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212日目 ゆっくり休んでくださいね(記:ステラ)

212日目


 あつい。くらくらする。あとぎるのてがまっか?






(ここからは丁寧な可愛らしい文字で書かれていました)






 ──くんへ。いつもお疲れ様です。ちょっと変則的だとは思いますが、せっかく続いている日記なので、今日は先生が──くんの代わりに日記を書こうと思います。ちょっとヘンかもしれないけど、そこは大目に見てくれるとうれしいな。


 今日は中間試験の打ち上げの日でした。先生もちょっと早めに起きて準備を手伝おうとしていたんだけど、いきなりどんどんどん! って部屋の扉が叩かれて驚きました。


 扉の先にいたのはクーラスくんとアルテアちゃん。『──が熱で倒れました!』って言ってくるからすっごくびっくりしちゃったな。今まで一回もこんな風に呼び出されたことってなかったし。


 慌てて──くんの部屋に行くと、そこにはおろおろするロザリィちゃんと、不安そうな顔をしているちゃっぴぃちゃんと、ちょっと……その、なんていえばいいのかわからいない顔をしているみんなと、『やめろよ親友ッ!』って体を張るギルくんと、『いいからさっさとそこをどけ。邪魔をするならお前からプリンにしてやるぞ』って怖い顔して唸る──くんがいました。


 たぶん、その時の記憶はないだろうけど、──くんの顔は真っ赤で、息も荒いし、見るからに熱にうなされてフラフラしていたんだよ?


 なのに、『打ち上げの料理の準備をするんだ。何度も言わせるな』って厨房に行こうとするんだもん。しかも、いつもはあんなに明るくて優しい感じなのに、あの時はすっごく怖い顔して殺気もダダ漏れで、先生もちょっと怖かったかな。


 みんなの話を聞いて分かったんだけど、──くん、熱が出ているのに無意識で準備をしようとしていたみたい。足元も覚束ないからみんなが止めたらしいんだけど、意識が朦朧としているからか、杖を抜いて攻撃しようとしてきたんだって。だから、ギルくんがなんとか押さえようとしていたって。


 ──くんが頑張り屋なのは知ってるけど、あそこまでして責任を果たす必要はないからね? 熱を出した時くらい、ゆっくり休んでもいいんだよ?


 しばらく小競り合いみたいなのが続いていたんだけど、フィルラドくんとポポルくんがドクター・チートフルを呼んできてくれて、ドクターが──くんに風邪薬を噴霧してくれたの。よく効く薬だったのかな、──くんはその場でぱたんって倒れて眠りだしたんだ。


 ドクターは『季節の変わり目だし、疲労もたたって熱を出したんだろう。薬を与えてぐっすり眠らせればすぐによくなる』って言ってたよ。


 ──くん、やっぱりちょっと無理していたんだね。こないだもずっとお菓子を作っていたし、気づいてあげられなくてごめんね。


 で、とりあえずこのお部屋に運んでもらって、看病することになったの。ロザリィちゃんとちゃっぴぃちゃんがずっと付き添ってくれてたから、元気になったらちゃんとお礼を言っとこうね? あ、それとも恋人だから言わなくても通じるのかな?


 そうそう、打ち上げはまた今度にしようってことになったから。さすがに──くんがいないのに騒ぐわけにはいかないしね。アエルノチュッチュとの決闘が終わったらパーッと騒ごうよ。


 ちゃんと食材とかは先生が本気出して魔導封印を施しておいたから安心してね!


 覚えてるかどうかわからないけど、──くんはお昼頃に一回目を覚ましたよ。さっきとは違って、先生を見るなり泣き出すからちょっと焦っちゃった。


 風邪の時は不安な気持ちになるし、別に恥ずかしいことじゃないからね?


 先生ね、──くんって大人っぽくってクールだと思ってたけど、ちゃんと子供らしいところもあって安心したよ。わんわん泣きながら抱き付いてくるところとか、ちょっと可愛いって思っちゃった。あと、ロザリィちゃんの手を離そうとしないところも昔のピアナ先生にそっくりだったかな。


 ええと、お昼ご飯はリンゴとアルジーロオレンジとミルクとお薬ね。ホントはギルくんがジャガイモを差し入れてくれたんだけど、まだ食欲が無さそうだから気持ちだけ受け取っておくってことにしちゃった。


 ──くん、ナターシャさんかミニリカさんにやってもらってたのかなぁ? 『グリフィンさんのリンゴじゃなきゃやだぁ……!』って言うから先生もロザリィちゃんもちょっと困っちゃったよ。あ、別に迷惑って意味じゃないからね?


 ただ、先生はグリフィンさんにリンゴを切るのは出来なくて……。お母さんもおばさんもできたんだけどね……。頑張んないといけないなぁ……。


 結局、ジオルドくんがグリフィンさんにリンゴを切ってくれたよ。『別に──のためじゃない、ちょっとナイフを使いたかっただけだ』って照れるところが可愛かった! あとでお礼を言っておこうね。


 あ、安心してね? 『あーん♪』ってやったのはロザリィちゃんだから。というか、──くん、先生かロザリィちゃん、あとちゃっぴぃちゃんからしか物を食べようとしなかったんだよね。


 泣き疲れちゃったのかな、そのあとも──くんはぐっすりしてたよ。ロザリィちゃんもずっと──くんの手を握ってあげていたし、ギルくんも『親友が良くなるように祈りのスクワットする!』って励んでいたかな。ほかのみんなもすっごく──くんのことを心配していたんだから。


 時折お水を飲みに起きたくらいでほかに特筆することはないかな。顔色も少しずつ良くなっていて、夕方ごろにまたちょっと熱がぶり返していたけど、朝に比べるとすっごく楽そうな表情をしていたから。


 ええと、夕ご飯食べてお風呂入って雑談して今に至る……で、いいのかな? ──くんはちょっと食欲が出てきたみたいだから、夕ご飯は軽めのドリアにしてもらったよ。クーラスくんたちが買ってきてたエビを使ったやつで、すっごくおいしそうに食べていたっけ。


 あと、蜂蜜たっぷりのミルクとデザートにハートフルピーチも。お薬もちゃんと飲んでたから安心してね。


 そうそう、お風呂に入れるわけにはいかなかったけど、さすがに汗をかいてそのままにするわけにもいかなかったから、蒸らしたタオルで体を拭いておきました。下着は下の棚のやつを使ったけど大丈夫かな? ロザリィちゃんとギルくんが手伝ってくれたから別に大変じゃなかったよ。


 それと、『何かあった時のために今晩は一緒にいます!』ってロザリィちゃんがきかなかったから、ギルくんがロザリィちゃんのベッドをこっちに持ってきてくれたの。ギルくん、すっごい力持ちだよね。


 あ、ちなみにギルくんはポポルくんたちと一緒に(男子全員だと思う)クラスルームで眠るみたい。『もういっそみんな道連れだ。覚悟を決めろ』ってフィルラドくんとクーラスくんが言ってたけど、男の子同士だけの友情ってやつなのかな?


 ふふ、──くんはびっくりするかな? 先生も今日はこのお部屋にいることにしたよ。──くんに何かあったとき心配だし、寮の決まり上、男の子の部屋に女の子を泊まらせるわけにはいかないんだよね。先生も一緒なら、その辺の問題はクリアできるから。もちろん変な事はないって信じているけど……。


 もちろん、これは今日だけの特別だからね? ホントはロザリィちゃんも帰さないといけないんだけど、先生そこまで野暮じゃないから!


 あ、それともこんな年上と一緒の部屋で寝るのなんていやだったりするのかな……。寝顔みられるってすっごく恥ずかしいし、もしそうだとしたらごめんなさい。


 うわ、今更ながら先生、すごくでしゃばったオバサンみたいな感じになってたり……する?


 ちなみに、これは真夜中に書いているよ。ロザリィちゃんも疲れて寝ちゃったから、ちゃんとベッドの上に寝かせておきました。……ロザリィちゃんのベッドだからね? ──くんの手、引き離すの大変だったんだから。


 もちろん、誰にもこの日記のことはばれていないから安心してね。


 実は、ちょっとヒマだったからこの日記をパラパラって読んでたの。いろんな面白いことが書いてあってすっごく楽しかったよ。ほかの先生の授業風景とか全然知らなかったから、参考になっちゃった。


 クラスのみんなの様子も細かく書いてあってまるで小説を読んでいるかのようだったし、もしかしたら──くんには作家さんの才能があるのかも?


 ホントはもっと見ていたかったんだけど(ホントに面白くて夢中になったの!)、あまり見るのも悪いし、じゃあ今日は代わりに書いてみようかなって思ったの。日記書くのって結構楽しいんだね♪ 


 今度先生も書いてみようかなぁ……。あ、そうしたら交換日記をしてみるのも面白いかも?


 それと、これはやるべきかどうかすごく悩んだんだけど、ギルくんには、その、どうしたらいいのかなぁ? 今のところはイビキは……まぁ、ちょっと大きいかなとは思うけど、そこまでひどいものじゃないし……。


 とりあえず、あとで鼻栓と魔導結界を多重にかけておくことにします。……先生がやったってこと、内緒にしてね?


 だいたいこれで全部かな? 繰り返しになるけど、看病とかは先生たちが好きでやった事だから別に気にしないように。困ったときはお互いさまっていうし、普段たくさん助けられているから、先生もこういうときくらい──くんにお返ししとかないと貰うばかりになっちゃうからね。


 改めて見直すと、──くんが書く日記に比べて纏まりがないし、文章もなんかヘンというか……。ちゃんと読める日記って、書くの難しいんだね。毎日続けられるって本当にすごいと思うよ。尊敬しちゃう!


 最後に。


 先生は──くんががんばっていること、全部知っているよ。いつもクラスのみんなのために頑張ってくれて、本当にありがとう。面と向かって話すのはちょっと恥ずかしいけど、先生、──くんのことを本当に頼りに思っているの。先生よりも先生みたいって思うことだってあるんだから。


 先生は──くんのことがだいすきです。だから、──くんが辛そうだった今日はとっても寂しかったな。一日も早くよくなってくれることを強く願っています。


 ──くんは一人じゃないからね。いつでも、どんなことでもみんなに頼っていいんだよ。先生にできることなら、なんだってしちゃうんだから!


 それじゃあ、ロザリィちゃんに教えてもらった『おやすみなさいのキス』を特別に……みすやお♪


※燃えるゴミさんはやっつけちゃうぞ! 魔法廃棄物さんもデストロイしちゃうんだから!

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