32日目 触媒反応学:連結魔法陣のパラメータ計算
32日目
ギルの鼻から霧が噴出していた。部屋の中が真っ白。
朝食で優雅にグラスでブドウジュースを飲む。二重の意味でもくもくと霧を排出するギルが隣にいるからなんとなく大魔王の気分を味わえた。ポポルとミーシャちゃんがその濃く白い霧を袋に集め、アエルノチュッチュの連中のほうにぶちまけていた。
あと、霧をぱたぱたして遊ぶロザリィちゃんが超キュート。俺にもぱたぱたしてほしい。
授業はヨキの触媒反応学。この授業ほど名前詐欺な授業を俺は知らない。もう魔法計算学でいいんじゃね? って思った。
『なんか煙いなぁ』って言いながらヨキは教室に入ってきたけど、一番前の席で半裸で筋肉を見せびらかすギルを見て無言で窓を開けた。で、風の魔法陣を作って当たり前のように授業を始めた。ちょっとヨキを尊敬する。ちなみに風の魔法陣は円型構造の撃造だった。安心な長持ち設計。さすが教師。
今日の問題は『同一魔力、同一断面積を持つ三つの魔法陣が左右対称にロテル点で結合された三連結魔法陣がある。ロテル点に浸食魔力ノルンが与えられたとき、各魔法陣に負荷される核魔力、およびロテル点の魔深の変化を求めよ。なお、三つの魔法陣は互いに干渉しあうものとする』ってやつ。
ロテル点っていうのはファンクションパターンの一つでこの手の連結魔法陣で魔法陣同士の回転を可能とさせるものらしい。魔強度は低くて崩壊の起点になることも多いって話だけど。
んでもって、初の触媒反応学らしい問題だった。やる内容は今までと大して変わらないように思えるけど、触媒同士が引き起こす挙動を求めるって意味ではコンセプトに合ってる。今までやってきたことと内容がつながるってなんか気分がいい。
計算そのものはいつもとあんまり変わらないけど考え方がだいぶ複雑になってきた。計算過程はここに書くと大変なことになるのでノートの真ん中よりちょっと前くらいのページを参考すること。
さっさと計算を終わらせたらヨキに『キミはいっつも余裕だね~♪』って絡まれた。『ギルを教えなきゃいけないので全然余裕じゃないです』って返したら『それについては教師として大変申し訳なく思う』って真面目に返された。なんか怖い。
今日はジオルドが演算魔法触媒の操作をミスして最初からやり直しになっていた。俺、大きくなったら誰もが使いやすい演算魔法陣触媒を開発するんだ……。
風呂の後、クラスルームで雑談してたら湯上りのパレッタちゃんが文字通りポポルの腕に噛みついていた。不思議系だけどおとなしい子だと思っていたのにどうしたのかと聞いてみたら、ポポルのヤツがパレッタちゃんが風呂上がりに食べようと取っておいたおやつのプリンを食べてしまったらしい。
ポポル曰く、『保冷庫にあったからギルのだと思った』のだそうだ。たしかに保冷庫にはクラスのものが入るから食べられてしまっても文句は言えない。でも、あそこってムーンフィッシュの内臓とかマジックバタフライ用の生餌(要冷蔵)だとか、そんなゲテモノばかりが入っていて異臭を放っていたと思う。隠し場所には最適だけど、食物を置く場所ではない。食物じゃなくても置いておきたくない。
そこに隠したパレッタちゃんもそんなところにあったプリンを食べたポポルもだいぶクレイジーだと思う。あとギルはそもそも『取っておく』発想がないから食べ物を隠すことなんてしない。逆に目につく食べ物は片っ端から食べる。こないだだってエンゼルフィンの水槽に落ちてた(?)ジャガイモを『うめえうめえ!』って食ってた。
ジオルドとアルテアちゃんに引き離されたパレッタちゃんが『おいしいプリンを食べさせてもらうまでハゲになる呪いを毎晩かけ続ける』とポポルを脅した。ポポルがマジで涙目になって縋ってきたのでなんとかしてあげることになってしまった。
能天気にイビキをかく友人が今日もうらめしい。アステト魔鉱石を鼻に詰めた。




