第2階層に来た全プレイヤーに配布されているアイテムである。智美はウバドス大迷宮に行くこともなかったので、存在を忘れていたのだ。
「あっ、これか!」
やっと見つけたらしく、智美はアイテムボックスからネームプレートを取り出した。
「クロミ、言ってたじゃん。なんでネームプレートはこんな形をしてるんだろうって」
「思い出した!そっか〜そういことだったんだ…」
智美はネームプレートを空にかざした。そのネームプレートは翼のような形をしていた。
「じゃあ、行くか」
「これ、落ちないよね?」
恭弥と智美はネームプレートを握りしめ、エデンへと伸びている白い光の上の空に足を伸ばした。すると、2人は落ちることなく、空中の上に立った、というより2人は空中に浮いていた。そして、2人は浮いたまま、エデンへと、白い光の上をふわふわと移動し始めた。
「わわっ…!本当に飛んでる!?」
「おお…」
空を飛ぶというゲーム内だからこそできる体験に智美はもちろんのこと、恭弥も感嘆の念をもらしていた。そんな不思議体験を数分間過ごし、恭弥と智美はとうとう新たなるエリア、エデンの地へと足を下ろした。そうして、恭弥達の新たな冒険が始まる。
もう100部分。




