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85日目 大改築~アナタのためのリフォーム作業~

85日目


 ギルの腕が妙に硬質化している。この程度じゃ何も感じなくなってきたことが虚しい。


 ギルを叩き起こし、食堂へ。休日だからか人も少なく、なかなか快適な気分。朝っぱらからピーピー鳴くヒナと執拗に俺のケツをくちばしで突いてくる親鳥がいなければ最高だっただろう。フィルラドのヤツ、みんなに迷惑かかるかもしれないから朝一番にこの食堂に来たんだって。俺ももうちょっと時間をずらせばよかった。


 朝食はなんとなく鶏がらスープをチョイス。朝からちょっと重いけど実に美味。ギルはジャガイモの大皿を『うめえうめえ!』って喰ってた。『このスープはどうだ?』と一口やったら、やっぱり『うめえうめえ!』って言ってた。途端にヒナと親鳥がぴたりと静かになったのが面白い。


 で、その後フィルラドから今後の見通しについての計画書を受け取る。住処に関してはクラスのみんなに土下座してクラスルームの隅に使い魔(注:魔法使いのペットはすべて使い魔と呼ぶようです)専用スペースを確保し、学校の許可を取って外にも飼育小屋を作るとのこと。また、クラスルームの方にはロフトちっくなスペースも合わせて作り、面積の問題を解消すると書いてあった。


 『これだけやれば問題ないだろ?』とあいつは自慢げだったが、そこに掛かるコストや人手のことを考えていないあたりまだまだだ。マデラさんにこんな具体的計画性のないものを提出したらケツビンタじゃすまない。宿屋の息子として、この案を飲むわけにはいかない。


 が、ロフトという言葉はなかなかに魅力。俺、実は結構憧れている。


 少なくとも外の飼育小屋の件は問題無さそう。無駄にスペースあるし。みんなの許可も取れるだろうから純粋に金と資材と人手が問題になってくる。


 餌に関しては『俺の食費を詰めて、休日はずっと狩りをする』と具体性や計画性はないもののなかなかの本気具合。ハゲプリンも我慢するし、贅沢は一切しないし、所有物も全部処分して少しでも食費の足しにするそうだ。


 その熱意を見込んで許可をやる。その瞬間のフィルラドの喜びようが凄まじかった。冷やかしに来たラフォイドルに休日限定のレアードゼリーをあげちゃったくらい。


 で、さっそく作業に入る。わが友人たちはこんなときでもしっかり動いてくれるからうれしい。


 フィルラド、アルテアちゃんには事務処理面での諸々の手続きを頼む。アイツを責任者にしておかないと何かあった時に大変だ。あと、アルテアちゃんは気高くてまじめだから書類処理や保証人的な信頼なんかもばっちりだと勝手に思っている。


 ポポルとパレッタちゃんにはクラスルームにおいてある水槽や虫かごの一時的な退避をお願いする。特にヴィヴィディナの虫かごはパレッタちゃんにしか手におえないし。それと、フィルラドの次に生き物に懐かれているのがポポルだからいろいろ楽なんだよね。アイツの場合、生き物にさえ子ども扱いされているだけだと思うけど。


 重要なのはギルとジオルド。ギルは力仕事に必要不可欠だし、ジオルドの大工仕事の能力はすさまじいものがある。クーラスのデザイン能力とジオルドの実力でロフトや飼育小屋の設計をする傍ら、ギルにはいつぞやのカミシノ板材やクラス資金で買った(あとでフィルラドに材料費の二割を負担してもらう)木材のカット、あと廃材やいらないものの解体を任せた。


 『脆ぇ脆ぇ!』とかいってバキベキってグラベロ材木をぶっ壊していくギルが超怖い。あれ、化けイノシシの体当たりでも傷一つつかないって触れこみなのに。


 俺はロザリィちゃん、ミーシャちゃんと共に畑に行きギル・ポテトを植える。恐ろしいことにギル・ポテトを植えた瞬間にミーシャちゃんのリボンが共鳴し、水魔法要素が強化され、リボンから水が噴き出た。


 その水を受けたギル・ポテトは共鳴を何十倍にも加速させ、なんか身の危険を感じるレベルで活性化した。で、あっという間に畑一面がギル・ポテトで埋まった。


 さらに恐ろしいことに、ミーシャちゃんの意思とは無関係に彼女の部分変化魔法が発動し、ミーシャちゃんの腕となぜか高次魔法的要素を伴って自在変化が可能となったリボンが一体化した。んで、一体化したリボンがうねうね動いてあっという間にすべてのギル・ポテトを収穫してしまった。


 リボンにこんな恐怖を覚えたのは生まれて初めて。ケラケラ笑っていられるミーシャちゃんも怖い。でも、ぽかーんって口を開いてびっくりしているロザリィちゃんがマジプリティでした。


 クラスルームに戻ったら、すでに設計と材木の切り出しが終わり、ロフトと飼育スペースの建築作業に入ってた。相変わらずジオルドのこの手の仕事の速さはすばらしい。アイツ一人でギル十人分の働きをしているんだもん。いや、ギルはバカだから百人いてもジオルドと同じ仕事はできない。力仕事なら別だけど。


 ある程度みんなで作業したところで切り上げる。全体的な完成度は五割ってところ。明日一日あればなんとかなるだろう。


 そうそう、俺はいまこの日記をフィルラドとポポルの部屋で書いている。なんと、フィルラドのヤツが『俺は命を賭ける。だから今晩はギルと寝かせてくれ』とか言って半ば無理やり交換お泊りさせられたんだよね。


 コーンの粒を手に持ってたから、きっとそういうことなんだろう。なんだかんだであいつもギルの使い方を知っていたらしい。まぁ、ある意味じゃ当然か。


 その無謀ともいえる行動にクラスの誰もが感心し、そしてやめろと叫んだけどフィルラドは聞かなかった。俺の寝室に消えていく際の、あんなに男らしい背中を俺は見たことがない。


 浮気の弁明のために激昂するナターシャの部屋に背筋を伸ばして向かうヴァルヴァレッドのおっさんくらい男らしかった。次点でグレイベル先生。


 まぁ、あいつが何と言おうと餌問題の解決のためにギルと寝てもらうのは確定だったんだけどね。説得する手間が省けてラッキーだった。


 なお、フィルラドとポポルの部屋には玩具と鉱石コレクション、あとぬいぐるみが溢れていた。机のがたつきは微妙。一か所だけ、壁の妙な位置に貫通痕があるのが気になる。穴開けてそのまんまとか、マジ信じられない。


 ポポルは歯ぎしりをしながら寝ている。ヤツの腹の上ではヒナと親鳥がスヤスヤしている。どちらもギルのイビキに比べれば屁でもない。そういや、あれだけ爆音なのに隣の部屋に全然ギルのイビキが聞こえてこないのはどうしてだろうか?


 今日はスッキリと寝られそう。フィルラドが無事に朝日を拝めることを割とガチで心から祈る。おやすみねうち。

20150815 誤字修正

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