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体育祭を楽しもう 3

 次は真希の番だ。

 鏑木先輩からの声援を聞いた途端、スピードを上げる真希は見ていて楽しかった。

 いやー、真希って自分の恋愛の事になると本当面白い。

 真希の親衛隊なんて、真希を見てキャーキャーいっていた。

 真希は自覚あるのだろうか……、鏑木先輩と付き合いだしてからタチ共のファンが増えた事を。

 「そういえば、真希ってー、次の借り物競走にも出るんだっけ?」

 「うん、確かそういってたよ」

 真希がゴールしているのを見ながら、俺と隗は会話を交わす。

 うちの学園の借り物競走は結構な確立で人を借りる場合が多い。

 何でも伝統なんだとか。

 「借り物競走は、渕上君と真希と小長井先輩もこれか…」

 「あと、真希の恋人もでしょー。理人は生徒会親衛隊のトップだし、応援しなきゃな人いっぱいいそうだね」

 「うん。いるよ。あ、和志先輩もこれ出るっぽい」

 「あー。あのわけのわからないこといってる人かぁ」

 「ま……き、も、に…よう、なこ、と……い、ってる」

 隗と会話を交わしていれば、安住君がそう言いながら話に入ってくる。

 うん、真希と和志先輩は確かに同類だ。

 「借り物競走かぁ…。見るの楽しそうだよね」

 「うん。面白い借り物あればいいよね」

 「ま……き、の、おう、え、す、……る」

 俺の言葉に頷く隗と安住君。

 「菅崎様、頑張ってください!!」

 声を上げるのは真希の親衛隊の面々。

 テントの下から、グランドに立つ真希に声援を上げている。

 それにしても、借り物競走か。真希はどんなものを引くんだろうか?

 「ま……がん、ば!」

 安住君は必死に声をあげている。安住君、真希に懐いているもんね。

 開始の合図がなり、真希が走り出す。

 借り物の書かれた紙は、箱の中に詰められている。どんなものを借りることになるかは運である。

 運動神経抜群な真希は一気に一位で駆けだし、そして、箱の中へと手をつっこむ。

 そして、一枚の紙を取り出し、それを開ける。

 ――そうして、その瞬間、真希が一瞬口元を緩めたのを俺は見逃さなかった。

 「何か、いいもの引いたっぽいね、真希」

 「鏑木先輩かな? 恋人とか書いてあったとか」

 何て思ってたのに、真希は鏑木先輩の方には向かわずに何故かこっちに向かっていた。

 本当に、何を引いたんだ?

 「理人!!」

 しかも、俺の名を呼ぶ真希。

 「俺が借り物? ちょっと見せて」

 走ってこっちまでやってきた真希の手から紙を奪って俺はそれを覗き込む。

 紙に書かれていた言葉を見て、俺も先ほどの真希同様、口元を緩めた。

 「…確かに、俺にぴったり」

 「だろ、速くいこう、理人!」

 「でもちょっと待って、隗!」

 俺は、せかす真希に一言いって、隣にいる隗の名を呼ぶ。

 「ん、なぁに?」

 「隗もおいで。借り物にぴったりだから」

 「え、僕も?」

 「うん、だからいこう」

 俺がそういって笑えば、隗は面白そうに笑って立ち上がる。

 「うん、面白そうだからいーよ」

 そうして、俺と隗は生徒会専用のテントから出て、真希と共に駆けだした。

 俺も隗も真希も足は速い方だし、一気に駆け抜けた。

 もちろん、一着でゴール。

 到着してすぐ、係の生徒が借り物があっているか確認するために真希から紙をうけとる。

 俺の隣に立つ隗は、「ねぇ、借り物って何だったのー?」と見せていないために不思議そうな顔をしている。

 『えーと、菅崎様の借り物は、”秘密を抱えている人”でした』

 そう、紙に書かれていたのは、そんな言葉だった。

 司会者の言葉に、隗の目が大きく見開かれて、そうして次の瞬間、口元を緩めて隗は俺の方を見た。

 俺はそんな隗に対して頷きながら、言葉を放つ。

 「ぴったりでしょ、俺と隗に」

 それは、バラしちゃおうよというお誘い。

 どーせなら、行事のさいにバラした方がきっと楽しいでしょ?とでも言う風に俺は隗を見た。

 隗はそんな俺の考えがわかったのが、笑う。

 それは、演技中の可愛らしい笑みとは違った、素の隗の笑み。

 『えーっと、あってるかどうか確認をしたいのですが、秘密とは何なのでしょうか…?』

 司会者の男が、俺達を見据えて、いう。

 借り物競走は、その借り物にあっているかどうかちゃんと確認しなければならない。

 ――真希が本当にそれを借りて来たかという事で、秘密をバラさなければならない。

 どっちにしろ、俺は近いうちにバラするつもりだったし、隗もバラそうかなっていってたから丁度良いのだ。

 「ちょっとマイク貸して」

 ああ、楽しみだな、バラしたらどんな反応をするんだろう。

 そんな風に思いながら、司会の子からマイクを受け取り、俺はそれを隗の前へと差し出す。

 隗も、笑みを顔に張り付けたまま受け取って、口元にマイクをやった。

 周りが俺と隗に注目している。隣に立つ真希がわくわくしたように俺を見ている。


 『えーっと、じゃあまず僕からだねー。

 秘密はねー。

 俺が、性格を偽ってる事』

 演じた笑みを浮かべた後に、素の隗が姿を現す。

 隗の言葉に、周りが驚いたように固まっているのがわかる。

 ああ、本当面白い。隗の演技を隗の素だっておもいこんでた面々からすれば驚いて仕方のない事なんだろう。

 「隗、貸して」

 「ああ。理人の秘密楽しみだ」

 そういって、笑って、隗はマイクを渡してくる。

 俺と隗は似ている。

 きっと、隗も楽しんでいる。

 『じゃあ、次俺の番ね。

 佐原って名字、母親側の旧姓なんだよね。

 本名は、龍宮理人っていいます』

 スピーカーから響いた声。漏れた音。

 それに対し、周りがシンと一瞬静まり返る。だけど、次の瞬間それは驚きの声に変わった。

 「えぇええ!? 隗様の素でもびっくりなのに…」

 「りゅ、龍宮って、理事長の!?」

 「麻理先生と関係あんの?」

 「理人様、本当ですか!?」

 「隗様、かっこいい…」

 本当、周りの本能が面白くて、口元が緩む。

 ふと、隣を見れば、隗も少し驚いた顔をして俺を見ていた。

 「そういえば、あの害虫の時理事長と知り合いっていってたもんな。親族か?」

 「そ、俺は龍宮家三男だから、渉兄の弟だよ」

 「それにしても文化祭の時といいばらしちゃっていいのか?」

 「うん。ちょっと翔兄の当主就任パーティーに俺出席したい理由があるから、バラしとこうと思って」

 にっこりと笑って、俺はそんな言葉を放つ。

 「マジ? 当主就任パーティー行くのか? 理人がいんなら、楽しそうだな」

 「ふふ、隗も来るの?」

 「ああ。つか生徒会の奴らはみんな呼ばれるんじゃねーの?」

 俺と隗はのんびりと会話を交わす。

 周りが驚愕の表情を見せている中で、俺達は笑い合う。

 「この状況で普通に会話を交わしてるあたり流石隗と理人だよな」

 真希は何だか愉快そうに隣で笑っているし、借り物があたっているか確認していた生徒なんて固まっている。

 驚いて固まっているのも面白いけど、体育祭中断はちょっといやなんだよね。

俺行事とか大好きだし。

 『固まってる連中、正気に戻ってくれない?

 ちなみに俺は龍宮家の三男だから、これからパーティーとかで会う事あるかもね?』

 マイクを手にして、俺はそういって笑って、係の生徒の方を見て言う。

 「借り物は”秘密を抱えてる人”だから、俺と隗ぴったりでしょ? さっさと借り物はあってるっていってくれない?

 体育祭進まないからさ」

 『え、えっと、確かに”秘密を抱えている人”に該当しますので、菅崎様はお題クリアです』

 そんな声を聞いて、俺は満足気に頷いて、真希と隗の方を見る。

 「じゃあ、俺テント戻るね」

 「じゃ、俺も」

 「俺は美乃君所行く」

 真希は鏑木先輩の所に行くようだから、そのまま真希と別れて俺と隗は生徒会役員のテントに向かう。

 向かってる最中も周りがちらちらとこちらを見たり、指さしてきたりして、何だか面白くて笑ってしまった。

 「それにしても、理人ってやっぱおもしれーわ」

 「ん? 何が?」

 「だって、俺に許可もとらずにつれだすんだからなー?」

 「いやー、だって隗がこんな面白い事に乗らないわけないじゃん? それに近いうちにばらすのもいいかもっていってたでしょ。

 俺のと隗の、二つ同時にばらしたら楽しいでしょ?」

 「まぁな」

 隗は特に怒ったようなそぶりも見せずに、面白そうに笑った。

 「さ、佐原理人…」

 「会長、さっきの聞いてたんですよね? 俺は佐原ではなく、龍宮です」

 テントに戻った俺と隗。

 何故か、龍宮理人だってバラした後にも佐原とよんでくる会長に向かって俺は言い放つ。

 「…りゅう、ぐ、りひ……なあ、りゅうぐ、みや…の兄?」

 安住君は安住君で、俺の隣に立って、そんな事を問いかけてきている。

 「うん。都は俺の弟だよ」

 椅子に腰かけて、グランドに視線を向けながらも俺は声だけで答える。

 「さ……龍宮理人。貴様は龍宮家だったのだな」

 「うわ、佐原って言いそうになってましたね。ダサイですね。会長。

 そして、さっきから俺は龍宮家だっていってるでしょう?」

 「理人、会長何て放っておいて観戦しようぜ。次、螢が走るんだ」

 「ああ、そうだね。会長の事より、渕上君応援しなきゃね」

 「…ふた……、かい、ちょ…かわいそ…」

 俺と隗が会長を放置して、グランドを見始めていれば、安住君は言葉を放って、哀れんだ目で会長を見ていた。

 グランドでは渕上君が、スタート地点に立っている。

 ピストルの合図がなって、渕上君は駆けだした。

 「そういえば、隗」

 「ん?」

 「渕上君に合わせて走ってたなら、バラしたんだし、もう本気で走るの?」

 「そうだな、そうするかな。思いっきり走ったらすっきりしそうだしな」

 渕上君が走り出すのが、視界に映る。

 流石、『ブレイク』の幹部だけあって、渕上君は速い。

 一気に駆けだした渕上君は、借り物の書かれた紙を手に取った。

 「螢、一生懸命走っててなんか可愛い」

 「隗って本当ブラコンだよねぇ。わざわざそのために性格偽ってたとか徹底的すぎ」

 「うぅ…何故、龍宮理人は俺様に…」

 「……かい、ちょ、げんき、だして」

 それにしても安住君って会長を慰めてて、いい子だよね、本当。

 渕上君は、紙の中身を見ると真っすぐにこちらにやってくる。

 借り物なんだったんだろう、なんて思っていれば、渕上君は生徒会役員のテントまで来ると、ガシッと隗の腕を掴んだ。

 「螢、借り物俺?」

 「うん。だから僕と一緒に来て」

 「螢の頼みなら喜んで」

 何て書いてあったんだろうね。隗が借り物って。

 それにしても本当隗って、渕上君大好きだよねー。

 今も凄い笑顔浮かべて一緒にいっちゃったし。

 あ、隗が本気で走ってるから渕上君がついていけてない。

 何て思ってたら、

 「……わー、お姫様だっこ?」

 速く走るためか隗は自分より少し背が低いだけの渕上君をお姫様だっこして抱え出してしまった。

 渕上君をさっと抱えちゃうあたり、流石だよね。

 本当、隗って面白いよなぁと思う。

 隗の腕の中で、渕上君がはずかしそうにしてるのに構わず全力疾走してるっていう。

 「隗様が、お姫様だっこしてる…」

 「螢様かわいい……」

 「渕上兄が、渕上弟をお姫様だっこか、やべ、萌える。夏美に報告しなきゃ」

 「隗様かっこいいですー!!」

 さっきので、隗の本性しって少し混乱しているようだけど、隗って生徒会に入るぐらい人気だし、やっぱり騒がれている。

 そして、隗はそのまま渕上君をお姫様だっこしたまま、一気に駆け抜けてゴールする。

 『え、っと、隗様を螢様は借りてきたわけですが、螢様の借り物はなんだったのでしょうか。では、確認させていただきます』

 マイクを持った生徒は、お姫様だっこをした隗に戸惑っていたようだが、そういって未だに腕の中に居る渕上君から紙を受け取る。

 お姫様だっこがはずかしいのかちょっと文句をいっている渕上君を、隗は地面に下ろすのが視界に映る。

 『借り物は、”家族”でした。確かに正解ですね』

 うわ、家族って…、体育祭に誰かが来てるとか、一緒の学園に兄弟が通ってるとかじゃなきゃ無理じゃない?

 「おひ…め、だ、っこ…びっく、した」

 「んー、安住君びっくりしたの?」

 「ん…。それ、に、して…も、か、いはや、い」

 「まぁ、今まで手加減してたらしいからねぇ」

 安住君に返事を返しながら、隗の方を見ると、渕上君と一緒にこちらに歩いてきていた。

 「もう、隗ってばお姫様だっこなんてはずかしい!!」

 「いいじゃん。螢に合わせて走るよりこっちのが速かっただろ?」

 「でも…、僕びっくりしたんだよ?」

 そんな、隗と渕上君の会話が聞こえてくる。

 そりゃ、そうだよね。

 突然、お姫様だっこなんてされたらびっくりするよね?

 でも俺お姫様だっこなら男だしするなら抱える方がいいなぁ。お姫様だっこされるとかいやだし。

 「隗、お疲れ。突然お姫様だっこするなんて面白かったよ」

 「…ん、隗、はや、かった」

 「……隗があんなに速いなんて」

 あ、会長がなんかショック受けてる。

 負けるかもとでも思ったのかもしれない。

 まぁ、本気出したら隗って会長に勝てる気がするよ、少なくとも俺は。

 だって、何か隗は会長と違って余裕あるし。

 どんどん、色々な人が走って行って、次に走るのは鏑木先輩になった。

 「真希の恋人だな」

 「だよね。恋人とか引いたらべたで面白いのに。絶対真希の反応が面白いよ」

 「真希って自分の恋愛に関してはなんかすぐ照れるよな」

 「だよねー。そういえば隗ってお付き合いしたことあるの?」

 「いや? 経験は結構あるつもりだけど、付き合った奴はいねぇな」

 「へぇ」

 隗って結構遊んでたのかね?

 そういえば、都も結構気に入ったら女でも男でも食っちゃってるらしいからなぁ。

 可愛い都の顔に騙されて近づいてきて逆に…ってのもたまにあるらしい。 

 『クラッシュ』で可愛がられてる立場なのに、可愛い顔に反してタチでそういうのが流石俺の弟って感じ。

 鏑木先輩が走り出す。

 風紀の一員だけあって、やっぱり運動神経は良い。

 一気に駆け抜け、紙をとる。

 とったらすぐに真っすぐ真希の元に向かったから、多分恋人か好きな人とでも書いてあったんじゃないかな?

 手を繋いで一緒に駆ける、鏑木先輩と真希。

 真希は嬉しそうっていうか、人前で手を繋いでるのがはずかしいらしくそういう表情を浮かべている。

 「わー、隗。あれってさ。真希の親衛隊にタチ増えそうじゃない?」

 「確かにな。あの風紀と付き合いだして真希ってネコ要素があらわになってるし」

 「だよねー」

 それにしても最後までやっちゃってるのに、あのくらいで照れるなんて面白いよね、真希って。

 そして、もちろん、一位でゴールを果たす。

 『えーっと、借り物は”一番大切な人”でした』

 確認のために紙を開いてそんな声が響けば、真希の顔がぼっと赤くなった。

 「タチ共が真希を見ているな」

 「だねぇ。それにしても顔真っ赤で面白いんだけど。真希ってば本当自分の事になると駄目だよね」

 顔を真っ赤にした真希は、何だかタチ共に欲に満ちた目で見られていた。

 まぁ、鏑木先輩がそいつら睨みつけてたけど。

 「真希、襲われたりしないかな? 大丈夫かな…?」

 「ん…け、い。ま、きつよ、からき、っとだい、じょぶ」

 すぐ隣では、渕上君と安住君がそんな会話を交わしている。

 「俺様の一番大事な人はさは…いやりゅうぐ――」

 「……うわ、何気持ち悪いこといおうとしてるんですか?」

 「理人ばっさりいっててやっぱ、お前って面白いよなぁ。まぁ、確かに一番大切とか恋人でもない癖に言うとかキモイけど」

 「隗も、佐原…いや龍宮も可哀相だよ?」

 それにしても会長ってば、俺に気持ち悪いこと言うのよしてほしいよね?

 そういうのは愛ちゃんとかにいってくれればいいのに

 「あ、渕上君。呼びにくいなら下の名前で呼んでもいいよ?俺別に渕上君の事嫌いじゃないし」

 「え…んー、じゃあ、僕の事も螢って呼んで?」

 一瞬渕上君が固まったのに苦笑を浮かべてしまう。

 まぁ、渕上君って俺が容赦なくしすぎるから顔引きつってたもんね。

 でも渕上君の事は別に嫌いじゃないしねー、俺は。

 「……お、れ、も、い?」

 「うん。いいよ、安住君も」

 「お、れ、もゆ、づ、おっけ」

 「うん、じゃあそう呼ぶ」

 安住君もいい子だよねー。会長の事心配してたし。

 結構親衛隊の子に無害だったしね、あの毛玉君の時より前から。

 「りゅ、龍宮理人、なら俺様も――」

 「何言ってるんですか? 俺は螢と由月にはいいと言いましたけど、会長にいいなんて一言も言ってないでしょう?

 会長に名前を呼ばれるとか気持ち悪くて吐きます」

 「ふはっ、やべぇ。会長すげぇ泣きそうな顔してんだけど。それなのに理人容赦ねぇし」

 「次は小長井先輩か…」

 「あの人って、理人にフラグ立ってる気がする」

 「あー、初対面で俺の笑顔に顔赤くしてたからそういう節ある」

 「文化祭で千尋に風紀委員長何か言われてたっぽいしな」

 「あー、そうなの? 千尋ってそう言う事よくするからなぁ」

 のんびりと椅子に腰かけて、グランドに視線を向けながら話す。

 千尋って本当俺の事好きって感じがある人には色々言うからね。

 「って…、あの、隗も理人も会長放置…? 可哀相だよ?」

 「………っ」

 「かい…ちょ、な、き、そ」

 泣きそうな会長と、俺と隗を見つめて何かいっている螢と由月。

 そもそも会長もなれればいいのにね? 俺ずっとこんな態度なのに一々へこんでるのが情けないよね。

 視界の中で、小長井先輩が一気に駆けだすのが映る。

 「おー、流石速い」

 「ま、風紀委員長が運動とか喧嘩できなきゃやってらんねぇしな、この学園」

 「あ、何か紙見て小長井先輩固まってる」

 「理人の方一回みたな。『気になる人』とでも書いてあったんじゃね?」

 「もし本当にそうだったとしても小長井先輩は借りないでしょ、俺の事」

 「え、借りたら面白そうなのに。理人断るんだろ、言われても」

 「当たり前じゃん。俺付き合うならかわいー子がいい」

 「はは、そうなったら公開告白に公開失恋になんのかよ。かなり面白そうなんだけど。風紀委員長理人の事かりにこねぇかな」

 「隗って本当いい性格してるよねぇ」

 借り物の紙を持って固まっている小長井先輩を見ながらそんな会話を交わす。

 それにしても俺小長井先輩にフラグたってんのかね?

 まぁ、立ってても断るけど。

  でもたってたらめんどくさいなぁ…。

 別に俺男侍らして喜ぶような趣味ないしねぇ。

 葉月、会長、千尋……もしかしたら小長井先輩もかぁ。

 んー、いっそのこと誰か面白そうな人と付き合ってあしらうか?

 というか、会長に好かれてても嬉しくもなんともないしね。

 さっさと愛ちゃんとかに落ちちゃえばいいのに。

 結局小長井先輩は固まったまま、何も借りられないでびりだった。

 足は凄く速いのに…借り物競走って面白いよね。

 そうして、借り物競走が終わって、お昼休みに突入する。



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