267日目 アフタークリスマス
267日目
ギルのおひげがもっこもこ。手触りだけは素晴らしいから困ったものである。
昨日割と遅くまで起きていたため、ちょっとゆっくりめな起床。起床後はいつも通りギルを起こして食堂に行く。やはりどのクラスも昨日はどんちゃん騒ぎをしていたのか、休日ってことを差し引いても人がいない。
おばちゃんは『朝食抜くのは良くないんだけどねぇ……』って嘆きながらもみんなの朝飯を作っていた。思えば、おばちゃんっていつ休んでいるんだろう。毎日毎日俺たちのご飯を作ってくれることに感謝を隠せない。
ので、『一日遅いですけど、メリークリスマスです』と食後のデザートにこっそり食べようと思っていたガチハゲプリン(魔材研が納品した材料で作ったやつをひそかにとっておいたもの)をおばちゃんに渡しておいた。
おばちゃん、『うれしいことしてくれるじゃないか!』ってにっこり笑ってくれた。マダムは趣味じゃないけど、たまにはいいこともしてみるものである。いつもお疲れ様です。
もちろん、ギルは『うめえうめえ!』とジャガイモを楽しんでいた。『クリスマス明けのジャガイモもまた格別だよな!』って言ってたけど、ジャガイモにクリスマスは関係ないと思う。
午前中はやる気がなかったため、クラスルームでゴロゴロと過ごす。薪の在庫が少々心もとなかったものの、ギルが『筋トレのついでに運んでおくぜ!』と言ってくれたので特に問題なし。ミーシャちゃんに貰ったのか、ギルは呪の腕輪(たぶん重枷の呪)を付けていた。それでなお普通に動けるからすごいものである。
さて、なんだかんだでグダグダしていたらウサギのぬいぐるみを抱えたちゃっぴぃがロザリィちゃんとともにやってきた。寝起きのロザリィちゃんはやっぱりプリティなんだけど、昨日いろいろあったからか、俺を見るなりかぁって赤くなってテレテレし出した。
そんな姿を見たらもう、俺だって冷静じゃいられない。なんかこっちも顔が熱くなって、もう何度も見ているというのに、ロザリィちゃんの顔を直視することができない。
『お、おはよう……!』って悪夢椅子に座ってくれて、その左手の指にあの指輪があるのを見たとき、なんかもう我慢できなくなって抱きしめてしまった。『おこちゃまなんだから♪』って頭をポンポンしてくれるロザリィちゃんがマジプリティだった。
なお、クラスルームで編み物&工作をしていたクーラスとジオルドがいつもより激しい舌打ちをしていた。なんでもあいつら、パーティが終わるまでは女子たちともそれなりに仲良く遊んでいたらしいんだけど、そのあとは特に何事もなかったそうな。
午後もグダグダ。ロザリィちゃんと背中合わせになりながら、本を読んだりヒナたちと戯れたりちゃっぴぃと遊んだくらい。今日は薬剤調合もなにもかもやる気が起きなかった。
そうそう、フィルラドとアルテアちゃんが妙に仲良さげにカードゲームに興じていた。アルテアちゃんはこの手の駆け引きは苦手らしく、割と負けていたけど、その割にはなーんか妙にニコニコしている。いったい昨日二人に何があったのだろうか?
おやつの時間ごろになって、ようやくポポルがパレッタちゃんと一緒にクラスルームにやってきた。見るからにヤバそげにげっそりとやつれ、目の下にはクマができている。対するパレッタちゃんはなんか肌がツヤツヤしてすごい機嫌がいい。
『こんな時間までいったい何をしていたんだ?』って聞いたら、ヤバそげに笑ったポポルが『あレからズッと狂キ悶えエるヴィヴぃでィナ感しゃ祭でフィーばーシてゴザいましタ』って答えやがった。三歩引いた俺を誰か許してほしい。
『昨夜の宴は最高じゃったのう……!』とはパレッタちゃん。どうやら彼女のリクエストにより、活性状態のヴィヴィディナが蠢く密室でひたすら二人でヴィヴィディナと触れ合っていたらしい。まあ、明日には元に戻ることだろう。
どうやら、なんだかんだで俺たちがデートしている間にほかの連中も楽しんでいたようだ。クーラスやジオルドといった一部の連中が親の仇を見るかのように睨んできたけど、まあ、つまりはそういうことなんだろう。
ギルでさえミーシャちゃんとともにクラスルームでジャガイモデート(ひたすらにミーシャちゃんがジャガイモを食べさせまくっていたらしい)をしていたというのだから、ある意味じゃしょうがないのかもしれない。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。珍しく今日は何事もない平和な一日だった。ステラ先生が来なかったのは残念だけど、一体今日は何をしていたのだろう? ちょう気になる。
ギルはジャガイモのズタ袋を抱きしめてスヤスヤと眠っている。ちょいと寝不足気味だから、今日は俺もさっさと寝よう。鼻には虹の氷を詰めてみた。おやすみなさい。




