プロローグ
はて、どうしてこうなったのだろうか。
「我が国の姫への度重なる狼藉・・・もはや見過ごすことはできませぬ。この件は我が王に報告し然るべき対応を取らせていただきます」
「ま、待ってくれ! これは、なにかの間違いで・・・!」
突然だがうちの国がピンチです。なんか対応とやらいろいろ言ってるけど貿易を止めるとか言ってるからガチのピンチだと思う。
今ぶちきれてるのは隣国エストリアの使者で残念な言い訳を並べているのがこの国トルリトリスの若き王様である。悲しみ。
その辺の事情を話すには・・・ええとどこから話せばいいのか。
とりあえず簡単に事情説明するとトルリトリスとエストリアの関係は戦勝国と敗戦国。七十年ほど前当時悪の帝国ムーヴしてたエストリアと当時はまともだったトルリトリスの間でなんかドンぱちやったらしい。
そんで勝ったトルリトリスは監視のためにエストリアを属国にした・・・わけなんだけど、時の流れとは残酷なものでトルリトリスの上層部は堕落と腐敗を繰り返し、エストリアに対してもただの搾取先としか扱わなくなった。
だけれども一方まともになったエストリアが真面目に努力を続けた結果、ここ数年ですっかり国力は逆転。調子のってたこの国は手痛いしっぺ返しを受けることになりましたとさ、というわけである。
ちなみにエストリアがブチキレるほどやらかした内容というのは名目勉強実質人質としてトルリトリスに来た隣国のお姫さまに対して不当な扱いをしたというものだよ!救いがないね!
実際嫌がらせがてら世話役として任命された俺がいろいろ手を回さなければお付きの侍女どころか日々の食事だって提供されたか怪しいところだ。これはひどい。
ていうかもう男である俺をお姫さまの世話役にするって時点でどうかしてる。嫌がらせにだって最低限のモラルとかはあると思うんだけども。
そんなわけでエストリアげきおこでトルリトリスは今さら一生懸命謝るという現状が生まれたわけである。自業自得とはこのことよ。
え?なんで俺はそんな余裕なんだって?
いやまあそりゃ俺は従者として頑張ってお姫さま支えた側だからね。国はともかく俺や友達たちはそこまで悪いことにはならんでしょ。
そんな感じで余裕ぶっこいてたからなのかこの後の展開なんぞまったく予想なんてしていなかった。
「そこまでにしましょう」
凛とした声が響いた。
その声の主の名はフィオラ・リリエホルム・エストリア。そう、彼女こそが件のお姫さまである。俺たちは姫様って呼んでいた。
その言葉にうちの王様は目を輝かせ、エストリアの使者はわずかに不満げな顔をした。
「しかし姫様」
「いいのよ、メラルダン。 それにね・・・」
フィオラ様が使者(メラルダンって名前らしい)になにか耳打ちすると使者は少し不思議そうな顔をしたものの頷いた。
「ひとまず条件付きではありますが今すぐ貿易の停止は取り止めにします。姫の温情に感謝することです」
「あ、ああ・・・それは願ってもいないことだが。 それで、その条件とは・・・?」
その問いには姫様が答えた。
「この国で暮らした二年、その間私の従者であった彼を我が国に連れていかせてもらいます」
「えっ」
姫様の言葉にこの場にいる全員が俺を見る。
えっ、ちょま、なにゆえに!?まって!俺なにも聞いてない!
そんな疑問を込めた視線を向けた俺に向かって姫様はウインクした。
いやそうじゃなくて説明。説明をしてください。
書けたらUPする感じでいくので基本短めです。




