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会社の上司を悪役にした異世界ファンタジーを書いていたら、読者が社長だった  作者: エール


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震撼 (現実)

 季節は秋、毎年恒例の『国際ビジネスソリューション展示会』が開催され、百を超える国内外の企業が参加し、最新の業務用パッケージソフトやクラウドを用いたサービスなどが発表された。


 もちろん、我らが『シーマウントソフトウエア』も、社運をかけて極秘に開発していたネット・クラウド・ソリューションシステム、『ラ・ミカエル』を発表した。


 社内でも、開発自体が極秘で行われていたようで、SEとして部署移動した俺でも、『エンジェル』というコードネームしか聞いた事がなかったシステムだ。


 この製品、何がすごいかというと、キーワードを設定するだけで『セラフィム』と呼ばれる人工知能(AI)がネット上から関連するキーワードを取得し、学習しているユーザーの嗜好に合わせてレポートとして取りまとめ、出力してくれるのだ。


 例えば、『讃岐うどん』と入力するだけで、それが食べ物であると判断し、特徴や歴史などの学術的資料、ブームになったきっかけ、果てはブログや店のランキングまで調査し、報告資料としてまとめてくれる。


 この間、わずか数秒。


 さらにユーザーがその資料を編集すると、そのクセを覚え、次回からは口コミ情報を先頭に持ってくる、などの学習機能も備えている。


 海外の戦闘機の型式などを入力したならば、世界中からその情報を取得し、自動的に翻訳し、最新の配備状況までまとめてくれるという、ある意味恐ろしいほど優秀な性能を誇る。


 五年の歳月と数十億の費用を費やした、まさしく会社の命運をかけた一大プロジェクトが、満を持して発表されたのだったのだ。


 ――しかし、それは日本中に衝撃を与える結果となった。


 残念ながら、騒動になったのは、その性能の素晴らしさというポジティブな側面だけではなかった。


『シーマウントソフトウエア』と同規模のライバル会社、『月齢ソフトシステム』が、『ラ・ミカエル』と同等のコンセプト……いや、まったく同じと言ってもいいネット・クラウド・ソリューションシステム、『ハーデス』を発表したのだ。


 デザインやユーザーインターフェース、学習機能、出来上がってくるレポートの内容まで、ほぼ同一の内容だった。


 そもそも、コンセプトが画期的で、AIの性能が非常に優秀だったため、会場がオープンされるやいなや、両陣営のブースには人だかりができたのだが、一方を体験した後の人がもう一方を体験し、『似たような』どころか『まったく同じ』システムであることに驚愕し、次第に会場自体が騒然とし始め、その日の夜には、全国ネットのニュース番組で、この異常な事態が取り上げられる程だった。


 明らかに産業スパイが存在している――。


 双方の広報担当者とも、


「我々も戸惑っている」


 という意味のコメントを発表していたが、オリジナルは間違いなく我らが『シーマウントソフトウエア』の製品だ。


 また、本来ならば『ラ・ミカエル』は、もっと作り込みを実施して、年末のさらに大きな国際イベントで華々しくデビューするはずだったのだが、二階堂社長が「嫌な予感がする」と前倒しで発表した結果、『ハーデス』とかち合ったのだという。


 もし、これが予定通り年末まで発表を待っていたならば、技術を盗用したのは一方的に我々の会社となってしまうところだった。


 この展示会、木曜日に開幕したのだが、翌金曜日、『シーマウントソフトウエア』は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。


 殺到するマスコミには、無言を貫くよう指示された。

 会社の先行きを危ぶむ声も聞かれた。


「年末のボーナスは諦めた方がいいな……」


 と、青ざめた年配の社員が呟いているのも耳にした。


 俺達は、重苦しい雰囲気の中仕事を進めたのだが、美香だけは、


「……今、小説のネタになるって思っているでしょう?」


 と突っ込まれ、


「いや、こんな事態なんだからそんな事、思っても口に出さないよ」


 と言うと、案の定、呆れられた。


 そしてその日のうちに社長秘書の虹山さんから連絡があり、俺と美香、風見、そしてその虹山さんの四人で、とりあえず俺のアパートに緊急参集したのだった。

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