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37《幕間》ギヨームは見た①
ギヨームのお話です。
王子ディディエは部屋を出て行くアニエスとリュシアンの背を無言で見送り、ふたりの姿が完全に見えなくなると、近くの椅子に座った。
「執事。もうよい、下がれ」
王子の言葉に我が家の執事は一礼をして、俺をちらりと見てから部屋を出て行った。
王子は目を閉じた。
声を掛けるべきか否か。恐らく彼は今、あまり良い気分ではないだろう。
だが長く悩む前に、彼は目を開けた。
「腹が立つ。人には口うるさいくせに。必ず美味しいところを持っていくしな」
クレール、ジスラン、エルネストは視線を交わした。
「私に協力をしないか? このままでは埒が明かない」
ディディエはそう言って俺のことも、振り仰ぐ。
「ギヨームも私側に付け。でなければ泣くことになるぞ」




