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会社の上司を悪役にした異世界ファンタジーを書いていたら、読者が社長だった  作者: エール


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激戦、対パワハーラ・ザイゼン! (中編、創作)

「……なんだ、一体……何が起きているというんだ……」


 想定外の事態に、俺達も身構えた……が、パワハーラ・ザイゼンの狼狽ぶりはその比ではなかった。


「邪鬼王様……違うんです……その、あの娘は大げさに話しているだけで……いいえ、違う、それは違います!」


 何か独り言を呟いているようにも聞こえたが、どうも、いわゆる『念話』を行っているようだった。


 また、邪鬼王は配下の妖魔に対して質問をし、その回答結果の真偽を判断する能力があるという情報を入手していたが、それが本当だとするならば、ザイゼンは相当追い込まれているはずだ。 


 もっとも、それを見越しての今回の作戦だったのだが……。

 必死に言い訳をしていたザイゼンだったが、突然、


「ぐわああああぁぁぁーーーっ!」


 と叫び声を上げたかと思うと、体中から、何か黒いもやのようなものが吹き出して、それと同時に転げ回って苦しみ始めた。


 あまりに突然のことで、どう対処していいか分からない俺達。

 迂闊に攻め込んだら、自分達も苦しむことになりそうな気がしていた。


「シュン、お前の『レクサシズ・アロー』で攻撃してみないか?」


「はい、でも、別の何か……おそらく、邪鬼王の攻撃を受けているようだから、それを邪魔するのもどうかと思いますが」


「……それもそうだな……なにか『お仕置き』されているならば、どうなるか様子を見るのもよさそうだな……」


 念のために戦闘態勢は解かないまま、事態の推移を見守った。


 やがて、黒いもやの噴出が止まったザイゼンは、憔悴しきった表情で、肩で息をしながら立ち上がった。


 そして自分の両腕を見つめながら、


「……ばかな……邪鬼王様から頂いた魔力が全て、消え失せてしまった……」


 と漏らした。


 それを聞き逃す俺達ではない。

 俺達を惑わすための虚言であるという可能性は、先程までの圧倒的な戦力差を考えればないはずだ。そんなことをする必要がないのだから。


 まずは慎重に、シュンが『レクサシズ・アロー』を用いて矢を放った。


「うぐっ……」


 今まで何かの防御結界に阻まれていた矢は、ザイゼンの強固な鱗状の体表をわずかに貫き、ダメージを与える事に成功していた。


 シュンの矢が有効なのであれば、より攻撃力の高い俺の長剣『インプレッシブ・ターボブースト』ならば、もっとダメージを与えられるはずだ。


 しかし、接近したところに『強制首切命令(リストーラ)』を食らうと、それだけで致命傷となってしまう。


 その恐怖が、一瞬、俺の足を(すく)ませた。

 いや、ここで躊躇してはならない。俺は、勇者なのだから。


「うおおおおぉぉーーーっ!」


 決断した俺は、雄叫びを上げながら突っ込んでいった。


「……くっ……強制左遷命令(バシルーララ)!」


 俺の勢いに押されたのか、呪文発動時間の短い『強制左遷命令(バシルーララ)』を使おうとしたのだが、それが放たれることはなかった。


「ホリゾナル・スラッシュ!」


「ぐわあぁっ!」


 俺のなぎ払うような一撃が、ザイゼンの胴体を切り裂いた……しかし、その傷は浅い。

 邪鬼王により魔力は奪われたようだが、高い生命力はまだ健在のようだ。


「……小僧が……調子に乗るな、『強制首切命令(リストーラ)』!」


 今度は、即死魔法を放とうとした……しかし、やはり発動しない。


「……なんということだ……邪鬼王様は、本気で私を切り離したということなのか……」


 ザイゼンは、傷口を押さえながら呻くようにそう言った。


「……パワハーラ・ザイゼン……いよいよ最後の時が来たのだ。今、放った一撃は、おまえにより強制的に地方へ飛ばされた人々の怒りだ。そして次に……くらえぇーっ!」


 俺は叫びながら、もう一度『ホリゾナル・スラッシュ』を、今度は胸部に放った。


「うぐはぁ……」


 さっきよりも深く剣が入り、ガクっと片膝をつくザイゼン。


「今のは、おまえにより首を切られた者達の、無念の一撃だ。そして最後に、お前の存在、悪行により、世間から『役立たず、無能』と糾弾され、望まぬ仕事をさせられるようになった……お前により、全てを失ったこの俺の……全身全霊の一撃だ……」


 俺は、パワハーラ・ザイゼンに死の宣告をする。


「……貴様は……たかが平社員の成り上がりの分際で……この俺を……」


「……確かに……俺は、たかが平社員だった……しかし、俺は……いや、俺達は、正義だ。そしておまえは、倒されるべき悪だ!」


「……なんだと!?」


 俺に思わぬ口撃を受けて、ザイゼンは一瞬、怯んだ。


「……俺は一人ではなかった。共に戦ってくれる仲間がいた。元上司の叱責にも、ハラスメント四天王やその配下との厳しい戦いも、耐え、忍び、励まし合い、立ち向かった。そんな戦友達との絆は、深く、何よりも強い。権力を笠に着た、おまえのようなやり方ならば、一見味方になったと思えても、そんなもの、少し風向きが変われば簡単に崩れ落ち、そして裏切る。今回の事がそれを証明している。財前専務、もう一度……いや、何度だって言う。俺達は正義で、おまえは悪だ。そしておまえは、たかが平社員上がりの勇者と、その仲間である俺達に負けたんだ、完膚無きまでに!」


「……この俺が……負けた、だと? たかが、平社員ごときに……」


 ザイゼンは、呆然と立ち尽くしていた。


「食らうがいい……超ウルトラ・スーパー・アルティメイト・ギャラクシー・エクスプレス・エクセレント・ファンタジック・ブルーマウンテンブレンド・サウンド・アンド・ミュージック・ランビォール・ギーネ・カウンタッカー・ハイパー・ターミナル・ハンパナイッテ・スプラッシュウインドウ・ファイナル・スラアッシューーーーーーーッ!」


「うぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ……」


 俺の渾身の、全体重を乗せた全力の斬撃が、ついに胴体を両断、パワハーラ・ザイゼンは断末魔の悲鳴を上げた。


 これで全て終わった……そう思った俺だったが、ここで意外な声が響き渡った。



『……マ○ー空間に引きずり込めっ!』



 俺達は、なにか、とてつもなく嫌な予感を感じていた。

※今回でパワハーラ・ザイゼンは終わりかと思っていたのですが、邪鬼王により、勇者もろとも消し去るための道具とされたようです。

※現実世界においても、多少、最後の悪あがきがありそうです。


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