256日目 発展魔法生物学:三の悪魔の生態について
256日目
俺の髪の毛超ロン毛。これはイメチェンするしかない。
ギルを起こし、とりあえず紐で髪をくくってから食堂へ。俺の美しいロン毛に皆が見とれ、ささっと道を空けてくれて超いい気分。後ろから従者のようについてくるギルがポージングをしまくってたけど、あれ、いったい何のつもりだったんだろう?
食堂にて食後のコーヒーを楽しんでいたら、ロザリィちゃんがすっげぇキラキラした目でこちらを見てきた。いつも以上にプリティで思わず照れる。『すっごくうずうずするの……!』とのことだったので、『俺はロザリィちゃんのものだから、ロザリィちゃんの好きにしていいよ』とほほ笑んでおいた。『全力出しちゃうんだから!』って小悪魔的にほほ笑む姿が最高だった。
で、されるがままに髪を触らせたら、いつのまにか三つ編みおさげのイケメンがそこにいた。しかもロザリィちゃん、『私も三つ編みにしてっ♪』とグシグシと頭を押しつけてきた。ちょういい匂い。すんげえ可愛い。全力で三つ編みにした。
せっかくなのでちゃっぴぃも三つ編みにしてやり、三人そろってこないだのコサージュを(ロザリィちゃんはデートの時の髪飾りも)つけた。ちゃっぴぃは『きゅーっ♪』と実に嬉しそう。
なお、俺たちがイチャイチャしている間、ギルは『うめえうめえ!』とジャガイモを喰っていた。あいつの髪がもっとあったら三つ編みにしてやったのに。
さて、ここまで来たらあとはもう突き進むしかない。ミーシャちゃんは『たまには三つ編みもいいの』って三つ編みにし、アルテアちゃんも『編むの面倒なんだよな』ヒナたちをうまく使って三つ編みにしてた。パレッタちゃんに至ってはヴィヴィディナを使って『三つ編みの概念をぶっ壊す』って何とも呪われた感じの三つ編みに仕上げていた。
そのほかの女子も三つ編み。男子もギルに命じて羽交い絞めさせ、俺直々に三つ編みにしてやった。見栄えが悪いしそもそも三つ編み出来るほど長さのあるやつってあんまりいなかったけど、こういうのは一体感が大事なのだ。
そうそう、クーラスが『ぜってぇやるもんか!』って暴れたから結構派手に髪をブチってしちゃったけど、俺悪くないよね?
今日の授業は天使ピアナ先生とイケメングレイベル先生の発展魔法生物学。先生たち、三つ編みな俺たちを見て『…楽しそうだな』、『先生も三つ編みにしちゃおうかなっ!』と自分たちも三つ編みにしてくれた。
グレイベル先生は三つ編みってよりかは髪をねじっただけに近かったけど、そのノリの良さがマジ最高。クーラスも見習うべきだと思う。
さて、肝心の内容だけど、今日は三の悪魔について学んだ。こいつ、一応は普通の悪魔っぽい感じなんだけど、何とも奇妙で恐ろしい魔法的特性を持っている。以下にその概要を示す。
・三の悪魔は特殊な能力を持った悪魔である。彼らはある一つの対象に対し、三回までしか干渉することを許されていない。逆に、我々魔法使いも、三の悪魔に関しては三回しか干渉することができない。単純に三以上の数字を知らないだけと言う噂も。
・その性質上、三の悪魔は群れを作らず、常に孤独に生きる。また、あらゆる行動に全力を尽くすほか、【全てを三回以内に決着させる】ための非常に高い実力を持つ。飽きっぽくて三回までしか集中力が続かないという噂も。
・三の悪魔に対して三回以上の干渉を行った後も干渉しようとすると、どれだけ意志を込めても干渉できないうえ、三日以内に三回不幸なことが起こる。大好きな三を超えようとした恨みが呪いと化したという噂も。
・三の悪魔に対処する際は、先に相手に三回行動させるか、または頭数を揃えてこちらの干渉回数を増やすとよい。稀に仲間を呼ばれることがあるが、この段階で仲間に対し一度の干渉をしたことになるほか、我々にはわからないルールの元で干渉をカウントすることがあるので、必ずしも不利と言うわけではない。三匹以上の仲間を見るとパニックになるという噂も。
・魔物は敵。慈悲はない。
なんかまたよくわからんけど、とにかく互いに三回しか干渉できないらしい。『…俺はこいつを拘束、管理と二回ほど干渉したから、あと一回しか干渉できない』、『先生は万が一を考えて後二回干渉できるけど、みんなも十分気を付けてね!』と先生たちが宣言し、俺たちも実際触れてみることになった。
とりあえず、ポポルが『ホントに三回でダメなのかな?』と三の悪魔に脇腹くすぐり、足裏こちょこちょ、往復ビンタ……をやろうとしたところで動きが止まる。奴のくすぐりにより笑い転げていた三の悪魔の動きも止まった。
どうやら、『ダメなのかな?』という一言が問いかけという干渉とみなされたらしい。『なんか、ビンタしたいのに体が動かない!』ってポポルが叫んだ瞬間、『アアアアア!』って三の悪魔がポポルをぶん殴る。
ポポル、『ふぎゃあああ!?』って面白いように吹っ飛んでいった。。ジオルドが受け止めてなかったら、あいつたぶん三の悪魔に骨の三本は折られていたと思う。
さすがにみんなに緊張が走り、三の悪魔に対して集中攻撃が浴びせられる。しかし、途中で『やられた!』、『杖があがらない!』と声が上がる。どうやら干渉回数を使い切ってしまったらしい。三の悪魔、こちらにまるで反応しないで一人でニヤって笑ってた。マジむかつく。
で、いろいろ観察した結果。一回の行動とみなせる範囲なら長時間でも干渉できるらしいってことが分かった。アルテアちゃんの射撃魔法だと三発でダメになるんだけど、ギルが『手間取らせるなよな!』って羽交い絞めした時は『ギャァァァ!』ってずっとそのまま羽交い絞めされていたし。
あともう一つすごいこと気づいた。クーラスに軽めの時限式風罠魔法陣を設置してもらい、俺が三の悪魔と無関係のところに魔法を放ったんだけど、罠魔法によってそらされた魔法攻撃は俺の干渉として認識されなかった。
つまり、わざとじゃないなら問題なし。クラスの三つ編みが燃え上がった瞬間だ。
『さっきはよくもやってくれたな!』ってポポルは三の悪魔……を拘束しているギルに向かって連射魔法をめっちゃ連射しまくる。ギルは『もっともっと!』と筋肉でそれを弾く。弾かれたそれは偶然にも三の悪魔に。『ギャァァァァ!?』って三の悪魔は尋常じゃない悲鳴を上げていた。
結局、『いじめ、よくない』とピアナ先生が止めるまで俺たちは三の悪魔の限界を学術的な興味に基づき調べまくった。三の悪魔とかいう割には結構ルールはガバガバっぽい。俺レベルになると無意識を意識することで三の悪魔を三つ編みに出来た。わざとじゃないってホントいい言葉だと思う。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、『今だけ──くんは五歳の女の子ね!』とロザリィちゃんが俺の濡れた髪をとかしてくれた。ロザリィちゃん、お姉ちゃんしかいないから、弟か妹がほしかったらしい。
お姉ちゃんぶりたいロザリィちゃんが可愛すぎてつい『おねーちゃん♪』って呼んじゃったけど、しょうがないよね。風呂上りロザリィちゃんに濡れた髪をとかしてもらうとか、最高すぎて言葉にできない。
あと、ボソッと『恋人で妹って……うへへ♪』って聞こえたけど、なんだかんだでロザリィちゃんってレベル高いと思う。そんなところが最高にかわいいんだけどな!
ギルは今日も大きなイビキをかいている。なんか三って書きすぎたせいか文章にまとまりがない感じがする。今日はもうさっさと寝よう。
ギルの鼻には三の悪魔の三重三角角を詰めてみた。授業中に切り取ってちょろまかしたやつだけど、無意識で自然に(わざとじゃなく)ちょろまかしたから干渉のうちに入らないらしい。テッドから教わった技術に今だけは感謝する。




