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9・ゴーレム使いの戦いはこれからだ!

「フハハハハ!屑鉄などというザコに用はないのだよ」


 俺は真っ先に飛び出し、中層上部を徘徊していたスチールゴーレムへと飛び掛かった。


 スーツはなかなか性能がよく、剣豪を使うまでもなくサクサクとゴーレムを倒していける。上層で性能を見せたことでガラドミアも文句を言わなくなった。


 そうやって俺が先頭を歩き、探索を進めていく。さあ、次の獲物は何処だろうか?


「ジャン、今回のクエストが何か分かってる?」


 ターヤが隣からそんな些末なことを聞いてくる。


「問題なく理解している。異変を探すんだろう?」


 そんな当然のことを理解していないはずがない。さあ、早く魔性ミスリルは出て来ないだろうか?


 しばらく探索を続けたが、どうやら出て来るのは通常のミスリルゴーレムまでで、それ以上の難敵が現れる気配がない。

 ミスリルゴーレムであれば現在のスーツで難なく倒せてしまう事が分かり、暇そうなマタザに獲物分け与えて機嫌を取る事も忘れない。


「ふむ、ギルドの杞憂じゃったのかのう」


 ノルムルがゴーレムや鉱物そっちのけでそんな事を口にしながら辺りを眺めている。


「今のところ、ジャンが相手に出来る程度のゴーレムしかいないわね。あのおかしな装備でA級上位の力は出せるようだけど、その程度なら特に問題はないのだけど」


 ガラドミアは興味なさげにそう口にしながら、何が気になるのかしきりに周囲の壁を眺めている。


 おいおい、A級上位の力は認めるのかよ、がラドミアが。


 と言う事は、S級パーティの一員として普通に戦えるって事じゃないか。そうなれば、気兼ねなくどこの迷宮であっても前へ出て行けるってもんだ!さて、次は剣豪との連携も試してみたい、早く魔性ミスリルが現れてくれないだろうか。


 俺たちはそのまま進み、とうとう中層でも本当に危なくなる中部への降り口までやって来た。流石に上部のように誰でも潜れる場所ではない。

 この先には間違いなく魔性ミスリルが徘徊しており、超A級パーティ奨励ゾーンである。ここまでなら、興味本位の商人が下りて来ても何とか逃げ出せる領域だった。

 だが、ここから先は本格的にヤバくなる。


「ここまで何の異常もないんだから、ギルドも慌て過ぎなんじゃないかなぁ」


 ターヤがそう言いながら一歩を踏み出そうとして、止まった。


「何やってんだよ」


 俺はそう言い、まず剣豪を先へ進める。


 ターヤが脚を止めるという事は、トラップでもあるんだろう。


 俺は斥候の知識や技量はなく、ターヤがなぜ脚を止めたのか分からなかった。それでも経験上、この迷宮に致死性のトラップは無く、下の層へ降りる回廊にトラップがあるなどいう話を聞いた事もない。

 何があるのか分からないが、剣豪ならば少々の事が起きてから対処可能だ。


 キン!


「はぁ?」


 剣豪が一歩踏み出すと、トラップが発動したのか何やら飛んできた様だ。


「聞いた事もないトラップがあるじゃねぇか!」


 剣豪の装甲を厚くしておいて助かった。魔性ミスリルが余って無ければ傷がつくところだったからな。


「だから止まったんでしょうが。何やってんだか」


 ターヤが半眼になって俺を見てくる。だったら言えよ!


「入り口に罠のは穏やかじゃねぇな」


 ワクワク気味のマタザがそう言って剣豪の様子を窺っている。


 ターヤは持ち前の斥候スキルによって素早くトラップの解析を行っているが、作動原理が分からないらしい。

 そこへ、ノルムルも加わって慎重に調べているが、仕掛けが分からないらしい。


「どういうことじゃ?このレベルの迷宮で在ってよいトラップとは思えん」


 ターヤに加えてノルムルまでその場で唸り出した。


「だったら無理やり解除するまでじゃね?」


 俺は剣豪を動かし、無理やり中へと押し込んでいった。


 キンキンと何かが飛んで来ては剣豪に当たっているが、飛んでくる方向が一貫しない。そればかりか、どうもトラップにすら思えない。


「へっへ、そう言う事ならやってやろうじゃないか!」


 俺は剣豪を走らせ、少し先へ進めてそれらしいポイントへとツルハシを撃ち込んだ。


 何もない空間だと思われたところに深々と刺さる魔性ミスリル製のツルハシ。


「ホラホラ、ホラ!!」


 勘でそれらしい場所へとツルハシを叩きこんで行けば、出るわ出るわ、ミスリルっぽいゴーレムが次々と湧き出し崩れていった。


「終わりっぽいぞ」


 剣豪へなにも飛んでくることが無くなり、少し動きを止めてみたが何も起こる事はない。


「え?どうなってんだ?」


 マタザが事態に驚き、ターヤが周囲を窺っている。


「インビジブルゴーレム、じゃと?」


 ノルムルが驚愕している。


「まさか、騒動の再現じゃない」


 なぜかガラドミアが弓を構えだす。


 おいおい、何をやってるんだ?


 動かない連中を放り出し、俺は湧き出たミスリルへと駆け寄る。


「ふむ、魔性ミスリルのなりかけって所か?コイツはかなり上物だな!」


 あまり持つと動きに支障が出るが、コイツを持ち帰らない手は無いからな!


「ジャン、戻れ!!」


 ノルムルが叫び出すが、それどころじゃないんだよ、量が量だけにな。


 ゴーレムの残骸をかき集めていると、背中に力がかかる。


「お、おお?」


 無理やり行李が引きちぎられてしまった。


「なんだよ!」


 振り向けば、黄金に近い色をしたゴーレムが居た。


「魔石が透明なゴールドゴーレムか?面白い!!」


 せっかくの行李を破壊され、ミスリルをぶちまけられたお礼をしない訳にはいかない。


 剣豪も動かし、ゴールドゴーレムへと戦いを挑む。


 支援だろうか、ガラドミアの矢がゴーレムへと当たったが、多少凹んだだけであまり効果が無いらしい。矢じりをケチるとはいただけないなぁ。


 早いわけでもないキンピカ野郎の背後へと剣豪を動かし牽制しつつ、俺は意識を削がれたキンピカの懐へ、スーツの力でもって飛び込んだ。


「ハッハー、これぞゴーレム使いの戦い方よ!!」


 見たか者ども。身体強化や風魔法使いの軽戦士とそん色ない動きを出来るんだぜぇい?そして、重戦士の様な重い打撃もな!


「せいや!」


 懐へ飛び込み、透明な弱点目掛けてツルハシを振るう。硬さを感じない、粘土にでも突き刺すような感触を持って魔石を抉り出してやった。ふむ、中々に高価そうな魔石だ。


 ガラガラと崩れ去っていく金の塊へと目を向ける。


「うっひゃー、コイツはすげぇお宝だ!」


 だが、それに触れると不思議な感覚だった。ものすごく脆い。金は硬い鉱物ではなかったはずだが、こんな脆い記憶もない。


「チッ、腐ってやがる・・・」


 鉱物が腐るのかどうかは知らないが、脆いんだからそう言う事じゃないだろうか?


 価値を見出せなくなった俺は剣豪の行李へとぶちまけられたミスリルを片付けようと立ち上がった。


 すると、思いのほかすぐそこにノルムルがやって来ていた。


「このバカモンが―」


 いきなり怒鳴られた。


 確かにモノに依っちゃ練成魔法を使うとゴミになる鉱物があるとは聞いていた。が、金はその類じゃなかったはずなんだから、怒鳴ることないだろうに。


「まあ、ジャンらしい。調査としては十分だし、討伐も出来たんだらか損害は無いでしょうけど」


 ガラドミアまでおかしなことを言う。


「この色の悪い金、どうすんだよ」


 マタザは興味なさげにそんな事を言っている。


「オリハルコンじゃ!馬鹿ども!!」


 聞いたことがある。そう言えば、オリハルコンはミスリルと何かの混ざりモノだから、練成魔法を行使すると使いものにならないんだっけ?




 後で聞いた話。アダマンタイトゴーレムよりも厄介な存在がオリハルコンゴーレムであるらしかった。


 これまでS級を超える危険性を持つと言われていたその存在に、大きな弱点が見つかった。


 そう、ゴーレム使いの錬金魔法である。


「そんな盲点があるとは思わんかったが、ジャンくらいしか倒せる奴も居らんのでは、意味がない」


 ノルムルが心配しているが、それは杞憂って奴さ。


「心配すんな。この街にはこのスーツ型ゴーレムの生みの親、マレクが居るんだ。アイツがそのうち倒せるようにしてくれるさ」


 あの透明ゴーレムを再現する事も難しいと分かったのは残念だったが、今回の騒動は解決したんだし、良かったんじゃないのか?


「ジャンみたいなのが今後増えるのかと思うと、それはそれで心配ね」


 ガラドミアがとんでもないことを言って来る。


「ゴーレム使いの活躍はこれからなんだ。そのうち理解する事になるさ!」


 そう、俺の活躍もこれからさ!!


  




 

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