表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/368

145日目 ヨダレ女の悪行

145日目


 ギルの鼻から黒煙が。なんか予想通りでつまらない。


 黒い煙をまき散らすギルを連れて食堂へ。珍しいことに、アルテアちゃんとフィルラドがジョギングに出かけずに朝食をとっていた。やっぱり二日続けて授業があったから今日は微妙に疲れているのかもしれない。


 朝食は贅沢にショートケーキをチョイス。俺が作るのに比べたらまだちょっと作りが甘いところもあるけれど、量産品の割になかなか丁寧に作られていて非常にデリシャス。とくに甘さ控えめのクリームと生地のふわふわ感が最高。


 が、最後にとっておいたイチゴがいきなり消える。またアエルノチュッチュの連中の仕業かと思ったら、ポポルがくすねていやがった。『なっ、言ったとおりだろ?』とテッドがドヤ顔。どうやらあいつが盗みの極意を教えたらしい。


 非常に腹が立ったので、黙ってテッドにジャガイモを投げつけた。『こんなの避けるまでもねーよ!』と手で受ける。ポポルが逃げた。ギルが飛びつく。『うめえうめえ!』っていつもの声と尋常じゃない悲鳴。


 『てめえいつかぶっ飛ばす』ってテッドにすごまれたんだけど、なんでだろうね? 恨むなら俺じゃなくてギルじゃない?


 さすがに今日はバイトする気にもなれなかったのでぶらぶらすることに。一応栽培スペースでナエカ、コケウスほか数種の魔法草の灌水&採取だけは済ませておく。しばらくほったらかしにしていた割にはすくすくと育っていてなかなかいい感じ。


 草むしりと害虫駆除をしていたらミニリカがやってきた。で、『なかなかうまそうじゃのう!』とかいって俺のワンダフルなリンゴをつまみ食いしやがった。これだから老害は困る。


 『喰った分くらいは手伝え』って言ったら、ミニリカはボコボコになったテッドを連れてきて『こいつを好きなだけ使ってよろしい』とのたまった。


 なんでも、こないだテッドがミニリカのことを俺の叔母と例えたのが気に食わなかったらしい。『叔母じゃなくてお姉さんじゃろ?』ってない胸をそらしていた。


 『祖母といわれなかっただけマシじゃないか』って言ったら、なぜか問答無用でぶん殴られる。ヒステリックなババアロリって本当にやーね。


 あまりにもミニリカがご機嫌斜めになってしまったため(口をぷくって膨らませてた。歳を考えろよって思った)、甘いもので釣ろうとクラスルームに行く。ちょうどロザリィちゃん、ピアナ先生が『甘いものをたかりにきたぞーっ!』ってビスケットがたっぷりはいったバスケットを片手にエンジェルスマイルを浮かべていたので、俺はハゲプリンを用意しようと保冷庫に行った。


 が、保冷庫の前で絶望の表情を浮かべるパレッタちゃん他数名の女子とジオルドを見かける。どうしたのかと聞くと、『私じゃない!』、『すでにこうなってたのよ! 本当よ!』、『俺でもないぞ!?』、『絶対呪ってやる!』とみんなが青ざめた顔でこっちに弁明してくる。


 保冷庫にストックしていたハゲプリンが全部消えていた。マジで一個もない。こないだいっぱい作っておいたのに。


 さすがにブッツンしそうになる。共用保冷庫とはいえ、中にあるものを全部ひとり占めしていいわけじゃない。しかも、俺が作ったハゲプリンだ。


 こんなことをする奴なんて一人しかいない。保冷庫からほのかにヨダレ臭さが漂っている。そして、最近妙にあいつが大人しかったことを今更ながらに思い出した。あいつは、甘いものを食べてご機嫌な時はおとなしく、俺もそれを利用したことが何度もある。


 間違いなくナターシャの仕業。あのクソアマ、どこまで俺の邪魔をすれば気が済むのだろうか?


 ついうっかり、保冷庫に入れようと収穫してきたリンゴを握りつぶしてしまう、女子がぶるぶる震えていた。


 そして非常に都合のよいことに、『ちょっとお菓子が足りないんだけどぉ~?』とヨダレ臭ぇアバズレクソ女がやってきた。口からは俺のハゲプリンの香りが漂っている。


 一応最終確認として、『……ここにあったハゲプリンはどうした?』って聞いたら、あのクソアマは超笑顔で『全部食べた! でもスペシャルケーキのほうがおいしかった! 明日までに作っておかなきゃマデラさんに触種の件をバラすから!』とか言いやがった。


 ちょっと何言ってるかわからない。頭に血が上りすぎて考えがまとまらない。


 『クラスのものを勝手に食べといて最初に言うのがそれか?』と問うも、『あんたが作ったなら私のものでしょ?』と返される。『クラス資金を使ってるんだが?』と問うと『格安で講師やったんだからこれくらいいーじゃん』と言われた。


 まぎれもないクズ発言に戦慄を隠せない。ここまでくると、怒りを通り越して呆れしかでてこない。憐みの目をあんなにも自然に出せた自分にびっくりした。


 さすがに空気が悪いと感じたのか、『じゃあお金払えばいいんでしょ!?』って逆切れヒステリーを起こしてナターシャはクラス資金の貯金箱に家が二つ三つ立ちそうなほどの金額をぶっこんでいった。


 あいつの金銭感覚はマジでオカシイ。冒険者やってるとそうなってしまうのだろうか。


 でも、たしかに全体で見ればプラスになったけど、そうじゃない。金さえ払えばなんだって許されるって考えは間違っている。


 とりあえず、ロザリィちゃんとピアナ先生にはありあわせの材料でホットケーキを作っておいた。あのクソアマのせいで空気が悪くなってしまったため、努めて明るくふるまう。そのかいもあって、なんとか夕食が終わるころにはいつも通りの雰囲気に戻ることができた。


 が、さすがに今回はマジでブチ切れた。静かな怒りってこういうことを言うのだろう。マジで俺は悪くないし、クラスのみんなが被害を受けたのだ。


 そろそろ、あのクソアマには積年の恨みつらみをはらし、そして奴自らの罪を償ってもらわねばなるまい。


 今から仕込みをしに行こうと思う。カードやそのほかの作成に一晩、アレの作成に一晩、下ごしらえそのほかは明日の午前中までかかってしまうかもしれない。


 大きなイビキをかくギルにここまで感謝する日が来るとは思わなかった。こいつのおかげで俺の計画は大きな一歩を踏み出せる。念のため、何をぶち込んだかは今は書かないことにする。


 明日の日記を書くのが非常に楽しみだ。今までの俺とは違うことを思い知らせてやる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ