339日目 ロリコンとマセガキ
339日目
開始早々これか……と思ったけど、これくらいならソフトのほうだとも感じてしまう自分が怖い。……なーんか微妙に視線を感じるような?
とりあえず反射的にギルを起こして食堂へ。結構早い時間だけど、こいつは殊更に大喰らいだからきっちり手伝わせないと宿屋的に結構問題がある。というか、俺の仕事が増えて大変なことになる。
マデラさんに指示を聞いたところ、『今日は朝の支度だけで休んでよろしい』とのこと。いい加減曜日感覚がなくなりつつあるけど、ちょっとした休日もどきみたいなものだろう。マデラさんも甘くなったものだと思う。
で、大量のジャガイモの皮むきだけしてみんなが起きるまで食堂で待つ。あ、ギルは半分寝ていたけど、筋肉コピーでジャガイモの皮を剥きまくっていたよ。
そして久しぶりにみんなで朝食。『やっぱこっちのほうが落ち着くな!』とギルも上機嫌。『実家だとパパもママもうるさいの!』ってミーシャちゃんはリボンを巧みに操って食器を扱う。
もちろん、『うめえうめえ!』って聞きなれたフレーズが俺の耳をついた。マデラさんの料理ならわかるけど、残念ながらそれはギルが持ってきたジャガイモをただ蒸かしただけのものである。量だけはあったけど。
そうそう、ちゃっぴぃに『あーん♪』ってやってたら、なんかリアがもじもじして俺の隣に来た。なんだ、こいつも『あーん♪』してほしいのかと思いきや、『そうじゃないの!』と逆切れされる。
こんな理不尽ってあるか……と首を捻っていたところ、『き、昨日はよく眠れましたかっ?』ってリアはクーラスに真っ赤になりながら微笑みかけた。で、『わ、私がベッドメイキングしたんですけど、お、お嫁さんとして十分な実力だと思いますかっ?』って一息で言い切った。
みんな食べ物吹いた。クラスメイトはもちろん、いつもの冒険者の連中も、新規の客も、とにかく食堂にいた連中みんなだ。
吹かなかったのは、顔面蒼白のクーラスと、『キィィィサァァァマァァァッ!?』ってガチギレするアレクシスと、『あらあらあら! まぁまぁまぁ!』って体をくねらせるアレットと、そして『なんか昔どこかで見た光景だねぇ……』って達観するマデラさんだけだ。
どうやらクーラス、リアに懐かれてしまったらしい。そんな接点なかったと思うけど、一体いつのまにリアのハートを射止めてしまったのだろうか。あいつやっぱりロリコンの才能があるんじゃね?
クーラス、『き、気持ちはうれしいけど、ちょっと恋するには早いんじゃないかな?』ってさりげなく諭す。が、リアは『そんなことないもん! ロザリィおねーちゃんが「運命の相手は見た瞬間にわかるよ! 私はそうだったもん!」って教えてくれたもん!』と言い返す。
『嘘だろぉ……っ!?』って泣きそうになりながらロザリィちゃんを見るクーラス。『てへっ☆』って感じでロザリィちゃんは目を逸らし、俺の後ろに隠れた。そんなところがマジプリティ。
アレクシスはブチギレしていて今にもクーラスをぶん殴りかねない状態であった。アレットがガチガチに固めていなければ、大変なことになっていただろう。
もちろん、こんな面白いことを放っておく冒険者たちじゃない。テッドは『お似合いじゃねえか! 今のうちに自分好みの女にしちゃえよ!』って煽り、ヴァルヴァレッドのおっさんは『愛に歳の差など関係ない……そうだろ?』って煽り、ルフ老は『幼女の愛こそ純粋で無垢。それが我が身に向けられたものではないとはいえ、今はただ、人生の先達として純粋に祝福しよう』と煽り、アレットは『真面目そうだし、副組長なんでしょ? あなたらなら任せられるわ!』って一人で盛り上がっていた。
もうどうすればいいのかわからないクーラスは、涙目でジオルドを見る。ジオルド、『……裏切者がッ!』って杖を向けた。幼女とはいえプロポーズされたクーラスを許せないらしい。
『こんなのカウントに入らねえだろうが!』ってクーラスが騒いだけど、その瞬間に『ウチのリアを”こんなの”扱いするんじゃねぇぇっ!』ってアレクシスの変幻自在の剛弓がクーラスの面前に迫る。
が、『未来の息子になにするの!?』ってアレットが隠し持っていた二本目の蛇鞭でそれをからめとった。宿屋で武器を抜くとか、この夫婦は何を考えているのだろうか。
結局、マデラさんが冒険者に雷を落とすことで事態は収束。騒いだ連中は罰として一日お手伝いを言い渡されていた。おかげで俺の仕事がめっちゃ減って超ハッピー。
なお、マデラさんは『そういうのはもっといい女になってから考えな。このお兄ちゃんにだって都合ってもんがある。自分の意見だけを押し付けるようじゃあ、いい女とは言えないねぇ』ってリアを諭していた。リアのやつ、超笑顔で『いい女になる!』って宣言していた。
……なんかちょっとイラつくけど、まあ、どうせリアもすぐにクーラスのことなんて忘れるだろう。
あと、ミニリカは『あれよりもっと情熱的なプロポーズをしてきたくせに、今はぞんざいな扱いしかしないやつがおってのう……』、ナターシャは『そのうち粗大ごみ扱いしだすわよ。経験者が言うんだから間違いない。いずれ別の恋人を連れてくるから』ってアレクシスをなだめていた。
いや、なだめるふりをして俺をからかっていた。『え゛っ……』ってみんな(リア含む)にドン引きされた恨み、絶対に忘れない。
どうやら、新しいネタであるならば、例の秘密の魔法は発動しないらしい。時間を見つけて奴らの弱みを探そうと思う。
だいぶグダグダしているけど、こんなもんにしておこう。どうせ仕事はいつも通りで書くことが無いし。
さて、いつも通りギルは大きなイビキをかいて寝ている……んだけど、なーんかずっと誰かに見られているような気がするんだよね。気のせいにしては妙に違和感が強いし、一体なんだろう? 俺の夢魔のぬいぐるみかもって最初は思ったけど、あれちゃっぴぃにとられて女子部屋にあるし。
まあいいや。さっさと寝よう。後、面倒くさいから明日から仕事内容はガッツリ端折って行こうと思う。そんなことよりも友達のこととかのほうが書いていて楽しいし、もうノルマとか関係ないからね。
ギルの鼻にはチットゥのポケットに入っていた薬草(?)を詰めてみた。みすやお。
20160308 誤字修正
例によって例のごとく、完全再現ではありません。実際はもっと不規則、かつ滑らかに動いておりました。




