~第五十七話~勇者、戻る~
はい、今回は別サイドの話となります。
次回は、本編に戻るって感じですかね?
俺がこの国バイトール王国で、やっと思い人を見つけたのに……未だに何所にいるのか? さっぱりと解らなかった。いや……名前は解っているし、バイトール王国に住んでいるんだと思うんだが……せめて家が解ればいいのだがな……肝心の家の場所と言うのが、検討もつかなかった。
とりあえず……名前はナナと言う事が解っているので、確か……ナナと一緒に仕事をしている男がいる事を思い出す。こうなれば……その男を尋問でも何でもして、情報を聞き出そうか……
そんな事を思っていたら
「勇者様、ここにいたのですか」
「ん?」
俺に話しかける者がいた。話しかけて来たのは、魔術師の格好をした女だった。この格好、何か見覚えがあるな……何所だったっけ? けどこの女……俺の事を勇者様って言ったな? 確かに俺は勇者と呼ばれているけど、こいつは誰なんだ?
「お前は誰だ?」
「そういえば名乗っておりませんでしたね。私はセレンディア王国の魔法使いユノンです。勇者殿、セレンディア王国は覚えておりますよね?」
「まあ……それは覚えているが……そのセレンディア王国の者が一体俺に何の用なんだ?」
「では……用件をお伝えします。我が国の国王が、貴方を探しているのです。勇者殿。私と一緒にセレンディア王国に来て下さい」
「何でだよ……もうあの国とは関係無い筈では無かったのか?」
「いえ、王様が貴方に伝えなければならない事がございますので、私は王様の命令で、勇者を探していたのです。私はこの国に辿り着いて、王様と謁見したら、この国に勇者がいると聞いたので、勇者を探していたのです」
「今更そんな事を言われてもな……俺はこの国でまだやるべき事があるんだが……」
「そのやるべき事って一体なんですか? 王様の命令以上の大事な用事なのですか?」
「う……」
ここで俺が、好きな女がこの国にいるから、それを探したいとか言うとどうなるんだろうな……いや、確実に解る事は、却下されると言う事だよな……はあ……
「なあ……その王様の命令で来たんだよな? じゃあ、その命令を聞いたら、俺はまたこの国に戻って来ていいか?」
「それは解りません。王様が何故勇者を呼ぶのか? 私も知らされておりませんので、では、勇者様、私と一緒にセレンディア王国に行ってくれますよね?」
「それって拒否したらどうなるんだ?」
「王の命令に背くと言う事ですか? いくら勇者でもそれは、それは許されないと思いますけど? 私が思いますのは、国家反逆罪が適用されるのではないですかね? 王の命令を無視したとして」
「そりゃそうだよな……はあ、解った……一緒に行けばいいのだな? しかしな? ここからセレンディア王国は随分と離れてないか?」
「はい、それは知っております。だから転送魔法で行くんです。私、転送魔法を習得しておりますので」
「そうか……それならまあ、一瞬だな? 解った、じゃあ……やってくれ」
「解りました、では準備を致しますね」
ユノンがそう言うと、杖を取り出して
「転送の扉よ!今ここに顕現せよ!」
ユノンの呪文が発動して、その場に大きな扉が出現した。
「この転送の扉の先は、セレンディア王国に繋がっております。では勇者様行きましょうか?」
「ああ」
俺はそう言って、ユノンと一緒に転送の扉の中に入る事にした。入った先は、大きめの城の前で、その前に門番らしき兵士が二人いる。突然現れた俺達にユノンが
「ご報告します。勇者様をお連れ致しました」
彼女がそう言うと、門番の兵士は俺の顔を見て「確かに勇者様ですね。では中にお入り下さい」と言って、城の中に入れてくれた。この城の中に入るのも久しぶりだな……と思いながら、謁見の間に案内されると、そこにいたのは、何年も経過したというのに、ほとんど変わっていない王様の姿があった。
王様は、俺を見て
「久しいな勇者よ」
そんな事を言ってきやがったので、俺はこういった。
「手短に用件を言え、何で俺を呼びつけたんだ」
俺がそう言うと、この王様は
「実はの勇者……再び魔王が現れたのだ。なので勇者、再び魔王退治をしてくれ」
「は……? 魔王が現れた……? 魔王は俺が完全に倒した筈じゃないか?」
「それは確かにそうなのだが……でも復活したのは間違いはないぞ。ある男がやって来てな? そいつは魔王城跡地に向かったんだそうだ。で、そこで相方が奇妙な本を見つけたらしい。その本の力で闇の力が増幅されて、姿が変わったんだそうだ。で、その姿が変わった者を自ら魔王と名乗ったみたいなのだな。だから……魔王は復活したみたいだと思われる」
魔王が復活……? そういや……俺が魔王を切り飛ばした時、奴は言っていたな?
「っく……我は滅ばん! いつか再び復活するのだ……!!」って……じゃあ、その宣言どおりに復活したって事かよ? で……俺は勇者って事になってるしな? その復活した魔王を退治しに行かなければいけないのか? けどな……
「王様……その復活した魔王がいる事は本当なのか?」
「それは本当みたいだぞ、その魔王が何所で何をしているか解らないが……このままにしとくと、世界が滅ぼされるかもしれないのだからな? だから勇者、魔王退治に向かってくれ」
「いや、何所にいるか解らないって言ってるじゃないか。その何所にいるか解らない魔王に対して退治しに行って来いとか、かなり無茶ではないですかね?」
「そうだな……では、ユノン」
「っは」
「お前は、魔王の情報を集めてくれ。勇者よ。お前にこれを与える」
そう言って王様は、ある機械を渡してきた。
「これは?」
「魔導通信機だ。これの片方をユノンに持たせるから、ユノンから受け取った情報を頼りに魔王退治に出発してくれ。では、ユノン、任せたぞ」
「了解であります。では……いってまいります」
ユノンは、そう言って杖を取り出して
「転送の扉よ、顕現せよ!」
転送の扉を出現させてから、ユノンが
「では……手始めにサバルクの町に行って参ります」
「了解だ」
ユノンがそう言って、転送扉の中に入っていき、扉が閉まってから数秒後、その場から扉が消滅した。
「では、頼んだぞ? 勇者よ」
「それって断ったら駄目か……やっぱり?」
「断る気なのか? 勇者?」
なんか凄い目で睨んで来やがった。これは断れないよな……? そんな事を思っていると
「お父様? 誰かいらっしゃって……って、貴方は……」
その場に現れたのは、この国のお姫様だった。えっと……久しぶりに会うけど、このお姫様……未だに俺の事をどう思ってるんだろうな……とか、そう思っていたのであった。




