人形回廊③
『さて、それはさて置き』
「「さておくなっ!?」」
ライオネルと名乗る不死の王は、光と真琴のツッコみをどこ吹く風と聞き流し、威圧感のある声で尋ねてきた。
『我が神聖なる墓所を荒らす者、そは何者ぞ?』
「「聞くのが遅いっ!!」」
『ごぶはっ!?』
光と真琴の二人にぶん殴られて、ライオネルはゴロゴロと床の上を、弾むように転げまわる。
『き、貴様らっ! 先程からこの死の王への畏怖の念が足りんのではないか!? 人を太鼓のようにポンポンと殴る蹴るしおってっ!!』
「いきなり出てきて、人のオッパイに文句つけるようなおバカは、殴られて当然でしょ!?」
『いや、むしろ貴様の場合、私を蹴っていたよな!?』
確かに蹴っていた。
「死霊なんて、素手で触りたくないもん。足で十分よ」
『差別だ! ハラスメントだ!!』
「あー、わかったわかった。俺達が悪かった。んで、とっとと話を進めるぞ」
『誰のせいで話が進まんと……っ! まぁいい。聞いてやろう』
光は仕切り直すように咳払いすると、未だ恐怖に震えているダルゴを指さし説明する。
「お前、自分の理想の嫁を作るために、こいつんちに協力頼んでおいて、報酬まだ払ってねーらしいじゃないか」
『うん? ドワーフから援助?? ……ああ、造形や機構関連で、確かにヌゥーザの一族の世話になったな。しかし、報酬は私が生前までなら有効だろうが、死後は無効となるのではないか?』
「んなわけあるか。こいつはそのヌゥーザの一族のもんでな。報酬が払えないなら、嫁人形をカタに持って帰ってこい、って言われて来てんだよ。俺達は縁があってその付き添い」
『ふむ、借金取りにその用心棒といったところか。気にいらんな。しかも借金のカタに我が愛する者を差し出せとはまこと非道』
なんだかこっちが悪徳の高利貸しみたいになっている。現在進行形で報酬を踏み倒す気満々の相手に言われたくなかった。
『ふん、興が冷めたわ』
言うだけ言うと、ライオネルはローブを翻し闇へと溶け込んでいった。
『それほど欲しくばこの回廊を突破し、我が花嫁の眠る場所まで来るがいい。そこで褒美として我が眷属に加えてやろうほどに』
つまりは、どの道生かして帰すつもりは無いと言うことか。
『私が精魂込めて作り上げた精鋭。死霊人形を相手にどれほど保つか。楽しみにしておるぞ。くくく……ははは!! はっ!? がはっげほっ! む、むせた』
最後の最後までしまらない、どこか抜けた感じの敵ではあったが、残していったモノは脅威であった。
死霊を宿した人形達が、その瞳を一斉に開いたのである。




