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旅は道連れ世は情け③

「舐められたものだな」


 不服そうにそう呟いているのは、ハーフ・ウルク(オーク)の剣士だった。

 今でも憤懣やるかたなしといった風に、どんぐり眼でみつるを睨み付けている。

 もっとも光は決して舐めているわけでは無い。確かにゲーム的なレベルで言えば多分倍近く違うはずだ。だが敬太も言っていたように「使えるのと使いこなせるのとは別」で、今の光は技量・・と言う点で、この目の前の巨漢に遅れを取っている。

武技アーツ』の使い方は分かっていても、使いこなすまでには至っていないのだ。

 出来るのはいわゆる道場剣法の延長に過ぎない。

 それなのに何故──

 そう思った時だった。


「なんだ、その剣の持ち方は。まるで斬るつもりが無い(・・・・・・・・)ではないか」

 

 そう言うと、巨漢は大地を吹き飛ばして突き刺さった段平だんびらを引き抜いて再び構える。


「その見慣れぬ造りの片刃剣。どう考えても斬る(・・)ための剣だろうが。逆に構えているとは……まさか貴様、俺達を殺すつもりは無い(・・・・・・・・)、と? それが……っ!」


 再び巨漢の『武技』が炸裂する。


「舐めているというのだ!!」


 轟音すら伴うような一撃が光の頭上を襲う。

 光はとっさに刀をかざしてその一撃を食い止めようとするが──


「ぐぅっ!?」


 敵の膂力と剣圧の凄まじさに、力負けして膝を付く。


(こいつ……力だけなら俺より強い!?)


 今や岩をも砕く力を持つ光であるが、相手はそれ以上だった。恐らくこの技だけを磨きに磨いてきたのだろう。剣理けんのことわりに沿った一撃だ。


 ──本気でやらなければ、やられる。


 光は覚悟を決めた。刀を本来の持ち方に代えて、切っ先を巨漢に向ける。

 巨漢はそんな光を見て愉快そうに牙を向き出しにして、笑った。


「そうだ……その意気だ」


 そうして再び段平だんびらを振りかざす。

 一方で光は構えた刀を鞘に納め、腰だめに構えた。それを見て、巨漢が怪訝そうな顔をする。


「勝負を捨てた……わけではなさそうだな」


 巨漢は呼吸を整え、じわりじわりと間合いをつめてくる。光もまた呼吸を整え、間合いを計るように距離を縮めていった。

 そして互いが剣の間合いに入った時──


ふんっ!!」

「はっ!!」


 一刹那互いの剣が交錯する。

 するとギィイインっという鋼が軋む音が鳴り響いたかと思うと、


「何っ!?」


 巨漢の段平が斬られて(・・・・)いた。

 光は再び刀の向きを返すと、くん……っと膝を折り、そのバネを活かして高々と跳躍する。


「これで、終わりだ!!」


 光はそう叫ぶと、刀を空中で振りかぶり、がら空きになった巨漢の脳天に、その峰を叩き込まんとする。

 そこにいた誰もが、光の勝利を確信した。


 その時だった。


 空を駆けて襲いかかって来た、巨大な分銅と鎖が光の胴に炸裂し、肋骨が折れる嫌な音が響き渡った。

 どこからか真琴の悲鳴が聞こえて来た。光はともすれば手を離しそうになる意識を必死にたぐり寄せ、無理矢理な姿勢でなんとか着地する。そして息をつくのもやっと言う状態で、立ち上がろうとするが、脚が生まれたての子鹿のように震えて上手く立てない。

 それでも新たに攻撃をしかけて方向を見ることは出来た。

 そこには、巨漢の戦士とはまた別に牙を生やした長身巨躯の男が立っていた。手にはかなりの重さが有るであろう分銅をぶら下げた太い鎖を持ち、牙の生えた口元をニヤニヤと歪ませながら、その鎖を振り回している。


「油断だなぁ、この半端者」

「あ、兄者あにじゃ


 鎖を振り回している男は、巨漢の剣士より、より強くオーク鬼(ウルク)の特徴が出得ている。

 というより、オーク鬼そのままだった。


「て、テメェ……っ!」


 水を差された怒りに光は震えるが、「兄者」と呼ばれたオーク鬼はそんな光を嘲笑うように言葉を投げつける。


「おっとぉ、怒るのはスジ違いってぇモンだぜ? 誰が一対一(タイマン)なんて言ったよ? ええ?」


 そしてオーク鬼は巨漢の剣士に向かっても罵詈雑言を浴びせかける。


「やっぱり、人間の血が混じっているやつぁダメだな。真っ向勝負なんてきれい事まだ腹ン中にもってるようじゃ。勝負は勝ってナンボだっちゅうのに」


 やはり巨漢の剣士はハーフ・オークだったらしい。

 半端物扱いを受けた巨漢の剣士は返す言葉も無いとでも言いたげに、ただ項垂うなだれる。


「さて……顔はなかなか別嬪だが、お前、男だって? 流石の俺も男相手はなぁ」


 そうゲラゲラと笑ったかと思うと、


「ま、なら取り敢えず死んどけや」


 その醜い容貌からストンと感情が抜け、オーク鬼は死刑判決を下した。

 そして手に持った分銅を反動を付けて光の顔面に向かって放つ。

 そのまま当たれば、頭ごと消滅させかねない威力を持ったその一撃に、この美しい少年の無残な死を誰もが予測したその時、


聖盾プロテクションっ!!」


 光の前を遮るように、華奢な姿が盾を構えて割り込んで来た。そして盾と魔法の二つの防御力で重量の有る分銅の付いた鉄鎖の攻撃を防ぐ。


「先輩は、やらせない!」


 立ち向かったのは、ようやく傷付いた者の治癒を終えて、光の元に駆け付けた真琴であった。

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