始まりの話 (1)
はてさて、なんで俺がこんなことになってしまったのか。
理由を探るためにも少し昔の話をしよう。
あれは一年前のことだったか・・・いや、二年前のことこらのほうがいいかな?あー、でもそもそもは三年前の・・・?
・・・もうわからん。最初から話すわ。
転生、というものをご存じだろうか。
簡単にいえば死んだあと生まれ変わる的な概念のことなのですがまあその辺の認識はふわふわで良い。重要ではない。
そんなことを突然語りだしている平凡な俺は元日本人。気づいたらなんか地球ではない世界の農村に転生してしまったというわけです。今時珍しくもない話である。
ちなみにその事に気づいたのは俺がだいたい五歳くらいの時。
我がことながらちょっと気づくの遅いと思う。でもほら農村ってどこの世界でもやってること同じだろうし多少は許してほしい。
そんな農村生まれの俺であるが十五歳である今現在村から離れた森の中で一人で暮らしている。まさかの農業捨ててのサバイバル生活。文明退化してる気がしないでもない。
え?普通は現代知識で農地改革からの内政チート?はは、農業なんてやったことないので無理です。知識もないわ。そもそも作物とか地球のとは違うし。「なんか似てるけどなんか違う」レベルだけどよくわかんない。
というか普通に生きてて得られる知識なんて活用しようにもそういうのって周りの人にも教養があること前提なのが多いんだよね。
農民にそんな教養があるはずもなく、だから一人で出来ることほそぼそやってたら普通に奇人変人扱いでしたわ。
まあ俺としても知識レベルが違いすぎて他の人とは言葉を交わすことは出来ても会話ができないって感じだったから苦ではなかったけどね。
でもまあそれと俺が村から出た理由は関係なかったりする。
直接的な原因は・・・いくつかあるけど主な原因は閉鎖的な集落によくある謎に理不尽で厳しい上下関係がだいたいの理由だ。
具体的にいうと村長の息子がウザすぎてな・・・俗に言う勘違い系権力者みたいな。
いやーあまりにもうざいからびびらせてやろうとどっかで聞きかじった粉塵爆発的なトラップ仕掛けたら・・・うん、やっぱ聞きかじりの知識ってダメだね。思ったより爆発した。
奇跡的に死者は出なかったけど村長の息子は大怪我だし吹き飛んだ破片でも怪我人出たし、村の貯蓄もいくらか吹き飛んだし。これは被害甚大。てへぺろ!
まあそんな事件が起きて何もないというわけもなく、村の人たちも集会を開き犯人探しという名の責任の押し付け合いが始まったのであった。
だがしかし彼らに爆発の原因とかわかるはずもなく、そもそも人為的か自然現象なのかもわからず話し合いは難航した結果、最終的に俺が日常的に一人で怪しげなことしてたせいで不幸を村に呼び寄せてしまい起こった事故ということになった。
違う。いや結果的にはそうなんだけどそうじゃない。
実際には「よくわからんから村の変わり者に責任押し付けて解決しちゃえ」的な思考だろうけど。お茶濁しにも程がある。
それで真犯人当ててるんだからとんだミラクルだ。名探偵に謝れ。俺も謝るから。
とまあ、そんなこんなで俺は対外的には責任押し付けられて村を追放となったわけだがさすがにそんなふわふわした理由で追放となった俺に対して村の人たちは同情的だった。まあ俺のせいってことにしたのもこいつらだけど。
その罪悪感からかなのか生活用品とか狩猟道具とかいろいろ持たせてくれたのは幸いだろう。実際にはマジで犯人なわけだからその気遣いが心苦しかったけど。くれるから貰うけど。
そんなわけで俺は森で一人暮らしすることになったのである。
それはともかくこの森めっちゃ過ごしやすいんだけど。森の恵みが溢れんばかりにあっておいしい果物がたくさんなってるわ、川に簡単な罠投げ込めば楽に魚が数匹かかるわ、獣も警戒心が薄いのか比較的簡単に狩れるわでマジユートピア。元現代日本人として環境破壊しない程度にエンジョイさせてもらうつもりだ。
なんかここ禁忌の森とか言われてたけど際立って危ないこともないし、「森を荒らすな!」とか言ってくる森の番人的なのもいないし、好奇心に負けて来てよかった!
不満を言うなら暇潰しの手段に乏しいことだけどそんなの農村も同じだったし問題ではない。そもそも生きるために動いてればそこまで暇はできないしね。アニメとか見たい。
あとは・・・ここで暮らしてくならずっと独り身だってことだけど・・・現状はどうしようもないかな・・・。
まーそれ以外じゃ特に不満ないしここでの生活にも慣れたから現状維持でいいだろう。
とりあえず森ライフに飽きてから考えることにしよう。
これもプロローグの続きみたいなもの。
さらっと終わらせて本編に行きます。




