126日目　飼育状況の確認

126日目

　ギルの体中からパキパキと音が聞こえる。……脱皮でもするのだろうか？

　杖でつついてギルを起こし、身だしなみを整えてから食堂へ。隣の部屋の気配がなかったから、今日もアルテアちゃんは腑抜け二人を引き連れてジョギングに出かけたのだろう。なんだかんだで五日も続いている。このままちょっとはマシになってほしいものだ。

　朝食はおばちゃんオリジナルのパスタをチョイス。野菜（特にトマト）のうまさを前面に出したベジタブルデリシャスで非常に良かった。健康にもよさそう。比較的さっぱりめの味付けだったから朝でも全く問題なし。

　ギルは今日もジャガイモの大皿を『うめえうめえ！』と平らげていた。ロザリィちゃんがエッグ婦人とヒナたちを連れてきていたので、適当にジャガイモとギル・コーン印の特製調整餌を与えておいた。今更だけど、こいつら本当によく食べる。

　ふと気になったので『排卵促進剤はどうなってる？』ってロザリィちゃんに聞いたら、『アルテアちゃんがちゃんと管理しているよ！』って几帳面な字が書かれたノートを見せてくれた。

　フィルラドの野郎、最初はちゃんと経過観察とかをまじめにつけていたらしいけど、そのうち全部アルテアちゃん任せにしてしまったようだ。

　最初の数ページ以外は全部アルテアちゃんの字だった。ちゃんと定期的に排卵促進剤を投与したことも書いてある。

　ちょうど今日がその日だったのでエッグ婦人に与えておく。非常に苦いらしく、めちゃくちゃ暴れたので『丸焼きは好きか？』と聞いたら大人しく飲んでくれた。最初からそうすればいいものを。

　午前中はなんとなく気になったので虫かごと水槽の確認をする。最近しばらく見ていなかったけど、ムーンフィッシュもエンゼルフィンもそれなりに大きくなっていた。水槽の掃除もかねてふと水草や石を避けてみたら小さな黄色い卵を無数に確認。どっちかわからんけどなかなかにおめでたい。養殖が成功すればクラス資金が大いに潤うことになるだろう。

　虫かごの方も順調らしく、マジックバタフライも数匹増えている。あのセイレンエイルも誰かが捕まえてきたらしく、羽色がすごくきれいだった。ちょっと名前がわからないけど真っ赤な甲殻を持つ手のひらサイズのカッコイイ甲虫もいた。俺のペットにしたい。

　ふと横を見たら、誰かがつけたらしき品目（？）があったので確認してみる。どうやらこいつはクリムゾンビートルのキング種らしい。『めちゃくちゃレアだから売ったりしないこと！　特に──には教えるな。あいつにバレたら接着剤にされる』と書かれていた。みんなは俺をなんだと思っているのだろうか？

　なお、品目のマジックバタフライのところにはリチャードが四匹、チャールズが二匹、アルフレッドが三匹もいた。捕まえてきたのは（命名したのは）もちろんギルだった。

　もちろん、ヴィヴィディナの虫かごには触れないでおいた。だってなんか悍ましい悲鳴が聞こえるし、ヤバそげな邪気をまき散らしているんだもん。

　午前のかなり早い時間にフィルラドたちがジョギングから帰ってきた。体力は取り戻したらしく、アルテアちゃんもどこか誇らしげな顔。『俺だって本気出せばやれるんだぜ！』、『ちょっと休憩してただけだしな！』と調子に乗ってたけど、ちゃんと達成したご褒美にハゲプリンを与えておいた。アルテアちゃんがめっちゃ笑顔だったのが印象的。

　夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。午後は特筆するべきことはなし。しいて言うなら杖の手入れとか触媒とかの整理をしたくらい。

　食堂で食材の運び出しのバイトをしていたギルは今日も大きなイビキをかいてスヤスヤと眠っている。こいつの寝つきの良さがマジでうらやましい。俺、日記を書くようになってから妙に寝つきが悪くなったんだよね。

　とりあえず、なぜかポケットに入っていたルマルマキャンディを詰め込んだ。長期休暇だし、たまにはスリルを求めるのもいいだろう。