112日目♪ 日記みちゃいました♡ (魔法生物学:前期期末テスト)
112日目
昨日の件ですが、先生は別に気にしていません。魔系ならあれくらいは普通だし、封印指定遺物にちょっと動転しちゃっただけです。──くんは立派な魔法使いとしての実力があると思います。
ただ、もうちょっとだけ人への思いやりを持ってくれるとうれしいです。もしヨキ先生が本物だったとしたら、取り返しのつかないことになっていたかも知れません。
ロザリィちゃんにキスまでしたのは先生もちょっとやりすぎだったと思いますが、あくまで訓練にあそこまですることはなかったはずです。今後はもっと冷静になれるように心がけましょう。
それと、日記をちょっと読ませてもらっちゃいました♪ けっこう面白いことが書いてあって楽しかったです♪
ちょっと意外と言えば意外だったかな? 先生の知らないこともいっぱいあって、なんだか新鮮な感じがしました。ロザリィちゃんのこと、本当に大好きなんだね?
ちょっとえっちなこととかも書いてあったのは、眼を瞑ることにします。男の子なら普通だし、勝手に見ちゃった先生も悪いですし。ただ、ほどほどにしておかないと女の子に嫌われちゃいますよ?
この日記のことは誰にも言いません。だから、次に会ったときは普通に接してくれると先生うれしいな。あと、腕を折っちゃってごめんなさい。痛いよね? しばらく安静にしていてね。
最後に。
あの触種の出所について話したいので今度職員室に来るように。保護者の方との話し合いも視野に入れてます。あと、ギルくんの鼻にヘンなものを入れるのもほどほどにしておきましょう。
ふひょぉぉぉ! 朝、なんか部屋からいい匂いがすると思ったら、ステラ先生が起こしに来てくれたぁぁぁぁ! ネグリジェにストール羽織った先生がマジプリティ! 朝一番にすっげぇ幸せな気分になれた!
さて、ここからは真面目に書こう。
朝、誰かに優しく体をゆさゆさされてると思って目を開けたら、目の前にステラ先生の顔があった。びっくりして飛び起きたら、『昨日はごめんね?』って超かわいい顔で謝ってくれた。
なんで謝るのかと聞いたら、『だって、あれじゃ──くんが悪者みたいだったじゃない?』って。天使すぎるステラ先生に泣きそうになる。俺、この人に一生を捧げてしまいたい。
ステラ先生はそのことを謝ろうと昨日の夜に保健室に行ったらしいんだけど、俺は腕を戒めとして放置したまま部屋に戻ったから会えなかったわけだ。
で、それならばと朝一でここにきたらしい。いつの間にか腕も治療されていてマジびっくり。ステラ先生、治療魔法もお手の物らしい。
『ちょっと早めに来すぎちゃったから、時間になったら起こそうって思ったの!』ってステラ先生は言った。高次魔法結界の痕跡があったのを俺は見逃さない。今日はなんともないのは、ひとえにステラ先生の愛のおかげだろう。
微妙に俺の机周りがいつもと違っていることに気が付かなかったのもしょうがないと思う。だってステラ先生マジ可愛かったんだもん。
その後、ギルを叩き起こしてステラ先生と共に食堂へ。先生、いきなり着替えだすギルを見て真っ赤になってた。そんなところがマジキュート。
食堂では珍しくロザリィちゃんが左隣に座ってくれた。右隣のいつものギルのポジションにはステラ先生が座ってくれた。まさに両手に花でしあわせ。最高に素晴らしいモーニングを楽しむ。
あと、ちょっと頬を膨らませたロザリィちゃんが『……えっちなこととか、よくないと思います!』って言いながら俺のほっぺにちゅっ! ってしてくれて気絶しそうになった。『これで我慢するようにっ!』って真っ赤になっていてマジプリティ。
マジで生涯最高の朝だったかもしれない。アルテアちゃんから、『ロザリィはケダモノソウルに目覚めたお前を鎮めるために体を張ったんだ』と聞かされなければパーフェクトだったのに。
ロザリィちゃん、俺がケダモノソウルに目覚めたせいで昨日ステラ先生にあんなことをしたと思い込んでいるそうな。俺、自他ともに認める紳士なのに。
さて、期末テスト最後はグレイベル先生、ピアナ先生の魔法生物学。なにをやるのかドキドキしていたら、『今日の夕暮れまでサバイバルしてもらいます!』とピアナ先生が植物魔法を発動させ、すっげぇでっけぇジャングルを作った。
そのあまりの規模に思わず見とれていたら、いきなり背後から薬品(?)を嗅がされる。朝の出来事に浮かれすぎていて反応ができなかった。
で、気づいたら杖一本だけの状態でジャングルにいた。周りには誰もいない。
この状態でジャングルから脱出するか、もしくは夕方まで無事に過ごせればテストは合格らしい。ピアナ先生の念話の声も超可愛かった。
詳しく書くと、このジャングルは今まで教わった魔法生物を主として生態系が構築されているらしい。環境的に矛盾しているところもあるけれど、ともかくこれらを利用して生き延びることで魔法生物学の知識を示しなさいってこと。
少なくとも最初はソロプレイだから明確に敵の弱点を突かないと危険だし、道具の一切がないから薬なんかも現地調達しなきゃいけない。先生たちらしい、なかなか実戦的なテストだと思った。
ちなみに、敵対生物を倒したらお助けアイテムとかが貰えてテストにいくらか有利だとか。積極的に動くか、安全に行動するか、その辺の判断も重要らしかった。
が、先生たちはたった一つだけ致命的なミスを犯していた。俺、念のために持っているモノ全部確認してからジャングルの探索に入ろうとしたんだけど、なぜかローブのフードにジャガイモが入ってたんだよね。
これくらいはいいと思ったのか、それとも気づかなかったのか(このフード、マジで気付かないうちに変なものが入っているから怖い)どっちかわからないけど、この瞬間に俺の合格は確定した。
超かっこよくジャガイモを掲げた瞬間、大木をへし折ってギルがやってくる。ジャングルに大きなけもの道(?)ができた。ギルは嬉しそうに『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。
その後はギルと共にジャングルを文字通り『まっすぐ』進む。どんな太い樹であろうとギルが全部ぶっ壊してくれるからすごくらくちん。
そのうちけもの道や巨木の倒れる音につられてクラスのみんなが集いだす。これで無敵。立ちはだかるものは全部ぶっ壊していった。
学部生とはいえ、魔系が四十人近く、それもギルと言う優秀すぎる前衛がいるのだ。これを止められるなんてそれこそステラ先生くらいしかいない。
二時間も歩くとジャングルの端に出た。どうやら拡張結界が張ってあったらしく、すぐ向こうにルマルマ寮が見える。あと、怪しげな部族の仮面みたいなものを被った色黒の大男(あきらかグレイベル先生)が出口でスコップを構えて立っていた。
『…学び舎に帰りたくば、質問に答えろ。さもなくばこのジャングルが主、ベル・グレイが貴様らを力づくでも追い返す』とガチな殺気。
意外とノリノリらしく、それっぽい雄叫びなんかも上げていた。しかも演出のために偽名まで使うこだわりっぷり。以下に質問と答えを示す。
『植物を育てるのに最も重要なことは?』
──まごころを込めること
『生物と共に在るために最も重要なことは?』
──愛情を捧げること
『魔物は敵?』
──慈悲はない
『……合格だ。これからもその心を忘れるな』って言って雄たけびを上げながら先生はジャングルの中へと帰っていった。どうせ正体がばれているんだから無理する必要はないと思った。あと、パレッタちゃんが『あの仮面……イイ!』って嬉しそうだった。
テストはもちろん全員合格。ピアナ先生からごほうびにカミシノエッセンスを加えたミックスジュースを貰う。
『おいしーっ!』って笑うロザリィちゃんに見とれていたら、こっそりストローを挿してきたポポルに半分くらい飲まれてしまった。もちろんケツビンタをしておいた。
んで、いろいろあって今に至る。テストが全部終わったからか、解放感が凄まじい。長期休暇に入るってのもポイント高い。
そして、とうとうこの日記の事がバレてしまった。夜、いつも通りに開いたら可愛い字で何か書いてあってめっちゃビビった。先生からのメッセージにちょっとドキッとする。
この文面を見る限り、あんまり詳しくは見ていない……よな?
たぶん、俺が寝ているときに偶然この本を見つけてしまったんだと思う。あの本棚の中で背表紙にタイトルがないのこれだけだし、気になったんだろう。まさか書き込んでくれるとは思いもしなかったけど。ある意味ラッキーだと喜ぶべきだろうか。
一日のタイトルまで書かれているとか、意外と芸が細かい。音符マークとハートマークが超キュート。なんで女の人って丸っこくて可愛い字を書けるんだろうね?
とりあえず職員室の件は保留にしておきたい。ガチでヤバい感じだし。
今日も日記がめっちゃ長くなった。さっさと寝たい。最近どうも書きたいことを無駄に書き連ねている感が否めない。文章を書く練習をするべきだろうか。
とりあえず、ギルの鼻にはお疲れ様の意味を込めてジャガイモを詰めた。明日からしばらくはゆっくりしようっと。




