人形回廊①
「ここだな」
ダルゴは人形達の格納スペースを調べていた。
そしてある一カ所を押すと、そのスペースの一角に下に続く隠し階段を見付けたのである。
「さてこっからが本番ってところか。鬼が出るか蛇が出るか……」
「妙な人形は出たけどね」
光と真琴はお互い顔を見合わせ、気持ちを引き締める。
ダルゴとエルレインも同じ様だ。むしろこれからの人生がかかっている、ともなれば気合いの入り具合は光達以上だろう。
一行は決意も新たに、迷宮の深奥へと脚を踏み入れるのだった。
※※※※※※
「まるで回廊だな」
光が二層目の迷宮を一瞥した後に出た感想がこれだった。
今度はある種の規則性を持って建てられているようで、どこかで見た覚えがあるなと思ったら、以前真琴に連れられていった画廊に似ているのだ。
ただし、飾られているのは絵画ではでは無く、薄明かりに照らされた人形というのがまた不気味ではあったが。
「コレ全部、さっキの人形と、同じモノでしょウか?」
エルレインが声を震わせながら、眠れる人形を起こさないように、忍び足で歩いている。
そんな一行の中で平気な顔をしながら、先頭を切っているのはダルゴだった。
「んなビクビクするねぇい。オイラがついているんだからよ」
立ち塞がるものは全て叩き斬ってやるとばかり、鼻息も荒く恋人を励ましているが、反応はあまりかんばしいものでは無かった。
「ソウいうの、油断大敵言いマス。ソレより、しかりと仕事しテくだサイ」
「ちぇ、なんでぇ。折角励ましてやってるってのに。っと、罠か」
ダルゴは恋人の反応に不満らしい。ブツクサ言いながら罠を解除していく。
だがそれがいけなかったようだ。
カチリっと、聞こえてはいけない音がした。
「あ、ヤベぇ」
そういう暇があればこそ。天井からいきなり全裸の少女の上半身四体が逆さまになって現れ、手に持った短杖から魔力の塊を撃ってきた。
「今度は魔法特化型かっ!」
四方から放たれた攻撃に、真琴と光はそれぞれ魔法と盾、あるいは刀でそれを受ける。
だが止め損なった一撃が、光の太腿を貫いた。
「にゃろっ!」
痛みに耐えながら光は意識を太腿に集中させて抗魔を試みる。
すると光の槍が消え失せ、太腿には殆ど傷は残っていなかった。
やっぱりこいつらも、人形の姿をしたアンデットか。
そう判断した一行は先の戦闘の様に、エルレインの『解呪』と真琴の『悪霊祓い』を軸に攻撃をしかけ、しばしの死闘の後見事これを撃退するのだった。
※※※※※※
「それにしてもまぁ、悪趣味だよね」
戦闘後、憤懣やるかたなしとばかりに毒づいているのは真琴だった。
今一行のいる場所の天井から、人形達が力を失いダラリとその上半身がぶら下がっている。
あまりに精巧に出来てるので、まるで死体のようだ。見ていて気持ちの良いものではない。
悪趣味という真琴の感想は、一行全員共感出来るものだった。
「なんで女の子の人形ばっかで、しかもオッパイこんなに大きいのさ」
そっちかっ!!
男性陣は思わず内心でツッコんだが、確かに見てきた人形全て、豊乳・巨乳・魔乳の持ち主揃いであった。制作者の趣味嗜好がうかがえるというものである。
まぁ、乳に貴賎無しというし、他人の趣味をどうこう言うつもりも無い。
とは言え、ここまで豊かな双丘ばかりを見続けていると、ゲップが出そうだというのも本音である。
口直しにエルフ娘二人を見ようとしたら、なぜか胸を隠され睨み付けられた。
「なにやってんの。お前ら」
「どうせあたしはオッパイ小さいですよーだ」
べーと舌を出して拗ねる真琴を見て、そんなことは無い、と言ってやろうかと思った矢先のことだった。
それが現れたのは。
光はすぐさま腰の刀に手を伸ばしたが、ダルゴとエルレインは、アワアワと脅えるだけで何も出来ない。
真琴だけが気付いていなかった。
「な、なにさ。突然」
『──絶壁に価値なし』
「うひゃい!?」
いきなり背後から声が聞こえたので、真琴も遅れてそれを見る。
そして目を丸くすると、咄嗟に腰の聖刀に手を伸ばした。
そこには、古めかしいローブを身に纏った骸骨が、いつの間にか立っていた。




