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旅は道連れ世は情け①

「全く、何の騒ぎだったんだ。畜生」


 国王の前から辞して、いざ旅行たびゆかんと勇んで馬上の人となったみつる真琴まことであるが、それを待ち受けていたのは、王都上げての壮行会であった。

 第二次大戦中の戦地に向かう徴兵も、こんな気分だったのかのだろうかと、想像してなぜか陰鬱になる光である。

 まぁ実際は良くも悪くもそれ以上だったのだが。何せ近衛兵に囲まれて王都の出口まで一大パレードである。声援や花吹雪が舞う派手派手しさに、正直辟易していのた。

 門を潜り、一路街道に入ってようやく出てきた言葉がこれである。


「……それだけ、期待されているのでは」


 と、ボソリとたしなめたのは、ザクールという名の、暗殺者の一族の出という、隠密の剣士であった。今は二人の付添役として、先頭に立って道案内をしている。


「……それよりも少し急いだ方が、よろしいかと。次の宿場町まで、まだ距離があります。夕刻には到着しておきたい」

「いざとなったら、野宿でもして過ごせばいいんじゃねぇの?」

「……馬鹿を言わないで下さい」


 呑気な光の発言に、剣士がやはりボソリと、しかしピシャリと反論した。


「この辺りは魔物の数がそう多くは無い地域ではありますが、代わりに野盗などが出没します。それなりの戦力を持っていますので、神世の世界のあなた方でも苦労するかと」


 さらにどこか馬鹿にしたように言葉を続ける。


「……そんな相手にしても野宿をしたいと敢えておっしゃるならお止めはしませんが、巻き添えはごめんです。……真正面きっての戦いは不得手ですので」


 暗に「勝手にするならこちらも勝手にする」と言われて光は鼻白むが、言われている内容は至極真っ当なものなので、光はあえて反論はしなかった。

 それにしても、他に言い方は無いのかと、一言皮肉でも言おうとした、その時だった。

 急に剣士の歩みが止まり、その手で二人を制する。


「どうしたんです? 一体」

「なにかあったんですか?」


 光と真琴が尋ねると、ザクールは行き先に向かって指を刺し、ぼそりと言った。


「……野盗です。どうやら旅の者が襲われているようだ」

「ちょっ!? それっ、助けなきゃ!!」


 だが、慌てる真琴にザクールは何を言い出すのかと問いたげに言い返す。


「……助ける? なんのメリットが有って。我々には無関係です。幸いこちらには気づいていないようだ。このままやり過ごし……」


 だが、剣士はその言葉を最後まで言うことが出来なかった。

 光がいきなり馬を蹴って駆け出したのだ。

 これにはザクールもあっけに取られたようで、そのままの姿勢で固まっている。

 

「あー、まぁ先輩の事だから、こうなるとは思ってたのよね?」


 追い打ちをかけるように、真琴まで馬を駆って走り出す。


「ま、あたしとしても見過ごせないし。ザクールさんだっけ? 落ち着いたら後追ってきてね」


「じゃーねー」と語尾にハートマークでも付きそうな気楽さで、二人は修羅場へと向かっていった。


 後には、茫然とたたずむ剣士だけが残された。

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