73日目 基礎魔法概論:魔法刃の構成材料について
73日目
ギルの鼻息が荒い。いつもと大して変わらなくね?
微妙に気分がスッキリしない。体調が悪いってわけじゃないけど、なんかヘン。風邪ではないので普通にギルを叩き起こして食堂へ。
朝食はハムと茹で卵を選択。茹で卵を三等分くらいにスライスしてハムでくるむのがなかなかおいしい。ただ、ギルの鼻息が荒いせいでハムがひらひらしてなかなか巻けなかった。イラッとしたので丁重にハムを串刺しにし、ひらひらできないようにして食べた。
そんなギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。あと、ミーシャちゃんがジャガイモをいっこくすねて自分のリボンにあてがってた。途端に発色の良くなるリボンが限りなく不気味。ジャガイモのほうは吸血鬼にやられたかのように萎びてた。あのリボンどうなってんだ?
若干寝不足っぽい感じのロザリィちゃんがマジプリティ。『ふぁ~……』って欠伸をする仕草にキュンとする。夜更かしでもしていたのだろうか?
本日の授業はシューン先生の基礎魔法概論。相も変わらずローブはズボンにイン。いっそズボンのほうをずり降ろすべきなのかもしれない。今度ギルにやらせてみよう。
内容は裂造における魔法刃の構成材料について。実戦的な魔法陣における裂造では概念上の魔力的魔法刃を使うんだけど、魔道具加工や研究用のいわゆる研究・実験用で裂造する場合は、その精度や自由度の観点から魔法的物質を用いた魔法刃を使う。
で、今回はそれに用いられる材料の説明だった。以下にメモの一部を示す。
・高速度魔鋼
通称ハイスマ。いろんな種類があり耐魔性や被裂造性に優れるものがある。高魔度処理を施して作られることが多く、処理後の魔硬そのものは他の材料と大差ないが、刃先がかなりの高魔度でも耐えられるという特徴がある。そのため、通常材料の二倍以上の速度で裂造を行うことが可能である。
・超硬魔合金
その名の通り非常に魔硬が高く、高魔度においてもその低下は低いため、ほとんどの条件下において使用することができる。難裂材や非魔法材への高能率裂造にも広く使われ、最もメジャーでポピュラーな材料と言える。反面、裂造そのものにスマートさがないため魔塵が癒着しやすく、術者の腕が如実に表れる素材でもある。
・ダイヤモンド
宝石としても名高いがその魔法的要素も非常に魅力的であり、裂造に扱われる。物理的に硬く、高い魔伝導率を誇り、負荷魔力による膨張も極めて小さいため、精密加工が可能で非常に使いやすい。しかし、一部極めて反応性の高い材料があるほか、単純にコスト面でのパフォーマンスの悪さ、およびダイヤモンドそのものの別の魔法的有用性から使われることは少ない。
シューン先生にどうして高速度魔鋼をハイスマって呼ぶのか聞いたら、『ハイスピードマジックスチールを略すとハイスマだからだ』って言われた。略すにしてもセンスがなさすぎると思う。まだハスマのほうがマシじゃね? 最初にネーミングした人はマジどうかしていると思う。
他にもいろんな材料の説明をしてくれたけど、友情の想縫針に勝てそうな材料は見つからず。全ての素材のいいところだけを抜き出した理想の材料があったとしてもあれには到底及ばないだろう。もしかしたら本当にすごいものを作ってしまったのかもしれない。
ちなみに、魔系用語の中にはこの手のくだらねえセンスの単語がいっぱいあるらしい。先生自身もなんでそう呼ばれているのかわからない単語がいくつもあるそうだ。魔系ってクレイジーな人間が多いし、深く考えないほうがいいのかもしれない。
ギルのヤツ、珍しくまともにノートを取っていると思ったらダイヤモンドとジャガイモの換算式を書いていやがった。こぶし大のダイヤ一個でジャガイモ百個分とか、あいつの頭の中はどうなっているんだろうか?
で、夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。クラスルームで雑談しているとき、ふと思い立ってロッキングチェアを独占していたらポポルに『なんか調子悪い?』って聞かれた。
自覚はないけど、おそらくロザリィちゃん成分が不足しているからだと思う。『調子悪いから貴様のハゲプリンをよこせ』って言ったら、ハゲプリン……が入ってた容器だけ渡された。
さすがにブチ切れたのでジャガイモを背中にぶち込み、『ギル・ハグの刑』に処した。なんかボキボキ言ってたけど俺の知ったこっちゃない。
ギルのイビキはやっぱりうるさい。最近妙にナイーブと言うか、寂しいっていうか、夜になるとなんか変な気分になる。これがホームシックってやつだろうか。
ポケットに授業で見せてもらった高速度魔鋼の欠片があったのでギルの鼻に詰めた。おやすミートパイ。




